ヨルムの決意
とうとう復活してしまったフォルトゥレス、シュヴァルツの野望は形になった、ルージュ達はシルヴィアの屋敷で体制を整えて対策を練る、軍も残った部隊を集めて総攻撃の準備をするがフォルトゥレスの圧倒的な力の前ではどうする事も出来ないと思われる、そしてここに世界の命運を懸けた戦いが始まろうとしている。
「軍は残った部隊でフォルトゥレスに攻撃を考えているようだ」
「無理、イザークでもどうにも出来なかった、ただ死にに行くだけ」
「シルヴィア、私達はどうする」
シルヴィアは悩んでいた。
「まずはシャーロの回復を待ち対策を考える」
「シルヴィア大佐、ロゼッタさんを連れて来ました」
ヴェルテがロゼッタを連れて会議室に入ってきた。
「あなたがロゼッタか、フォルトゥレスについて何か知らないか」
「私が何か話すとでも思っているの、私にはもう何もない」
「でもあなたしかシュヴァルツの事を知っている人がいないんです、お願いします」
ローゼが頭を下げるがロゼッタはこう言う。
「私は軍を恨んでいるのよ、何で軍人のあなたに協力しなければいけないの、私達の目的はフォルトゥレスで軍を壊滅する事、まだ止まらせてはいけないのよ」
「だがそのシュヴァルツも元軍人、そしてあなたの村を襲ったテロリストもシュヴァルツなんですよね、ならどうして!」
「……計画が失敗したからよ、本当なら私とベイルでシュヴァルツも殺すはずだったけど、ベイルの命を道具にされて、もう私には何も残っていない……」
「それは違います!」
会議室のドアを勢いよく開けてシャーロが入ってくる。
「ベイルさんは生きています、まだ目は覚ましていないけどちゃんと生きてます!」
「シャーロ! 体は大丈夫なの」
「うん大丈夫、ロゼッタさん会って下さい」
「嘘よ……だってあの術式は死なないと発動しないはずじゃ……どこにいるの?」
「こっちです」
シャーロが案内をして部屋に入るとベットで眠っているベイルがいた。
「ベイル! ちゃんと息をしている、でもどうして?」
「ここにいるシャーロが必死で回復魔法を唱え続けたのです、魔力が尽きても必死で助けようとしてこうして生きてます」
「どうして……私達は敵同士なはずでしょ」
「でも傷ついた人なら関係なく助けたい」
その様子を見たシルヴィアが笑いながら言う。
「ははは、変わらぬな、私と最初に出会った頃から優しかったな」
「だってシルヴィアもベイルさんも悪い人には見えなかったし」
「うんそうだね、だからロゼッタさんあなたの知っている事を教えて下さい、軍には悪い人も確かにいますだけどシャーロみたいな優しい人も沢山います、その人達の思いのためにお願いします」
ロゼッタ少しの間をとり話し始める。
「……私に弱点とかはわからないわ、だけどアスタルテとフォルトゥレスの適合はまだ時間がかかる、今ならバリアの出力も完全ではないわ」
「ありがとうございます、ならばまだ対策はとれる、会議室に戻るぞ」
「はい、それじゃあベイルさんをお願いします」
シャーロがそう頼むとロゼッタからもこう言われる。
「お願い……シュヴァルツを止めて、シュヴァルツにそそのかされた愚かな女だけど……お願いします」
「わかりました、絶対に止めます」
「ありがとう」
震えた声で願うロゼッタだった。
「それでは作戦だが、グレイス少佐は部隊を率いてレムリアの住民を守って欲しい」
「わかった、任せろ」
「後の者はフォルトゥレスに攻撃をする、多分この攻撃自体は意味がない」
「どう言う事?」
シルヴィア意外意味がわからない状態だ。
「希望があるとすればローゼの集束魔法だ、ありったけの魔力を大気に出してローゼが一つにまとめる、それ以外に私には策が思いつかない」
「それじゃあ最初に攻撃している時に死ぬ奴がいるだろう、フォルトゥレスは攻撃も兵器として優れている、それにそれでも破れる確率は低いだろうな」
「くっ、ならばどうすれば良いのだ……」
「……一つ方法があるよ、もっと確実な方法が」
ここでルージュが口を開き、魔力石を取り出す。
「これには数百人の魔力とイザークの憎しみが入っている、これをフォルトゥレスの前で爆発させれば確実に破れる」
「そんなものがあったの! それなら大丈夫じゃない」
「うん、使用者をフォローしていけぱ近づく事も可能だし、いけるよシルヴィア」
「……一つ聞きたい事がある」
全員が喜ぶ中一人冷静に聞く。
「その使用者は爆発に耐えられるのか」
「多分無理……でもシルヴィアが言った作戦より被害は少ない」
「それで、その使用者は誰だ」
「魔王の力は私にしか使えない」
するとシルヴィアはそれを却下する。
「ならば許可は出来ない、ルージュが犠牲になって救われるなどあってはならない」
「ならどうするの、時間はないし作戦もなければ皆死ぬだけだよ、そんなの嫌」
二人が話し合っていた時にドーンと音と共に衝撃がレムリアを襲う。
「ぐっ、何事だ」
「シルヴィア大佐、大変です! フォルトゥレスが軍本部に向けて攻撃を開始しました」
一人の軍人が駆け込んで報告に来た。
「まずは外に出てみよう」
「そうだな、状況を確認せねばなるまい」
全員が外に出るとレムリアの真上に浮かぶフォルトゥレスが、軍本部に集まっていた部隊と施設に向けて攻撃をしていた。
「レムリアが……軍本部が……火の海に」
「うそ……何でこんな事」
茫然と立ち尽くすシルヴィア達だったがフォルトゥレスからシュヴァルツの声が発声られた。
「レムリアに住む国民達よ! 今お前らを守る軍隊は壊滅した、もはやお前達は私の下で生きるか、拒み死ぬかの選択だ、少しだけ時間をやろう、もしシェルターから出て来ないのならレムリアは瓦礫の山となるだろう以上だ」
シュヴァルツの宣言が終わる。
「ふざけるな! 誰が貴様の下になど行くか」
「でもどうしたら……」
「……もう行くよ」
ルージュが前へと歩き出す。
「待ってルージュ、行っちゃ駄目!」
「仕方ないよ方法がないから……ヨルムフォローして」
「……すまないルージュ、かの者を眠りに誘え、スリープコール」
「えっ、何を……」
倒れるルージュをヨルムが抱える。
「ルージュは絶対に死なせない……なあシルヴィア魔王の解錠の
術式完成しているんだろう」
「ああ、しかしそれがどうした」
「だったら俺に魔王の宝珠を融合させろ、そしてこの魔力石は俺が使う」
「そうすればヨルムが消えてしまう、それにヨルムの体では魔王の力は受け止められないと書かれていたぞ」
ヨルムはルージュをその場に寝かせてこう言う。
「だろうな、けどルージュの両親の実験だと数十分なら耐えられたと言ってたんだよ、それだけあれば充分だ」
「しかしルージュが悲しむぞ」
「……俺はなルージュを守るための存在だ、だけどよこんなにルージュを守ってくれる奴らがいるんだ、もう必要ないだろ」
「ヨルム……」
ローゼもシャーロも悲しむ中シルヴィアがこう聞く。
「本当に……良いのか」
「ああ、やってくれ」
「シルヴィア……でもヨルムも仲間だよね」
「わかっている、わかっているがルージュは守らねばならない……」
シルヴィアも苦渋の決断なのだ、そして術式を展開させる。
「ルージュをよろしく頼む」
「わかった……セフィルス家の名にかけて誓おう」
「そういえば魔王、お前は良いのか」
ヨルムが訪ねるとルージュが起き上がる。
「別にもういいよ、充分楽しかったし、フォルトゥレスは見たくないから」
「わかった、もう言う事はないな」
「あっ、待ってねぇヴェルテ一ついい」
「何かあるの魔王」
そして魔王はヴェルテに言う。
「私は人を殺すための存在だったからわからないんだけど、ごめんなさいとでも言った方がいい?」
「何よその気持ちの込めてない謝り方は」
「だからわからないって言ってるでしょ、そんな気持ちは備わっていないんだから」
「だったら最後まで魔王でいなさい、その方がスッキリするわ」
そう言われると笑い出す魔王。
「ははは、それもそうだね、ならあと一つ私やフォルトゥレスなんか必要のない世界作りなさいよね」
「わかった、ならば術式発動!」
ルージュの中から赤い宝珠が出てきてそれがヨルムの中へと入っていく。
「これで完了だ」
「ああ、ありかとな、お前らといる時も楽しかったからな」
「うん……こちらこそありかとう」
「それじゃあ、行ってくる」
ヨルムが空に向かおうとすると声が聞こえてくる
「待って……ねぇヨルム……君」
「ルージュ……起きたか」
「私ヨルム君には感謝しているの、本当にありがとう」
「何言っているんだよ、俺の方がルージュに感謝している、あの時に友達になってくれて本当ありがとう」
「ヨルム君……うっうっう」
必要に泣くのをこらえるルージュ。
「泣くなよ、俺も辛くなるからな、俺は笑顔のルージュが好きだからな」
「無理だよ……悲しいよ……」
なんとかしようとするとヨルムははっと思い出す。
「そうだ! リベールで買ったやつ渡そうと思っていたんだが、なかなか渡せなくて、受け取ってくれるか」
「何なのヨルム君?」
「髪留めだ、ルージュに似合うと思ってな、どうだ?」
「うん、嬉しいよヨルム君」
涙が流れているが笑顔になったルージュ。
「最後にルージュの笑顔見れて良かった、それじゃいくぞ」
「待って、最後に一つだけ……ヨルム君は私の最高の友達だよ、いつまでも」
「ああ、俺にとってもルージュは最高の友達だ、それじゃあな」
「ヨルム君……ありがとう」
そしてヨルムは空に向かって飛びたった。
「おい魔王、最後だ派手に暴れろ」
「わかっているよ、でも魔力弾とんできたよ」
「へっ、これぐらいかわしてやるよ」
魔力弾をかわして進むヨルム、その様子をシュヴァルツも見ていた。
「うるさいゴミ虫が、狙いを定めて撃ち落とせ」
「……」
アスタルテとフォルトゥレスは繋がれていて、シュヴァルツが命令をすると少しづつヨルムに命中する。
「くっ、これぐらいで引き下がる俺じゃねぇーんだよ」
「防御はしているけど完全には防げないからね」
「わかっている、いくぞー」
それでも前に進むヨルム、体はボロボロになり血も流れている、手に付けた刃でなんとか致命傷を防いでいる。
「はぁはぁ、痛くねぇ、苦しくねぇ、恐くねぇ、この先にはルージュの笑顔があるんだよ、だから前に行けるんだ! うおぉぉぉぉぉぉ」
「最大魔力、はあぁぁぁぁ」
「くっ、バリアだ! ハエ一匹でも入れるな」
ヨルムの刃がバリアに突き刺さる。
「来たぞ魔王、やってくれ」
「わかったよ、シュヴァルツあなたににも教えてあげる、イザークがどれだけ優れていたかを、魔力石よその力を解放しろ!」
「くらえぇぇぇぇぇぇ」
凄まじい爆発と衝撃がフォルトゥレスを襲う。
「なっ、出力を上げろ、絶対に防げ!」
アスタルテに命令した時にはフォルトゥレスのバリアが粉々に砕け散っていた。
「馬鹿な……フォルトゥレスのバリアは最大で最高なはずだろ……」
落胆するシュヴァルツ、そしてヨルムも消えかけていた。
「やったぞルージュ……希望への道作ってやれたぞ……俺はもうルージュを守ってやれないが、幸せになってくれ……」
そしてヨルムを作っていた魔力が粒子になり少しづつ消えていった……。
次話に続きます。




