第8話
それから数日は特に代わり映えのしない毎日を過ごした。朝、救護所で目覚めると、呪われた装備品の解呪をし。朝ご飯を食べては解呪、昼ご飯を食べては解呪、夕飯を食べては解呪、風呂に入っては解呪、寝る前のおまけに解呪と解呪を連発した。MPが付きたら気絶し、呪われたら受付のお姉さんに解呪してもらう。そんなことを繰り返しているうちに解呪のランクはEに上がっていた。
そんなこんなで数日を馬車馬のごとく過ごしたあなた。この日は露出狂忍者のクレハと共にダンジョンに潜っていた。
「それで、依頼は何を受けたんでござるか?」
「スライム退治10匹と薬草採取だ」
「なんでまたスライムを?」
「リベンジだ、俺はもうスライムが夢に登場して、飛び起きるのに耐えられないんだ」
そういうあなたの眼もとには、うっすらとクマができていた。あなたは連日の解呪連発からの気絶で精神的にまいっており、スライムに窒息させられる悪夢ばかり見るようになっていた。
「へー、では拙者は見てるでござるから、とりあえずあのスライムと戦ってみるでござるよ」
「ふ、任せとけ。もうあの頃の俺とは違うのだよ」
そういうと、あなたはスライムへ駆け寄りサッカーボールキックを繰り出した。
「【回復術】ううううううう!!」
スライムへと蹴りだされた足は、スキルによって青く輝き、無駄にクリティカルヒットして謎の発光をおこす。
「ちょ、何を血迷ってるでござるか!敵に回復術をかけてどうするんでござる!?」
「知らないのか?回復術からは逃げられないぃ!回復術によって副交感神経を刺激し相手を眠らせる、それがここ数日で俺が救護所のお姉さんから学び取った奥義。睡眠拳だぁあああああああああ!!」
「スライムに神経ってあるんでござるか?」
「へ?」
あなたは這い上がってきたスライムによって窒息してしまった。
「ぐぼおおぉがぼおおおお!」
「【火遁:火炎弾の術】」
火だるまになったあなたは、地面を転がることで何とか炎を消火する。
「なにをするだああああああああ!」
「スライムには魔法攻撃、こっちのほうがサクッと片付くでござる」
「なら、火力を調整しろよ!」
「火遁の威力をわざとさげるなんて拙者にはとても……」
「なんでそこで、ちょっと恥ずかしそうにするんだよ!」
あなた達は、戯れながらも通路を進み、時折忍者娘に魅かれて出てくるスライムを倒しながら、ダンジョンを奥へと進んでいった。しばらく歩くと少し開けた場所に行き当たるあなた達。そこには水が流れ草木が生えていた。
「地下なのに木が生えてるってのも変な感じだな」
「何を言ってるでござるか?地下2階以降は草原あり山あり谷ありマグマありの人外魔境でござるよ」
「え、何それ怖い」
そんなこんなで、採取地点にたどり着いたあなたは薬草の採取を始める。もちろん後から来る人のことを考えて、必要な分以外は採取しない日本人的心を発揮するあなたに忍者娘が疑問の声を上げる。
「なんで全部取らないでござるか?」
「それはね、お嬢ちゃん。後から来る人が薬草採取することも考えているからだよ」
「へー、でも薬草ってすぐ生えてくるでござるよ?所詮は雑草でござるし」
あなたは方針を変更し、薬草を根こそぎ奪っていくことにした。あなたのカバンが薬草の束でいっぱいになるころ、平場には新たな人影が現れていた。