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第11話

 クレハの持っていた縄でサイゾウを簀巻きにしたあなた達は、彼を引きずって迷宮の出口を目指す。サイゾウが召喚した狼は時間がたつと巻物に戻ったので、クレハが回収してきていた。


「こいつどうするんだ?」

「そうでござるね。人間の奴隷化は法律で禁じられているでござるから、ギルドに届け出ればそれ相応の罰が下るでござろう」

「俺を殺そうとした件については?」

「それも一緒に届け出れば、殺人未遂でしょっぴけるでござる」


 あなたはそこの所の法律関係は、現代日本とそう変わらないんだなと思いつつ、サイゾウを引きずって歩く。人間一人を引きずって歩くのは地味にきつく、ギルドに帰るのは少し遅くなりそうだった。


「たしか、複数の犯罪を犯した場合、両方の最高刑を足した年数か、一番重い最高刑の年数を1.5倍したもののうち軽いほうが選ばれるんだよな」

「へーそうなんでござるか」

「まえに、テレビでそんなこといってたんだよ。たしか、そのときにより刑期を長くしたい場合には全く別の罪で上乗せできるとか言ってたな」

「うーん、たしか拙者の持ち物がいくつか盗まれていたはずでござる」

「リコーダーとか?」

「使った後の割りばしとかでござるね」


 そんな、たわいないことを話しながら歩くと、ほどなくしてあなた達はギルドへとたどり着くのだった。


「じゃあ、ギルドの詰め所にいくでござるよ」

「警察じゃないのか?」

「?知らないんでござるか?ダンジョン内での犯罪は、ギルドが主に取り扱ってるんでござる。大規模な国際ダンジョンなんかだと、複数の国にまたがって通路が伸びてることがあるんでござるよ。だから、いちいちダンジョンのどこからどこまではその国の法律とかはきめられないんでござる」

「国際ダンジョンとか初耳なんですが」


 聞きなれない言葉に首をかしげるあなたに、クレハは不思議そうに補足を入れる。


「いや、むしろ何で知らないんでござるか?国際ダンジョンは深く潜れば潜るほど、いろんな国とつながっていて、一説によると最深部ではすべての国とつながり、そこに魔王がいるという話でござるよ。ヒカルも魔王を倒せば願いが叶うという伝説を信じて探索者になったんじゃないんでござるか?」


 クレハの言葉に、あなたはすっかり忘れていた設定を思い出した。そうだ、魔王を倒せば願いが叶うんだった。すっかりゲームの設定など忘れて、日銭を稼ぐことに一生懸命になっていたあなたには、目から鱗だった。そう、魔王さえ倒せば元の世界に帰ることだってできるかもしれないのだ。……まあ、ブラック企業の従業員に逆戻りなどしたくはないのだが。


「そういえば、そんなこともあったかも。ところで、クレハはなんでダンジョンに潜ってるんだ?」

「拙者でござるか?拙者の家は15になったらダンジョンに潜って、仕える主を探す決まりになってるんでござるよ」

「へー大変だな。サイゾウもそうなのか?」

「そのはずでござるよ。まあ、拙者の場合、誰かとパーティーを組むとその都度サイゾウの妨害があったせいで、まだ主は見つけられてないんでござるがね」

「ふーん」


 あなたは思った、主が見つからないのはサイゾウの責任だけじゃなく、その露出癖にもあるんじゃないかと、口には出さなかったが。


「まあ、これでサイゾウともお別れでござるから。これからは、ゆっくりヒカルとパーティーでも組んで主を探そうと思うでござるよ」

「へ?」

「ん?」


 あなたがあっけにとられた顔をすると、今度はクレハが疑問の声を上げる。あなたが一歩後ろに引くと、その分だけ距離を詰めてくるクレハ。


「何でござるか?その反応は」

「いや、問題が解決したんだから、ほかの人とパーティーを組めばいいんじゃないかなーと」

「はぁ?この美少女の拙・者・がパーティーを組んでもいいと言ってるんでござるよ?」

「一緒にいるだけで、他人から命を狙われる相手とパーティーを組みたいと思うか?」

「……」


 あなたがそう言って真実を抉ると、クレハは思わず一方後ろに引いてしまう。


「いや、でも。拙者、いろいろ役に立つでござるよ?忍術は使えるし、各種属性魔法も取り揃えてるでござる。自分で言っては何だが、お買い得でござるよ?」

「いや、索敵するたびにモンスターを大量にトレインしてくる忍びとか正直いらないんで」


 今日一日であなたは痛感していた。この忍者、一緒に探索するうえではこの上なく邪魔であると。探索のたびに複数のモンスターをひっかけ、黙って歩けばモンスターに当たる、モンスターの数に押されたあなたがピンチになると、そこを颯爽と助けるあたり明らかにマッチポンプである。


「……でも」

「いらないんで」


 あなたがそう言って距離をとると、クレハはあなたの腰に取りつき突然泣き始めた。


「うぇーん、捨てないでほしいでござるー。もう一人で潜るのは嫌なんでござる。最近なんてサイゾウのせいか、誰も拙者をパーティーに入れてくれないんでござる!きっとサイゾウがいなくなっても誰も相手にしてくれないでござる!後生でござる!後生でござるー!」

「わかった、わかったから放せ!」


 周囲からの責めるような視線。うわーあいつ女の子泣かせてるようわー、といった視線にさらされしょうがなく、これからもパーティーを組むことを承諾するあなた。あなたは知らない、泣き顔をあなたのお腹にこすりつけたクレハがうっすら笑っていることに。

 その後は特に問題もなく、サイゾウをギルド職員の詰め所に放り込んで、この日はお開きとなった。


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