表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深海の街  作者: 記章
26/34

第三話「回遊魚は故郷の夢を見るか」その14

第三話「回遊魚は故郷の夢を見るか」終了です。

次の話は、あっちを先にするか、こっちを優先するか、はたまた、また幕間劇を入れるか、悩み中...

第三話「回遊魚は故郷の夢を見るか」その14


「かー!歩美、残念だったね!」


スーパーひたちの車中。

研修プログラムはすべて終了し、歩美たちは水戸駅を出発した。

めぐみが買い込んできたビールで、さっそく酒盛りが始まる。


「そんなことないよ。だって、あの二人お似合いだったもん」


全く気にならなかった、と言えば嘘になるが、

それでも、柳とみゆきの仲睦まじい姿を思い出すと、

歩美は心が暖かくなった。

これで良かったんだと、心の底から思える。


結局、誠の同級生の怪我はかすり傷で、

誠は思ったよりも素直に、同級生に謝罪した。

水農会の会長も間を取り持ってくれたらしく、

相手の親も「子供のケンカ」として受け止めてくれた。


真田が派遣したらしい茨城県警の警察官も、

水農会と柳の説明で要領を得た、とのことで、

関係者には一切のお咎めもなく、帰還した。


水農会も今回の件で、思うところもあったらしく、

しばらく、常澄でのデモ行進は控えると、

柳のもとに連絡があったという。


そんな報告の中で、最も驚かされたのは、

柳の転身の決意と、みゆきとの婚約だった。

なによりも、みゆきの20数年越しの想いに3人は舌を巻き、

同時に2人を祝福した。


柳の行動力と、みゆきの忍耐力があれば、

常澄を変えていくことができるだろう。


わたしも、そろそろ変えなきゃいけない、と歩美は思った。


いろいろなことを棚上げにしていることは、自分でもわかっていた。


でも、歩美が職員になってから出会った人々は、

それぞれ苦しみながらも、前進することを選んでいる。


正直、向き合うことは怖い。

目を背けながら、他人も自分さえも、誤魔化しつづけるほうが、

よっぽど楽だろう。


でも、足の裏の痛みを誤魔化しながら歩き続けるのは、

結局、どこかに歪みをもたらす。


だから、向き合わなきゃいけない。


それに。


菜々がめぐみをからかう様子が目に入る。


わたしは一人じゃない。

傷ついて、疲れた時に戻る場所がある。


何度だって戻ればいい。

そして、次の日、また踏み出せばいい。

そうするうちに、踏みしめた場所が道になるんだ。


決意を新たに、歩美は冷えたビールを飲み干した。


第三話「回遊魚は故郷の夢を見るか」了。

つづく...

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ