開かずの扉 1
薄暗い部屋だ。
薄暗い部屋に私がいた。
目前には表情なんて作れないほどに痩せた男が座っている。
私はその男に見覚えがあった。間違いない。
そうなら、私は何故こんな所にいるのだろうか。来る理由がない。捕まったのだろうか。
瞬間、部屋が白くなる。猛烈な光によってだ。
だが、白い壁が反射した光で目を焼かれそうなのに、男から目をそらすことはなかった。
そらせなかった。
だって、だって……。
表情がわからないような程に痩せているその顔が。
わらって、いたから。
そうして、猛烈な光で輪郭がぼやける程なのに、口を動かしている事が分かる。
何を言っているのかも。分かった。
「────!!!?」
私は謎の恐怖に襲われて、パニックになった。布団をはねのけて、うるさく響き渡る音源をぶん投げて黙らせる。
布団?布団って、さっきまで私は………。
そこから私は、さっきのは夢だったのだと理解する。
あれ?じゃあ、さっき投げたのは?
恐る恐る、投げた方を見る。
そこに転がっていたのは、アラーム付きのアナログ時計であった。
私は時計の元に駆け寄り生存確認 (生き物じゃないけどね)をする。
時間の変更は出来る。…あれ、秒針が…動いて…ない!?
やばい壊したなぁ。帰りに、買わないとなあ。
変な夢を見たせいで目覚まし用のアラームと同時に起きれたため時間には余裕がある。
だけど私は急ぎ目で用意をし、学校へと向かった。
高校の最寄り駅に到着。なんか、見られている気がして辺りをキョロキョロと見渡す。
別に誰も見ていたりはしない。やっぱり勘違いだろう。変な夢を見たせいだ。
そうして、無意識にいつもよりも速く歩いていると、目の前にゆっくり歩いている親友を見つける。
そこで、自分が速く歩いてたことに気付くが、特に気にはしなかった。
「麻華ー、おはよう。」
そう言えば自分から声掛けたことあったっけ。忘れたな。
声をかけられた親友はというと、
「……ん?あぁ、柚っちじゃん。おはよー……。」
『…』の数が示すとおり、親友の顔も気分も暗そうだ。
「どうしたの、あんたにしちゃ元気ないじゃない。」
いつもならば、『ぬふふー、柚っち!おはよー!!』とか先に私を見つけて言ってくる上に、気配を忍ばせて抱きついて来たりと……割と鬱陶しいから今のままでいいや。
「んー……。」
こっちをちらちらと見てくる。いや、どちらかというとそらそうとしてるのかな。
「どうしたの?何か悩みがあるなら相談乗るよ?」
まあ、あの麻華のことだから悩みなんて大したことじゃなさそう……ってこれは失礼だ。誰にでも悩みくらいある……まあ、それはおいておこう。
「ねえ、柚。知り合いがさ、知り合い話だよ。文化祭で、クラスで企画が固まりました。みんながやる気なのに何故か、生徒会、先生方とかに止めろと圧力がかけられました。」
二人並んで歩いている。
というか、何の話?普通生徒会がやめろって言うわけ無いでしょ。理由も無いのに。…何故かってことは。
「それはクラス内部に企画を妨害した人がいたからでした。でもクラスのみんなは誰がやったのかわかりません。…でもその知り合いは誰がやったのか分かってました。」
───分かりますか?
麻華がいつもみたいに噂を拾って来たときと『似た』話し方。私は雰囲気に飲まれて生唾を飲む。ついでに分からなかったので首を振る。勿論横に。
「その知り合いの親友、だったんです。」
「……………。」
「ねえ、こう言うとき、知り合いはどうするべきなのかなぁ。私にはわかんなかったよ。」
………。
「私にも、分かんないよ。まあ、密告?してもその親友とやらは別に死ぬわけじゃないし、大丈夫だとは思う。けど。それでその知り合いと折り合い悪くなるのわねぇ…。」
正直、私としては言うべきだと思う。うん。迷いなくするべきだ。だって、親友とこれから友達でいられても、そのクラスに負い目を負うからね。実際悪いことをしているわけだから。
「そっか、そうだよね。まあ、知り合いにはそう言っておくよ。」
「…。」あれ、珍しいね、麻華がその場で言わないなんて。
言う前に、走って行ってしまった。
まあ、いいか。
いつもと同じ高校生活。
学校がいつ、襲撃されるかわからない。内容はわからないが脅迫状だってきた。高校側が悪戯として片付けたっていっても雰囲気が変わってもおかしくないのに、特に変わった様子は無い。
朝のHRでは特に注意を呼びかけることもせず、休み時間はみんな各々で談笑していたり勉強していたり、次の授業の用意をしたり。
朝、麻華の様子が暗かった事以外におかしな事はなかった。
ん?何か引っかかる。
……そう言えば脅迫状?そんなの来たって言ったけど、私は担任から、確かに聞いた。でも、おかしい、偵察がバレて、先輩から脅迫状の話をを改めて聞くまで忘れていたような気がする。じゃなければ、すぐに出てくるだろう。脅迫状なんて悪戯でも来るものじゃないし、二日で忘れてしまうわけもない。
そう思って近くの友人に聞いてみる。
「ねえ、この高校に脅迫状なんて来たっけ?」
友人はそれを聞くと笑顔を作り、制服のポケットに手を伸ばした。
そしてそこから取り出したスマートフォンをいじり、耳元に持って行く。
なんだろう、と言う思いと同時に悪寒を感じ、立ち上がる。
「あ、どうも会員番号40291、裏切り者を見つけました。」
目を開けないほど眩しい部屋で、教祖アリウネはわらいながら言った。
「いつでもお前を見ているぞ。」
部屋はそれきり真っ暗だ。




