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義腕の王  作者: リョウゴ
五章・盲信する狂信者と人としての意地
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協会と教会 2

 同時に転げ出てきた二人。


 疑念しかない。村上さんに関しては、この神社で堂々としてればいいのに、隠れるような……いや、もしかしたら、森で何かする事があったのかもしれない。


「あっぶなかったー。ありがとね秋君。」


 二人が衣服に付いた葉や砂埃を払いつつ立ち上がる。


 ………何が危なかったんだろう。


「…元はと言えば、菊川、あなたが面倒事運び込んでくるのが悪いのよ。」


 そして、そのまま菊川さんを叱り始める。


「えぇー…いや、私はしっかりやったつもりですけど…全くどこでバレたんでしょうね……。」


 何の話かは分からないが、取り敢えず、事情を聞いてみることにした。


「結局さっきの人は何だったの?」


「どこでってあんた……あ、さっきの人?あれ、虚無天使教会とやらの信者。」


 その名前どっかで…………!? あれだ、この前電話が来たやつだ!…この前って言ったけど実際そんなに日付は経過してないんだな…そういえば。


「こいつが依頼途中に何らかのミスをして目を付けられちゃったのよ。」


「へぇ。」


「まあ、まだ、どこの協会の魔導師(だれ)かバレてないらしいから、まだ、面倒事の一歩手前ね。見つかれば面倒なことになるのは間違いないのよ。」


「その依頼ってどんなの?」


 そこでやっと菊川さんが口を開く。


「教会への偵察(スパイ)…ですよ。全くバレなきゃ良かったんですけどね………。」


 結局、バレたのか。


「バレた後は大変でしたよ。本当に捕まりそうになりましたから。何とか、撒けましたし。」


「………なあ、菊川さん。」


「なんですか?」


「もしかして、顔バレしてる?」


「え、まあ。そりゃごまかせば魔力でバレますし、整形するほど金は無いですし、顔バレはしてると思い…ま……す…?」


 ……これ、やばくないか?

 魔導はかなり便利だ。いろんなことができる。やる気になれば、海を枯らすことだってできるかもしれないし、惑星一個位なら破壊できるだろうし。……今言ったのは、可能性だけであり、魔力は一人が一生かけて生産する量を圧倒的にオーバーしている上に、化学兵器とか使えば同じようなことくらいならできるかもしれない。


 話がずれたが、要するに。


「顔、何らかの方法で記録されてたら詰むぞ?」


「うわぁぁぁ!」


 頭を抱えうずくまる菊川さん。つか、魔導の力に頼らずともケータイとかカメラとか便利な文明の利器と言う物があってだな…。


「え、もしかして対策すらしてないの!?」


 これには村上さんも驚きだ。初歩的ミスすぎて、考えもしなかったのだろうか。


「それで、ここにいることがバレたのね。」


 村上さんも気づいたようだ。まあ、普通この神社にいるかもとは考えないし、何らかのアテがあってのことだっだろうし。


「そりゃ、顔の記録がされてたら、ここいらに住んでる構成員が密告…もとい、報告してもおかしくはないよね。そりゃするよね、情報流した裏切り者だものね。」


 菊川さんがうずくまりながらボソボソと言うが。


「つか、ここんところここいらでも勧誘された人は多いんじゃないか?うちにも電話来たし。」


 菊川さんは地面に文字を書きつつ何やらぶつぶつ言ってるし、村上さんはそんな菊川さんを冷めた目で眺めている。


 俺は構わず言葉を進めた。


「ここら辺でも多いなら、うちの高校の在学生の中にもいるんじゃないか?構成員、下手したら菊川さんの知り合い。いたら、もう、悲惨だけど。」


「ああもういやだぁ!!」


 叫ぶ菊川さん。まあ、可能性だけだから。あんまり思い詰めないで欲しいんだけど…。


「理論上発動できる時間移動の魔法陣に逃げないで対策考えなよ。」


 村上さんが冷たく言う。


『めっちゃ正確に書かれてますねー。ご主人も覚えておけばどこかで得を』

 さっき理論上って言ってたから発動は出来ないんじゃないの?

『いや、未来が変わっちゃうので発動したら移動者以外にわかる人はいませんよ。』


「…そういえば。」


 菊川さんが突然立ち上がって考え込む。一秒。


「次、もうそろそろ襲撃されるかもしれない。」


「え? なんで?」


 菊川さんの言葉に疑問を覚えるが、それは村上さんも同じようだ。


 俺は知らなかったが、村上さんは報告を一切見てないらしい。まあ、改竄できちゃうから開封痕跡をつけないようにってとこだ。


「そういう話をアリウ…教祖みたいなのがぶつぶつ言ってたって。あ、これはしっかり報告にも書いたよ? というか、先輩、このあたりの勧誘が多いなんて知らなかったんですけど。」


「ん、まあ、たまたまかもしれないけど、楽観しない方が良いだろ。つか、内部から分からないのかそういうの。」


「分かりませんよ、こっちは電話勧誘は教祖と親衛隊みたいなのに選別された番号打ってただけですし、人攫いも私はやってませんし。だって人としての行動に反してますよ。洗脳とか。あり得ないでしょ。」


 もしかして、口答えでもして怪しまれたんじゃ無いだろうか。


「まあ、襲撃があるかもしれないのね?」


「そうですね。あったらその時は確実に先輩方は呼ばれますね。協会に。」


「あ、私は呼ばれるかも、しれないけど。」


 しれないけど、で俺を睨むなやめて怖い。


 ここは自分で言うべきか。


「あー、除名されたから、協会に。」


「えー!?マジですか!?あれほど寛容な協会見たこと無いですよ!?」


 え、そうなの? って言いそうになったが、こいつは他の協会を見たことがあるのか、いや無いだろう。


「まー、何で先輩が叩き出されたかは聞きません。」


「どうでも良いことは置いといて、どこ襲撃されるかってことでしょ? 今考えるべきは。」


 そう、それだ。


「だいたい、あれに暴れられると被害が尋常じゃないのよね。」


 村上さんがそう言った。前の妖刀の時も色々壊したけど、あんなもんじゃないだろう。だいたいあれ、木くらいしか壊してないし。


 というか、篠…日舞さんが何か言ってたような。何だったっけな……ああ、そうだ。


「……天界の扉?」


「それがどうかしたの、秋君。」


「なんか、それを一緒に探そうとか言ってたとか言ってなかったっけ。ほら、篠原さんが。」


 どうなの。と二人を見る。


 村上さんは記憶にないのか、首を傾げている。


「…!?」


 菊川さんは何かを思い出したようで、目を見開き、途端に慌て出す。


「やばいですよ、先輩方!」


 何がやばいのかは分からないが、菊川さんの態度からは、焦りのようなものが見える。


 そして菊川さんは続けてこう言った。


「襲撃されるのは、私達が通ってる高校かもしれません!!」


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