恐怖と幽霊 1
「おおー雰囲気出てるねえ、ここ。なんか寒くなってきた気がするよ。」
そう、今俺達5人はお祓いの手伝いにこのアパートに来ている。どうやら俺達以外は来ていないらしい。あまり人数増やしても仕方がないだろうしな。
「……別に手伝ってくれなくてもいいのに。」
彼女が例の村上さんである。本名は村上 咲という。今日野中に聞いた。
「いいえ、親友が苦労してるのに手伝わないなんて、そんなの親友と言えないですよ。」
それを昨日言わなかった理由を聞きたいが、面倒なことになりそうな気がしたので、止めた。
「ああ、そうだ。」
村上さんがこちらに振り返り、
「多分大丈夫だと思うけど一応渡しておくわね。」
と、紙切れを五枚渡してきた。サイズは、いつも本屋で本を買うと店員が挟んでくれる栞と殆ど同じだ。
俺は左手に渡されたそれを右手で一枚持ち、
「これは何?」
と、聞いた。
「その中の四枚がお祓い用、一枚が自衛用。襲われないとは限らないから。」
やはり幽霊はいるのか、というか襲ってくるのか!?
「まあ、襲ってこないと思いますけどね。私が手伝った時は幽霊自体出てきませんでしたし。」
真田さんは何度か手伝ったことがあったのか。
「……うう…。」
入る前に怯えている篠原さん。大丈夫だろうか。
「御札の使い方は部屋の大体真ん中の床に貼ってくれれば勝手に効果を発揮するから、そうして。じゃあ中に入りましょうか。」
こうして俺達は不思議とボロい訳でもないのに恐怖を与えてくるアパートに入っていく。昨日来たときよりも妙に雰囲気が出ているのは気のせいなのか?
中に入り、一階部分を二人一組でまわる。因みに、
「ここ開きそうね。」
と言い、階段を壁に向かって押し、その奥の隠し扉を発見した村上さんが、
「ここの奥、地下室になってて危なそうだから、私一人で見てくるから、お祓いしといて。それと、必ず二人以上で行動して、かなりヤバい気がする。」
と、一人で地下に行ってしまったのである。
「男女混合で行こうぜ!」などという野中の意見は真田さんに一蹴されていた。
野郎二人で二部屋をお祓いした。二人とも一枚ずつ消費した。
「男女混合だったら、今頃僕の腕には怯える篠原さんがしがみついていたかもなあ…。どう思うよ、秋」
どうでもいい。
そう答えようとしたとき、ポケットから音楽が鳴る。
俺はポケットからスマホを取り出すと。
「なんだ?電話か?」
「ああ、電話、医者からだ。」
「はい、鐘本です」
『んー、なんかそっちヤバくない?腕のモニタリングしてて思ったんだが、そこ離れた方がいいよ。んじゃ。』
「え?何の話、っていうかモニタリングってなんでモニタリングで判るんすか!?ちょ、トーマス医師!………切りやがった。」
何だったんだ、今のは。
「で、何だって?」
「何で内容をお前に言わないといけないんだ。……いや、まあ、言うべきか。」
「どーしたんだよ?」
「何か危険だからここから離れろってさ。何でそんなのが分かるんだか………。」
「……不気味だな。」
そんな会話をしつつ、広間に戻るのだった。
「非現実的な存在がすぐそこにいるかも知れないのに怖くないの?」
そう、私は篠原 日舞。今はお祓いの手伝いをしています。
お化け怖いお化け怖いお化け怖いお化け怖いお化け怖いお化け怖いお化け怖いお化け怖い──。
「……いるわけないじゃありませんの。このおぞましい寒気は今まで何度も体験した事がありますが、本物には一回も会ってませんし。」
でも、今回途中で、帰らなかったのは理由がある。でなきゃ帰りますってね。
「……。これでよし。」
真田さんが御札を貼り終える。一応、しっかりお祓いしている。
でも私、役立たず。全部任している。
そして広間に出ると真田さんが
「では、二階をやりに行きましょうか。」
「え、でも、まだ村上さん出て来てないよ。」
隠し扉は階段を出してしまうと出入りが出来ない仕組みになっていることを村上さんが下に行った直後真田さんが男二人に言って証明させている。
「いいんですの。言われたら開ければいいのです。」
私には言われても開ける気が無いように思えた。
どうしても、真田さんへの漠然とした恐怖を拭えない。それは、読めないのだ。真田さんが何か黒い事考えているのは分かるけれど、何かしようとしている気がするのだけれどそれが何か分からない。分からないから、怖いのだ。
「さ、行きましょう」
「う、うん……。」
結局私は気圧されて、言われるとおりにしてしまった