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義腕の王  作者: リョウゴ
四章・非凡な少年と鋼色の牙
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悪夢の桜刀 10

 もう、何度目だ?


 わからないくらい、黒鬼が延々と姉を殺す。


 もう、勝てないと諦めかけた。











────!!


 首筋に突きつけられる刃物。とっさに俺はなぜか自暴自棄になって叫んでいた。


 おかしい、何かが限界だ。そう、何かが。自殺衝動(どうしようもなくしにたい)なんてふつうの俺が思うはず無い。


「刺せるものならやって見ろ!!」


「うるさいわね!叫ぶなっての!」


 そういうと、片刃の刃物をクルリと反転させ、峰打ちを首に叩き込んできた。


 ぐえ、とつぶれた声を上げる。


「………ねえ秋?…なんか、捨て身の攻撃ばかりで、なんとなくやけくそ気味に感じたんだけど大丈夫?なんか、悩みあるならお姉ちゃんに相談しなよ。」


 俺は、姉が握る桜色の刀の刃の部分を握り強引に引っ張る。そのとき、つかんだ手のひらを刃の部分が切り裂き、じわりと血がにじむ。


 想定していたより簡単に姉の手から離れたことに拍子抜け。


「…!!?だ、駄目だよ!!」


 珍しく焦ったように叫ぶ姉。途端に意識はあるのに体が動かなくなる。


「ああ……やばい、やばいやばいやばい。帰ってきて帰ってきて」


 俺の体を思い切り揺する姉。


「い、一か八か!!」


 ……!!?

 姉は、俺が握りっぱなしだった刀を俺に刺すつもりか、俺の手から取り上げて、振り上げる。


 ──ここで切れた。……既視感を感じない一幕に心のどこかで驚いた。









 思い出し、一息。


 何度も繰り返して終点が姉の死だ。そりゃ狂う。まだ狂いきってないけど、予兆はある。


 部屋の前に来る姉。全く同じように制服で。


 俺は部屋を見る。もう様々な手を打った。


 音姉さんに助けを求めた

 咲さんに助けを求めた

 黒鬼に殺されようとした

 道中で木刀を買った

 黒鬼そっちのけで姉を探した

 

 他にも様々な行動を試した。無駄と思いつつも同じ行動を起こしたりもした。

 だが、結果は全て『黒鬼()()()す』だ。俺は死なないし、他の人も死なない。姉だけが死ぬ。いくら抵抗しても変えられなかった。


 目の前で、姉が言葉を吐こうと口を開こうとする。


 ──そういえば、姉を拘束しようとしたこともあったな。出来なかったし、姉を追えず、しばらくしたら、最初に戻された。記憶が消える前に、姉の悲痛な叫びが耳に、頭に響いたっけか……………。


「ねえ、今日、お姉ちゃんはちょっと遠くまで───」


『────気……て』


「え?」


 突然聞こえた声。


 どこから聞こえたのか。あたりを見渡す。


「秋、どうしたの?」


『……気づ…て……』


 さっきよりしっかりと聞こえたそれは、どこから聞こえたのかやはり分からないが、俺はすぐに行動を起こした。


「ちょ、秋、お姉ちゃんの話を聞きなさい!」


 そういう姉を無視し、向かうのは、部屋にある刀。けして触れられないそれが、何かの鍵にはなるだろうけど、とずっと思っていたので、まずはと。刀に触れた。


 ─────触れられた!!


「あんまり無視するとお姉ちゃん泣いちゃうよ?」


 刀を下ろし、鞘についていた紐を肩にかける。


「で?お姉ちゃんは鬼退治でもするのか?」


 はっとした表情をつくったと思えば。


「秋には関係ないじゃない。じゃ、行ってくるね。」







『ご主人!!やっと繋がった!!』


 俺は今、黒鬼のところまで自宅から全力疾走している。今までの経験則から間に合うのは確実だと思っている。


『これは、幻覚魔法の一種です。何度も繰り返し狂うまで狂うほどのストレスを与え続ける魔法です!現実では一瞬しかたってないので安心を。』


 そんなことは良いから、解決方法を言え!知ってるんだろう!?


『ストレスの元凶に打ち勝つ。これが一番簡単で難しい解決方法です。』


 ………無理だ。


『まあ、そう思ってる間はそっちは無理ですね。』


『次に綻びを見つけ、崩壊させる。これは今、刀を触れられてるので、できかけてるってとこでしょうか。まあ巻き込まれて消えられても困るんですけど。』


 それは!どうやるんだ!?


『兎にも角にも、クロオニさんとやらとの先頭は避けられませんよ?頑張ってくださいね。』


 いやだからどういうことだって───


────もう、着いてる!?いつの間に……。


「お?どうした坊主?おまえみたいなのがくる場所じゃねえぞ?」


 黒鬼は既に臨戦態勢であった。

 

 それを見て俺は、俺の体には不釣り合いなほど長い刀を構え、臨戦態勢にうつった


『さあて、鬼退治、心の中に巣くう恐怖には退場してもらいましょうか。』


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