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義腕の王  作者: リョウゴ
四章・非凡な少年と鋼色の牙
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悪夢の桜刀 5

 また、場面が切り替わる。


 ここは……どこだ?見覚えのない白い部屋。窓は無く、広さは普通の教室よりも微妙に広く見える。真っ白な床や壁を照らすのは天井の電球一つだ。


 そこに姉さんがいた。


 俺の体は今回は全く言うことを聞かない。動けない。


「さて、秋。勝負よ。」


「なんでプリン程度で…」


 子供の俺が呆れた声で言う。


「いーじゃん!負けた方がプリン買ってくるの!食べたいんだよ!!」


 ……うわ、くだらな!?


「全く、そんな理由で勝負ふっかけてきて、姉さん何回勝てた?」


「えーと…三回?」


「三十二戦中姉さんは二勝二十五敗五分だろ?勝てないのに何で挑んでくるのさ。」


 ……圧倒的だな、子供の俺。


「ぶー!あの頃とは違うよ!最近私は三協会から天才って言われるようになったんだから!」


「最近って…前の勝負は二週間位前でしょ。」


「私の成長は早いんだよー!前と同じと侮って貰っちゃ困るなあ…」


 姉さんは人差し指を左右に振り、「ちっちっちー」と。


「…教え子に、弟に負け続ける気分はどうですかね」


「むかっ」


 この発言が戦闘開始のゴングとなったのか、俺と姉さんが同時に動く。


 姉さんは呟く。俺は地面から生えた鞭のような物で顔面ねらいの攻撃を。


 いきなり俺えげつねえ。


「よける必要もないね!」


 姉さんは呟くのが終わったのか止めたのか、そう叫ぶ。と、鞭のような物が消えた。


 これには少々驚いたのか、目を見開く俺。


 そこに自信満々な姉さんによって解説が入る。


「これは【魔力拡散】と言って空気中の魔力を固まらないようにするって魔術さ!難点……は…」


 そんな解説を耳にし、俺の体は既に行動に移していた。土の鞭である。どこからか、持ってきたものじゃなく、純粋な俺自身の魔力。……なるほど、こういう感じなのか。


 一方姉は頬をひきつらせて。

「無属性以外効かないってことだねーアハハハー」


 身を翻し、鞭から逃れる。


 属性が使えない頃に魔力拡散されていたら正直ムリゲーだったのか……俺は運がいいのかもしれない。


 そして姉の周囲から自ら光を放つ白光球体、水らしきものの球体、火の玉らしきものをかなりの数浮き上がらせて、さらに姉自らには風を纏わせて俺の鞭から逃げていた。


 俺が放つ鞭からは魔力の腕と似通った何かを感じる。


 鞭を本人と全ての球がよけ続ける。その最中、姉が時折振り向き、一部の球を高速で的確に飛ばしてくる。


 的確なのは少々怖いが、確実に俺に当たるならば、射線上に魔力で刃しかない剣地面から生やし、球体をぶった斬る。


 そして謎の光の玉が飛んできたときも、そうした。


 瞬間、目を焼く閃光。


 目に飛び込んできた光に反応して目を塞いだが遅かった。


 既に目は突然の光によっておかしくなっていた。


 これでは相手がどこにいるか分からないんじゃないかと俺が思ったが、違った。


「どうだ!新魔法閃光弾は!いい味してるだろ!これで私は見えないだろふべっ」


 見えないが、鞭で姉の顔面に当たる。


「見えなくても、音、魔力の動きで分かる。大体……」


 瞬間背中に衝撃が走り、そのまま前に吹っ飛ぶ。


 突然だったが、しっかりと地面に手をつき、顔面を守る。手、捻挫したっぽいな。これ大丈夫か?


 ダメっぽい。手はいま、痛いのか足だけで立ち上がる。


 前に。首筋に生ぬるい刃物が当てられる。


「はいチェックメイト。」


 目が慣れてきて刃物を見た瞬間、少し驚いた。


 その刃物は走馬灯の始めの方で自室にあった、触れられない桜色の刀身をした刃物にそっくり、瓜二つだったからだ。


「え…と、姉さん。負けを認めます。」


「そ。分かればいいのよ。」


 姉は刃物を俺の首筋から離し、さらに続ける。


「はっきり言ってこれ、殺傷能力ないのよ、精神破壊するだけで。」


 いや、そっちもこええよ!…俺の体は黙したまま、姉は言葉を続ける。


「内容は、《何度も何度も、過去に起こった黒歴史、または忘れたい記憶を掘り返し、さらに黒く、どす黒くして記憶を、回想を見せる》って所かしら。ちゅーにびょう?ってのを見て思いついたんだけどうまくいったみたい。星のとこで試したらちゃんと壊れたからね。」


「そんな危険なもの弟に向けるな。刺さったらどうするんだよ!?」


「そりゃあ戻ってきてくれないと困るよ。大切な弟だからね。」


 この姉は…………。


「まあ、秋、あんたはこれを受けても帰ってくるって……信じてるからね。斬らないけど。」


「…そうか。」


 そんなもので斬られそうになったのが納得行かないことと信じてると言われたことで嬉しく思っていることが混ざって非常に複雑な表情でそう言った。


 そして二人そろってその、『地下室から出ると姉の部屋の勉強机のあるはずのところに出た』。


 ………この部屋は見たことが無いのに…。










 《何度も、忘れたい記憶を掘り返し、回想させる》刀。それは、もしかしてこの状態のことを指すのでは無いだろうかと、俺は少し不安になった。

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