悪夢の桜刀 2
………漫画が一段落したので自室に戻る。部屋はまあ綺麗だ。気になる汚れはない。
壁に子供向けの特撮のポスターやらが貼られている。懐かしい。これらは確か九年か十年位前にやってもらって、誰かと映画を一緒に見に行ったとき特典として貰ったんだろう。一緒に来た人の顔は微妙にひきつっていたような気がしなくもないし不満顔だった気がしなくもないが、はっきりとは覚えてない。
それに、いつの間にやら無くなってたんだよな。このポスター。まあ、どこかで飽きて棄てたのかもしれない。
流れるような動きで黒いランドセルを漁る。これも今は捨ててしまった物だ。下はいないし、使わないしな。でも確か六年のときはこれとは違う……そう、赤いやつだ。それを使っていた。何でだったっけ。
持っている教材を漁ると小三の教材(未使用)が出てくる位だった。つまり俺は小三。そういうことかね。
そう思うと、そんな気がしてくる。錯覚かもしれないけどね。
体の大きさといい、声変わり前の高めの声といいどうやら小三の俺らしい。
どうやら、小三の俺………らしい。
…走馬燈なのか疑わしい。
まだまだよく分からないことは多い。取り敢えず、今日の来訪者、俺の姉を騙る女性の友人が知り合いか否かを見ておくべきだと思い、今は物置となっている部屋に──行きたくない──……?
何となくその部屋の扉の前まできて、扉に手をかけたが、開ける前に躊躇う。何故だか分からないが、どうしてだか分からないが、部屋に入りたくなかったのだ。
ちなみにこの扉は外側に開く。
ノブが捻られる。もちろん俺じゃない。
開いてきた扉に頭突きをかまし、後ろに尻餅をつく。
そして、扉を開けた張本人。
頭に銀の三角型の犬の耳を生やした少女が俺に驚いて、向こうも尻餅をついていた。
ん?どこかで見たことある特徴的な外見をしているな……。
──もしかして、サーシャさん?
咄嗟に口に出した言葉は音にならず、俺は口をパクパクさせるだけだった。
扉を開けた少女は扉の向こうにいた俺に申し訳無さそうにあわあわと。
「ご、ごめんなさいぃ、大丈夫?怪我してないよね?」
……あれ?何か性格違う?
サーシャさんなら、多分チラリと見て、「大丈夫そうだな」とか言って去りそう。
じゃあこのちっさい獣耳少女はサーシャじゃないな。
「大丈夫ですよ。そっちこそ大丈夫ですか?」
「う…うん。大丈夫、平気だよ」
はにかみながら答える。
部屋の後ろから、声が聞こえる。
「おーい、オレンジジュースまだー?……って秋!入るときはノックしろって言っただろ!?何うちのかわいいかわいい──」
「分かったすぐどっかいくから!静かにして!」
自称姉の叫びを遮って俺も叫び、走って自室に戻る。
ノックか。忘れていたな………。




