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義腕の王  作者: リョウゴ
三章・果たし状と体育祭
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相棒のいない一週間 5

 鬱蒼とした森の中をのんびり歩く。


 この森にいるのは確実だと言われても、この森は本当に広い。迷子になったらヤバいレベルの広さだ。実際には迷子になった子は殆どいないらしいが、何でだろうな。きっと注意喚起が行き届いているんだろう。


 話がずれていくが、よーするに人型の狼を炙り出せばいいんだって事はちゃんとわかってる。


 囮の役割をするわけだが、こうも暗いと、不安になってくるわけだ。


 辺りを照らすのは月と星のわずかな明かり。足元は膝下程度までの長さの草が生え、時たま虫が、飛んでくる。……俺は草を掻き分ける音で聞き分けるつもりで動いている。目が使えなければ、音で。一応月明かりは木々の隙間から漏れてくる程度しかなく、明るい所はしっかり見えるが、そうじゃないところは本当に見えないのだ。




 しばらく歩いてふと、思い出した。


 ポケットから渡された巾着袋を右腕で取り出し……ってうわ……落とした。


 右腕の力が突然ゆるみ、巾着袋を落としてしまった俺は、足元など暗くて見えないので、身をかがめて探そうとした。


 したとき、頭上──正確にはかがめた体の上──から風を切る音が聞こえた。


 とっさに、周りを見渡して見るも、何も見えない。暗闇に紛れてしまったようだ。


 俺は適当に探った先に巾着袋を発見し、一度目を発動させた。すると、巾着袋から一筋の光が伸びていってとある方角をさした。


 方角はわかった。しかし、俺の視界から巾着袋から出る光が消えない。これについては今は放置するつもりで巾着をポケットに突っ込んだ。


「おい!何かいるのか!?いるなら出てきやがれ!」


 俺は適当な暗闇を見つめて、そう叫んだ。










 やばっ────。


 そう思ったときには、攻撃を止めるには遅かった。


 獲物が身をかがめ、渾身の跳び蹴りを回避してしまう。


 しかも何やら物に魔力を籠めると、一筋の光がどこかに向かって行くじゃないか。


 つまり自分は攻撃をしくじり、救援まで呼ばれたわけだ。しかも獲物だった男がこちらを見て、叫ぶわけだ。


───殺せ


 ……獣が、自分の中の獣が暴走仕掛けている。ここは落ち着いて……。


──目撃者ヲ殺セ


 ……お、落ち着いて。逃げ


─殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セコロセコロセコロセコロセコロセコロセ───────


 その後のことをやったのは、私じゃない。










 グルオォォォォォオオオ!!!!


 ……………!?


 突然、寒気を催すような叫びを聞いて、寒気とは違う、嫌な気配も感じて、勘で右腕を突き出してそのまま後ろに飛んだ。


 そしてその判断は間違っていなかった。


 身を守るように突き出した右腕は砲弾のように跳んできた何かに握り潰される、そして俺の右腕を握り潰した何かに跳んできた勢いを利用されて吹っ飛ばされる。


 吹き飛ばされる瞬間に、右腕を練習したロケットパンチ……ただの緊急義腕外しで肩から外していた。


 幸いにも吹き飛ばされた先に木々はなく、少し、広々とした空間に地面に擦られながら転がってきた。


 辺りを見渡して、不自然なところがあった。所々、土が盛り上がっているのだ。例えるなら、強引に土の中にあったものを引っこ抜いたように……。


 ヤバい………ここは何か危険だ。


 ………木々が無いのではなく。


 ここにあった木は引き抜かれているのだ。


 気づいた瞬間、突然地面が木々がとぎれている辺りに盛り上がって、行く手を阻むように、壁となった。その高さは、辺りの木々と同程度。


 その壁を眺めていると、壁上を二足歩行する獣が見えた。そして、その周りに浮遊する樹木の数々も。その獣は大きく吠えると、その木が飛んできたのが見えた。


 …………誘き出すつもりが、囲まれて逃げられなくなってるわけですが……。


 飛んでくる木はどれも今も青々と茂っているものばかり。つまり、枯れてたり腐ってたりする事はなさそうで、葉を舞わせながら飛来してくる。


 ──森林破壊ダメ絶対っっ!


 飛来する木を魔力の腕で吹っ飛ばされることで回避する。右肩からさきは今は放置してある。右腕は今要らない。





 四十を超える弾幕をすべて回避すると、辺りは木々の剣山となっていた。ひとつでも当たれば致命傷。よく全て回避できたな、俺。


 未だ壁上の獣は咆哮を上げている。全弾撃ち尽くしたのが見えないのだろうか。


 今のうちに壁外に逃走するべく、壁に左手を触れ、穴を空けるべく、集中。


 すると一瞬で穴が空く。俺はそこから脱出すべく穴の先を覗く。



──その時、耳障りな遠吠えが聞こえないのが気になった。





 このとき獣の部分が、作戦通りとわらっていて。

 人の部分はこれから起こる光景から目を反らしたがっていた。





 そこからは尖った木材。しかも俺があけた穴をギリギリ通過できるサイズの今までの木、そのまま。とは明らかに違う、殺傷力を備えた木材が穴の先に見えたのだ。


 見えた途端に───────────。

 

 獣は本能で動いているように見えるかもしれないが、これでもしっかりと考えている。


 今、目の前の光景は何だ。


 奴は、何者だ。


 その程度の行為で止められるはずが無い。


 有るはず、無い。

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