転校生
「よし、帰るか。」
俺が神社から帰ろうとしたとき、村上さんが口を開く。
「ちょっと待って、魔導師について、説明してなかったことがあったわ。」
「なんだ?」
俺は足を止め、振り返る。
「魔導師ってのは、魔導師協会に所属する義務が有るの。あんたは、まあ、今の所は魔導師とは呼べなかったのと、私が監視してるって事で、特に何も言われてないけど。」
「そういうものが有ったのか。」
「魔導師協会は色々あってね、日本には3つくらい魔導師協会が有るのよ。」
「それで?」
「魔導師協会は私が所属するところの他に二つ有るの。これが重要で、この三つの協会は表向きは敵対……もともと裏の話みたいなものだけど、してるわけじゃないの。勢力も拮抗してるし。っと、説明したいことはこんな所で、こっからはあんたに対する注意。勢力が拮抗してる協会の目には狐退治した書類上無所属のあんたが映りました。」
「狐退治って………。」
つか、協会に所属するのって契約書でも書くのだろうか。
「割と迷惑だったのよ。周りに見えない上に、魔導師としても厄介な部類だったの。それを不意打ちとは言え、倒したのはあんたなの。報告書には嘘を書いてないし。……その報告書を見た他の協会があんたをスカウトするかもしれないの。無所属だと困ると思うし、早めにどこに入るか決めてね?でも無所属のうちはスカウトしてきた協会は『入らなければ用はない』なんて、手を出してくるかもしれないから。それだけ。大体、協会の庇護のない魔導師一人消すのは余裕なのよ。私の担当じゃないけど。」
つまり、他のところにやるくらいなら、殺っちゃえ。みたいなことかな。というか………。
「この果たし状。魔導師が書いたんだから、これがスカウト目的だとすると、幽霊退治の時に既に、目つけられてたってことか?」
因みにもう、文字は消えている。その事が違いの分からない俺にも魔導師が書いたものとして認識できている要因となっている。
「あ……あの一件は報告書書いてないから、相当この辺に……?………っ!まさか!」
村上さんが、何かに気付いたようで焦ったように。
「これ!真田さんに情報提供した人が他にも、魔導師に情報提供していたのかもしれないわ!そいつが誰かしらに情報提供されてるなら絶対吐かせなさい!良いわね!」
「……お、おう。」
どうやら真田さんは情報を吐かなかったようだというのが分かってしまった。つか……。
「というか、あの一件、なんか裏で色々有ったのな。まあ、今更何聞くつもりも無いけどさ。」
「…聞くつもりも無ければ教えるつもりはないわ。……絶対そのことについて聞きなさいよ?相手がどこであんたを知ったのかってことを。」
「分かった。じゃあ、帰るわ。じゃあな。」
そして俺は階段を駆け降りていった。
『ご主人、どこに所属するつもりで?』
つか、どの協会が良いのか分からないんだが?
『うーん……私はどの協会も変わらないと思いますよ?見学とか、一切出来ませんし、中は所属者以外知ること出来ませんし、言わばご主人は部外者なので、その偏りを所属者から聞いてしまえば、その所属者は情報漏洩になりますし。』
「どないせーと言うんじゃああ!!」
つい、俺は声に出して叫んでしまった。が、周りは田んぼしかなく、誰かに迷惑というわけではあるまい。
『まあ、このまま村上さんがいる協会に入ってしまえば良いんですよ、特に考える必要はないんです。』
ま、後で考えれば良いよな。うん。
「ほんじゃ、今日は、なんか体育祭一週間前だというのに、転校生がいまーす。いやほんと、何でこの時期に………面倒……。」
朝のSHRにて、渡瀬先生がめんどくさそうに言う。面倒とか、本人の前で言わないですよね?面倒なことになりますし。
「んじゃ、入ってこい。」
つか、どんな人が……野中が掴んだ情報は少なかったから何も分からん。女子が入ってくることは分かってるけどね。
そして入口のドアが開かれ、転校生が入ってくる。
入って来たとき、クラスメートの間で少しだけ息を飲む音が聞こえた、気がする。
入ってきたのは女子。これは野中の言ったとおりだ。いや、男女どちらでも、仲良くするつもりだよ?
『いや、こっちからは話しかけないでしょ?ご主人は。』
目を引いたのは、その外見だ。
髪の色は殆ど茶色と言っていい色をしていて、髪はポニーテールなんて言われているやつに近いが、括られた髪は肩より上までしかない。
「わ、わた、わたひはっ!…っいたた……。」
転校生は、舌をかみ、完全にパニックに陥っていた。多分、クラスメートの大半がこれを見て。
───可愛い。
なんて、思うだろう。うん。可愛い。
「おい、噛むなよ。……こいつは。」
そう言うと、黒板に文字を書き始める。
エリカ・ヘディン
「と、言うんだと。」
「え、エリカ・ヘディンです!よろひくお願いひまひゅっ………。」
また噛んだ。落ち着けよ、少し。
………?ヘディンって、どこかで……。
「すー…はー……みんなは気軽にエリカって呼んでください!」
転校生は深呼吸をした後、しっかりと噛まずに言った。……それのせいで思い出しそうだったことを考えていたこと事忘れた。………なんだっけな。
「はーいじゃあ、あの席な。」
そう言って、窓際の一番前──何故かここだけスペースが有った─の机を指した。
そして転校生、エリカさんがその席に着いた。
『これは……休み時間が騒がしくなりますよ……。』
それは、ありそうだな。
案の定、休み時間は騒がしくなった転校生が転校してきた初日の運命だろう。転校生は周りの質問に気前よく答えていた。野中が転校生に凄い食いつきを見せていたのはどうでも良いことだろう。
その転校生は授業を真面目に受けていた。ついでに言えば、勉強出来ないとか、遅れてるとか、そういうのは無さそうだ。ついでに日本語は流暢だったし、書くことも読むこともできた。だから殆ど日本人だよな、名前だけ何か外国人ぽかっただけだな。
とまあ、そこそこ転校生の観察をしていたが、俺は今日、転校生より気になる事案を抱えている。放課後の事だ。面倒だ。非常に面倒だ。
「気にすることないんじゃない?」
とは言うが、篠原さ………
「うぉわ!?いつの間に!」
「さっきからここに居たよ。」
突然机の前から話しかけてきたから、驚いた。
と、そこに野中が、駆け寄ってくる。ちなみに今、昼休みである。
「ふふん、どうだよ、転校生は美少女で、うちのクラスに編入されたぞ!つか、さっき、学食を案内するって言ってきたから案内ついでに食べてくるから、ごめんなー?一緒に飯食えなくてよー?」
言い方に苛立つ。
「そう言えば、何でこんな時期に転校してきたのか、聞いた……?ってかもういない。早いなぁ。」
それは気になるけど。
野中は、言い終わるとすぐに走り去った。何だよあいつ。
『放課後ですね。』
そうだな。屋上へ行くか。
因みに、他の人は皆転校生に夢中なので俺に話しかけてくる奴は……奴は、いない……。
何か少し悲しくなったが、要するに俺に話しかけてくる奴は居ないから、屋上に向かうのを見咎める奴は居ない。屋上いくのを見咎める奴なんていないがな。
屋上前の扉である。
『開けますか?開けますよ。ほら早くしなさい。五分けーかー。はよしろよ。』
ここで五分も、立ち往生。原因は簡単。俺が扉を開けようとしないからだ。
『もう開けちゃいますよ!よいしょっ!』
っ…分かったよ!
右腕が勝手に開ける前に、俺の意志で開ける。
そのつもりで扉に手をかけ、力を込めた。




