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義腕の王  作者: リョウゴ
三章・果たし状と体育祭
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詠唱魔術

 いつもこの長さの階段を登らなくては行けない神社って参拝客は来るのだろうか。俺は用もない時はとてもじゃないが来たくない。多分、魔術を覚えて、用が無くなればここにもこなくなるだろう。そう考えると、途端にさびしく感じるのはやはり………。



「おや?鐘本さん、遅かったですね。後十分くらい早くくれば、お嬢と会えましたよ。」


 最近あまり見なかった巫女さんが神社の境内を竹箒で掃除しながら、話しかけてきた。


「……いや、別に村上さんに会うために来たんじゃないですよ。さっさと魔術を覚えてしまいたいけど自宅だと保護者がいるんでやりづらいんですよ。だから、来たんです。」


 実はもうすでに術式はいくつか紙にメモしてある。


「そう言えば詠唱は、空間と音声どちらでやるんですか?鐘本さん。」


「空間のほうです。……この文字、詠めないんですよね……。」


 術式詠唱は、魔導師の為の文字、魔導文字を使っていて、空間式ならば、詠めなくとも発動出来るが、音声式詠唱は詠めないと発動出来ない。魔導文字の基本すら読めない俺には、字を真似ることで発動出来る空間式でしか詠唱が出来ない。魔導文字をこれから覚えるくらいの沢山の時間は流石にまだ用意出来ない。


「空間式は文字を空間に描くのでは無音で出来ることが利点で魔力を音声式よりも少し多く消費するのがあまりよくないですよね。」


「そうですけど、魔導文字の発音がまだ分からないんですよね。残念な事に。」


「そうですか。魔術習得、頑張ってくださいね。」


 巫女さんはそう言うと、掃除を再開した。


 俺も、がんばろうか。



 メモは、村上さんが今日の昼休みに渡してきた物だ。


 そこには、魔導文字で魔術式が書かれていた。これを空間に書ければ、文字に魔力を流し込むことで発動出来るはずだ。


「まず、何々?ファイアボール?………こうか?」


 しかし、文字を書くことすらできない。当たり前だ。その感覚を知らないのだから。空間に初めて文字を書いた人はどうして書けたのか、不思議である。


『今回文字を書くのは私がやりますからご主人は魔力操作と文字を書く感覚、覚えてくださいね。』


 右腕が勝手に人差し指で文字を書いていく。相変わらず詠めないが、感覚を覚える事に集中した。


『魔力を流してください。』


 そう言われ、文字に魔力を流し込んだ。すると、文字が文字列の中央に集まり混ざり火の玉に変わる。


『これにベクトルを加えてください。結局は自分の魔力の塊。そこらへんは何とか出来ます。』


 俺は前方三メートルの石畳に向けて火の玉を放った。すると、火の玉は狙い通りの所に着弾。周りに燃えるものが無いからか、あまり燃えず、火は消えた。


「地味だな。」


『改造出来ますよ?火柱立てたりとか。でも、文字数が三倍くらいになるのは覚悟してほしいですね。』


 じゃあ、威力を考えると、術式は長くなるのか。


『まあ、火力は籠める魔力依存なので、地味なのは半分ご主人の魔力のせいですね。それと見た目が派手なのが、術式長くなるのは当たり前ですよ。』


 そうなのか。


 メモしてある術式。

 ファイアボール いわゆる火の玉。当たれば燃える筈。

 アイスニードル 氷の棘。刺さると痛いでは済まないだろう。

 ウィンドボール 風の刃が球体状にぐるぐる回っている。

 アーススパイク 地面に当たると一本、棘が生えてくる。

 認識阻害術式  みんな使える便利魔術。


 メモてある術式は基本の術式なので、みんな文字数は少ない。威力もあまり高くならず、放ったときの速度がアイスニードル以外あまり速くないので、避けられてしまいそうだ。少なくとも俺は余裕で避けられる。


 今日は文字を空間に書けるようになった所で引き上げる事にした。




「あれ?お嬢。何してるんですか?そんな所から出てきて。」


 村上が出てきたのは、神社を囲む深い森からである。巫女服の女性には村上がそこから出てくる理由を知っているが、一応聞いた。


「鎧のチェックと私自身鈍ってないかを確かめてたのよ。最近仕事してないからね。」


「お嬢に仕事が来るのは相当ヤバい状況ですから、来ないのが一番ですよ。」


「うー、やっぱり体が鈍ってたわ。定期的にならないとやっぱり駄目ね……。」


「お嬢、そう言えばこの間、協会から新たな二つ名が提案されてましたよ?」


「ええ……。二つ名なんて鎧巫女で充分よ。というかアレですら恥ずかしいんですけど。」


「恥ずかしいのは分かります。お嬢はお嬢ですものね。」


「そのお嬢っていうのも、やめてほしいけど……。」


 その言葉には私はこう返すしかないですね。


「止めませんよ?」


「そうよね………。」


 村上は頭を抱える。


「というか新しい二つ名って何なの?」


「鬼巫女、だそうです。お嬢にお似合いですよ?」

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