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義腕の王  作者: リョウゴ
一章・不思議な義腕と無知な少年
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恐怖と幽霊 4

 右腕が大男の体をぶち抜く。瞬間、大男の体が白く光り、粒子になって上へ上がって行く。それは、桜の花びらが風で上へ舞い上がる、桜吹雪のようでもあった。


 そして大男が消えた事でスイッチでも切れたのか、俺の体が崩れ落ちた。痛ぇ……。


 体動くようになった……のか…?


 左手は動く。足も動く。だが、力が入らない。ヤバい、立てない…。






 やはり村上の読み通り死ぬことはなかったようだ。


 斧を持った霊と彼が睨み合っていたときに村上がしたことは、彼以外の三人に対して彼への認識を阻害し、彼を認識させない術を使う事だった。


 村上咲は神社の一人娘である。彼女の神社は特殊であり、本来、普通の人間が知ることすら出来ない事を知り、扱う事ができた。そしてそれらを用いて、その手の所から問題の解決を依頼される事があった。今回の除霊もその一つでありこの手の依頼は基本的に部外秘である。が、真田はお祓いの予定を何故か知っていた。


 普通の人が知ることが出来ないこととは魔法、魔術、などといったオカルトなものである。何故知ることができないかは、やはり悪用されないように、とかであろう。


 そして村上が使った、認識阻害術も魔術…彼女の流派に基づいて言えば霊術である。この術は対象を完全に人から認識できなくする術である。発動は、簡単でコストも低いため、この手の初心者が真っ先に覚える術である。難点は、この術が使える人には対象が認識出来たり、稀に耐性が高くて対象を認識できてしまう一般人がいることくらいだろう。



 私は倒れ、地面に伏した彼に近づいた。そして認識阻害術を解除する。これで三人には彼が認識できるようになっただろう。


「………。大丈夫?立てる?」


「すまん…手を貸してくれ、なんか疲れが一気に来たみたいで動けないんだ…。」


 篠原が声を掛けると、鐘本は呻くように返答した。


 鐘本は野中にも協力してもらってゆっくりと立つ。


「突然倒れてるからちょっと驚いたよ」


「……?まあ、確かに突然だったよな。でも全身が辛いから仕方ないだろ。」


「そうそう、一応お祓い終わりだよ。一番デカいのは除霊したし、勝手に集まってくる奴はあとでやるから、今日のところはこれで解散ね。」


 私がそういうと、みんなそろって外へとでる。あの三人組について行くように私もアパートを後にした。






 右腕はしっかりと動く事は確認できた。それに体がやっと言うことを聞くようになり辛うじて一人で歩ける程度まで回復した。


 この義腕は何なのだろうか、医師は試作品と言っていたが、体が勝手にうごかされたり義腕が光ったり、果ては大男を霧散させたりと、謎である。


 そのところを次に医師と会うときに、聞かねばならないと思っていた。


 一人で動けるようになったので二人と別れを告げ、俺は自転車の鍵を外し、乗ろうとしたときに叫び声を耳にとらえる。因みに今は日が暮れてからかなり経っていて人通りは少ない。


 そんな中の叫び声である。かなり気になる…。


 野次馬根性で俺は叫び声のしたほうへと自転車を押しながら行ってみた。


 叫び声は口論であり、声の主は村上さんと真田さんだった。


「────も、目障り何だよ!だいたいこの人良いなって思った男子はみんなあんた目当てで私に近づいてきて!私にあんたを紹介しろって…。本当にあんたって何なのよ!私の邪魔ばっかり───」


 女って怖いわ、今日見た大男よりも怖い……。それに、昨日聞いたときに何か言い掛けてたがまさか村上さんへの暴言を恨みを乗せて言おうとしてたのだろうか。


 などと物陰からひっそり盗み聞きするつもりか、思った以上に黒い発言に得意の聞き流しを発揮していたところ。真田さんが突然バックに手を突っ込むのが見えた。


 そして真田さんはバックから光を反射する何か、金属のようなものを取り出した。


「地下に罠をたくさん仕掛ければどれかで死んでくれると思ったけど、本当にしぶといゴミよねえ、あんた。仕方ないから、私が直々に!殺してやるから安心しな!」


 真田さんが村上さんに何かを持った手を振り上げ、飛びかかる。


 が、村上さんそれをこともなげに回避し、ため息と同時に何か呟くと、真田さんがさらに怒ったように見え、また襲いかかろうとするが、


「お巡りさーんこっちで人が騒いでるんで仲裁に入って下さい!!」


 という叫び声を聞いて一瞬動揺して動きが止まった真田さんの何かを持った右腕を捻り、足を払い、転ばせ、上から体重を掛け動けないようにした。


 一段落してから俺は近づいた。い、いやべつに怖かったから干渉しなかったんじゃないからね…?邪魔すると悪いと思ったからだからね…?ほんとだよ?ほんと。


 篠原さんが反対方向から近づいてきた。どうやらお巡りさんを呼んだのは彼女らしい。


 だが、篠原さんは、こう言った。


「いやぁ、上手く止まってくれて助かったよぉ。助かったのは村上さんじゃなくて真田さんかもしれないけど。」


 その様子だと呼んでないだろうな。


「ちょっと篠原さん、私のそこにあるバックからケータイ取り出してもらえますか?」


 篠原さんは道端においてあるバックから俗に言うガラケーを取り出した。


「分かった、110番だね!」


「……まあ、そうかもしれないわね」


 そして村上さんは器用に片手で真田さんを抑えつつケータイを操作して電話をしていた。


 というか医師もやってたけどそうやって軽々と人を組み伏せられるんですかねぇ。不思議である。


「終わった?」


 そう、篠原さんが聞き、村上さんが返答をする前に、謎の黒スーツの集団がやってきて、真田を連れて行った。


 これが電話で依頼していたことなら圧倒的な対応の早さ……異常だな。


「終わったわ、ほんと。あの子ってば斧とか色々どこで入手したんだか…。」


「ホームセンターとかでじゃないの?」


 俺はそう考えてたんだが…。


「あれ?アキ君帰ってなかったの?」


 篠原さんに今認識されたようですね。一切発言してなかったとはいえ、わざとだよね?そうだよね?


「……あんな特殊な斧やナイフ、ただの一般のホームセンターで売られるはず無いでしょ。」


 分かってるんでしょ?とこちらへと言外に言っているようである。が、分からないんだが。


 そんな表情が顔に出ていたのか、村上さんは、


「え、嘘、そういうこと知らないはずない、あなたみたいな──────が。」


  此方側の人間。そう、確かに小声であるがそういった。なにを以て此方側というのかすら分からないが。少なくとも篠原さんには聞こえていないだろう。


「まさかなにも知らないの?」


 そう言う村上さんの発言に対して意味が分からないが分からないということは知らないのだと言うことで頷いた。


「はあ、じゃあ今度うちの神社に来なさい、教えてあげるから。」


 そう言うと村上さんが去ろうとする。

 だが、一度振り向いてこう言った。


「もう君は此方側に来てしまった。君はさらに深く巻き込まれる前に知るべきだ。」


 そう言い、去っていった。


「……何の話?」


「さあ?……駅まで送るよ?」


「…あ…りがとうアキ君。じゃあ…お言葉に甘えて。」


 そして俺は篠原さんを駅まで送ってから家へ帰った。


 取り敢えず俺の中に数々の謎を残しつつ、季節的に少し外れたお祓いという名の肝試し(または肝試しという名のお祓い)が幕を閉じた。

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