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義腕の王  作者: リョウゴ
序章・義腕の少年
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ひったくりと医者 1

 今日は運がないかもしれない。


「ふざけんな!離せよ!!」


 友人らと駅前のカラオケで遊んだ後に一人で駅前の本屋に立ち寄り、本を数冊購入した。その数冊の本と手持ちの金が全て入った財布が入ったバッグを


「それが無ぇと帰れなくなるんだよ!」


 奪われそうになるなんて!


 今俺はこの目の前にいる奴とバッグで綱引き(?)をしている。相手は何を思ったのか俺のバッグを盗もうとしているようだ。いや、学生が持ってる金よりそこらにいる人のほうが金を持ってるでしょ、俺が学生に見えるかどうかは知らないが。


 そうしてバッグ引きしているときに俺の右腕から、バギッ、と人の腕からは鳴ってはいけない音がして、右腕に力が入らなくなった。

 その隙を相手が見逃す筈もなく、相手はバッグを強奪する事に成功し、走り去ってゆく。


「待てよ!!」


 逃がすつもりはない。あの金がないと俺は家に歩いて帰らないといけなくなる。何故なら、バスで駅前まで来ていて割と家から遠いからだ。まあ、流石に帰れない訳じゃないが、徒歩は面倒だ。疲れるし。

 走り去っていく奴を追っていくと、奴の目の前に一目で外国人と分かるような外見をした男がこちらの方へ歩いてくる。


「どけえ!邪魔だぁ!」


 奴が外国人に向かって叫ぶと同時にポケットから金属を取り出して外国人に向けてかざす。

 ………おいおい、刃物か、それ

 だが外国人はそれにおびえた様子はなく笑う。純粋に微笑む。そして奴が外国人にぶつかる瞬間に信じられないことが起きた。

 外国人が軽く動いたと思ったら奴が回転し、地面に叩きつけられていた。右手を掴んで組み伏せている。

 どうやったか、俺には全く分からなかった。でもあれだとバッグのなかの本は駄目になってしまっただろうなあ


「いてててて!離せよぉ!」


「いやいや、そんな危険なもの振り回す人間を野放しにはできないのでね。ああ、警察には連絡したから、多分すぐ来るよ」


 どうやらこの外国人風の人、日本語ペラペラのようだ。

俺はこの外国人風に近づいて、礼を言うつもりで口を開こうとした。


「おや君、右腕大丈夫かい」


「え、まあ。」


「早く修理した方が良いんじゃない」


 俺の右腕は偽物だ。俺にはもともと右腕が無い。だが俺の親は、腕が無いのは辛いだろう大変だろうと医者に言って義腕を提供してもらって。だけど親は義腕と分かると良い意味でも悪い意味でも特別扱いされてしまうなどと言い(俺は義腕程度じゃいじめられないだろうと高校一年が終わった今でも思っている)一見どころか触っても分からないくらい普通の腕に見える被せ物(スキンって言うんだっけか、分からないが)をして生活している。

 そして今もそれをしていて、先ほどの異音からどこか壊れてしまったのだろうが見た目にはおかしなことはない。動かない右腕見てを一目でこの男は……


「おーい、聞いてるかーい」


「え、まあ、はい」


「いやたぶん聞いてなかったね?そうだよね」


「すいません。何の話でしたっけ」


 ちなみにこの男、まだ窃盗犯を拘束している。

……おや、警察がきたようだ


「警察がきたか、じゃあ、右腕、買い換えるつもりならこっちに声掛けてね」


 こちらに紙切れを渡してくる。なんだこれ、名刺か。

 外国人は窃盗犯の首に手刀を叩きつけて気絶させると(本当にこれで気絶させられるのかと感心)走り去って行った

 名刺には小難しい役職と連絡先と名前が書いてあった。なるほど、「トーマス・ヘディン」って言うのか。

   

警察にはちょっとした事情聴取されて割とすぐ解放された。

ちなみに本には全て折り目すらついていなかった

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