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兆候

「柳井君、フったの?」

「え? そういうのも分かるの?」


 答えの代わりに御門が頬を上げた。


「ちょっとあんたのこと怖くなった」

「なら絶交する?」

「しないわよ」


『俺、実はお前のことずっと好きだったんだ』


 同学年の柳井はただの友達だと思っていた。なのに何の前振りもなくこれだ。

 思わずため息が漏れた。せっかくいい友達だと思っていたのに、あいつは私を異性として見ていた。途端に柳井に対してどうしようもない生理的嫌悪感に襲われた。登校するのは気が重かったが、こんな事で学校を休むわけにもいかなかった。


「あ、高瀬……」


 同じ学校なので当たり前のように柳井もいる。私を見た柳井が気まずそうな顔を見せたことに私は無性に腹が立った。


 ーーお前のせいだろうが。


 私は柳井を完全に無視した。今後ずっと一生無視だ。


 ーー気分最悪。


 友達が一人減った。所詮異性は異性か。

 男子に告白されたのだから本当ならもっと喜んでもいいのだろう。でもどうしてもそう思えなかった。異性として見られたことが、自分の人生のステータスとして告白された回数が一回増えたことが、全く嬉しくなかった。


 理由はよく分からない。これも母の死の影響だろうか。

 あっけなく人は死ぬ。死は全てを奪う。死が、怖い。

 

「死ぬのが怖い?」

「どうして簡単に読むかな」

「ごめん」


 御門の前で隠しごとは通用しない。


「穂波」


 御門の視線が真っすぐ私に突き刺さる。


「何でも笑い飛ばせるような人間にならなきゃダメよ」


 ーーえ……?


 思わず御門に視線を向けた。


「穂波?」

「あ、ごめん」

「大丈夫?」

「う、うん」


 目の前に変わらず御門がいる。当たり前だ。


 ーー今、一瞬……。


 御門の姿が消え、母さんがそこにいた。

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