ワシントン体制下の日本海軍が建造した航空巡洋艦「葛城」
航空巡洋艦「葛城」 Katsuragi
― 日本海軍 二万六千噸級 航空巡洋艦(1925年竣工)詳細叙述 ―
---
1. 建造の背景(成立経緯)
■ ワシントン条約体制下の日本海軍の新構想
史実と異なるこの世界線では、
• 八八艦隊計画が縮小または未計画
• 金剛沈没(事故/戦損)により戦艦戦力が減少
• 加賀・土佐は戦艦として完成
• 赤城は空母に改装
• さらに赤城とペアになる第二の大型空母が必要
という状況が重なり、日本海軍は 大規模な純空母2隻体制 をすぐには整えら
れなかった。
これにより海軍軍令部は次の方針を打ち出した:
「戦艦・巡洋艦・空母のいずれをも兼ねる、多目的“航空巡洋艦”を一隻建造
せよ」
これが 葛城 計画の起源である。
---
2. 基本設計思想
葛城は当初から 航空巡洋艦(Carrier Cruiser) として設計され、
● 巡洋艦としての砲戦能力
● 空母としての航空攻撃・偵察能力
● 機動艦隊の護衛・偵察・対空戦闘
● 将来の純空母化に耐えうる設計余裕
を同時に満たすことが要求された。
特に海軍は、主砲を装備しつつも「航空運用能力を決して犠牲にしない」た
めに、
• 主砲は艦首に前方集中配置
• 艦尾甲板は航空運用専用として広く確保
• 格納庫は二層構造
• 将来の主砲撤去を前提に、艦体構造を強化・標準化
という革新的な手法を採用した。
---
3. 基本性能
基準排水量: 26,300 t
満載排水量: 約32,000 t
全長: 238 m(飛行甲板長約230 m)
全幅: 25.5 m(飛行甲板幅約27.5 m)
吃水: 7.8 m
主機: 蒸気タービン 4軸 / 出力 95,000 shp
速力: 32.8 kt
航続距離: 14ktで9,000海里
乗員: 約2,050名(航空隊含む)
---
4. 兵装(巡洋艦火力)
■ 主砲:20.3cm連装砲 × 3基(計6門)
• 1番砲塔:艦首
• 2番砲塔:1番砲塔後方の高い位置
• 3番砲塔:艦橋後部、飛行甲板後端に干渉しない位置
砲戦能力は「高雄型をやや下回る」レベルだが、十分な巡洋艦火力を有す
る。
■ 副砲:無し
主砲+対空砲に集中し、重量と構造を飛行甲板へ回す。
■ 対空火器
• 12.7cm連装高角砲 × 8基
• 25mm機銃(単装・連装・三連装)多数
当時としては破格の対空装備で、のちの改装でさらに増備される。
---
5. 航空設備
■ 搭載機:70機(格納庫2層)
• 上部格納庫:約38機
• 下部格納庫:約32機
• 合計:70機
■ 航空機構成(平時)
• 戦闘機:24
• 爆撃/攻撃機:30
• 偵察機:12
• 予備:数機
■ エレベーター
• 前部(大型1基)
• 後部(中型1基)
■ カタパルト
• 前部甲板に簡易カタパルト1基(後に撤去)
※離陸は主に飛行甲板滑走。
---
6. 防御装甲
• 水線帯:100〜120mm
• 甲板装甲:40〜60mm
• 弾薬庫側面:100mm
• 砲塔装甲:80〜100mm
防御は「巡洋艦並み」で、航空燃料タンクは多数の隔壁で区画化され、赤城
よりも安全性が高かったと言われる。
---
7. 艦体構造の特徴
■ 「前砲塔集中・後方航空甲板」という明確な分業
葛城の最大の特徴は、砲戦区画(前) と 航空区画(後) を完全分離した
点。
これにより:
• 発砲時の衝撃が航空機に影響しない
• 被弾ダメージが局限化される
• 後方甲板を純空母のように使える
• 近い将来の「主砲撤去→甲板延伸」改装に耐えられる
という運用上の利点が生まれた。
---
8. 運用思想と艦隊内での位置づけ
■ 主任務
1. 偵察
2. 艦隊の対空防御
3. 敵巡洋艦への砲撃
4. 同時に航空攻撃・支援
5. 機動部隊の護衛
戦艦・巡洋艦・空母をバランスよく統合した「中核艦」として扱われた。
■ 運用方法
• 通常は空母として運用し、
• 必要なときだけ砲戦能力を発揮する。
これは当時としてきわめて柔軟な戦術概念で、海軍内でも評価が高かった。
---
9. 葛城の評価(同時代の軍人・海外)
■ 日本海軍内
海軍は葛城を:
「赤城とは異なる“多目的艦”として非常に価値がある」
「巡洋艦の火力で敵を制せる空母は革命的」
と高く評価。
■ 米海軍の評価
米国は次のように評価したとされる:
「巡洋艦火力と空母能力の混成は興味深いが、船体が複雑で高価。日本は大
胆だ」
(実際、米海軍が同型艦を建造することはなかった。)
---
10. 将来の改装構想(純空母化案)
葛城の設計には最初から「純空母化」の余地が残されていた。
予定されていた改装案(1930年代計画)
• 主砲3基を全撤去
• 飛行甲板を前方へ大延長(約25m増)
• アイランドを右舷に固定化
• エレベーター大型化
• 搭載機数を 70→90機以上 に増強
• 対空火器の大幅強化
この改装はワシントン条約失効後に本格検討され、「葛城改(仮)」として
計画書が残っている世界線のイメージ。
---
**11. 艦歴の要点(戦前)
• 1925年:竣工
• 1926年:航空巡洋艦として初の艦隊演習参加
• 1929年:赤城とともに第一航空戦隊を編成(艦種は異なるがペア運用に近
い)
• 1930年代:巡洋艦隊と機動部隊の橋渡し的存在として運用
• 1937年以降:対空火器増設、飛行甲板の耐熱化など小改装を複数回受ける
• 1940年代初頭:純空母化の議論が再燃
(あなたの世界線で戦争がどう展開するかにより、この後の戦歴は自由に描
けます。)
---
まとめ:葛城とはどんな艦か
• 26,000t級の大型航空巡洋艦
• 巡洋艦火力(20.3cm×6門)+空母能力(70機)
• 射撃区画と航空区画を明確に分離した革新的設計
• 構造的に純空母化が可能
• 機動部隊の核となる多目的艦
• 海軍内外から「日本的合理性」「独創性の結晶」と評価
つまり葛城は、
「空母になりきる前の日本海軍が辿りうる“分岐進化のもう一つの答え”」
に相応しい艦でした。




