パリ講和会議の日本(1919) ― 欧州で血を流した“中級列強”としての存在感と限界 ―
【Ⅰ】日本の総合的な立場
この世界の日本は、史実と決定的に異なる条件下でパリに臨む。
◆ 《プラス材料》
1. 欧州戦線で2個師団・金剛以下の戦力を派遣
2. ソンムの大損害・金剛爆沈という“血の代償”
3. 英仏からの評価は史実以上
4. 満鮮喪失で“脅威度が低い同盟国”と見なされる
◆ 《マイナス材料》
1. 日本の国力は史実以下(満鮮を失ったため)
2. アメリカは日本を“協商の補助的列強”としか見ない
3. ロシア問題では主導権なし(朝鮮戦線に釘付け)
4. 海軍が金剛喪失で一時的に弱体化
したがって、
日本は「英仏に強く、米国に弱い」という非対称な外交構造となる。
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【Ⅱ】日本代表団
• 代表:西園寺公望(史実同様)
• 補佐:牧野伸顕、幣原喜重郎、加藤高明など
ただしこの世界では、
**“欧州戦線の将兵の血を無駄にしない”**という大義名分が代表団を強く支
配する。
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【Ⅲ】会議の主要争点での日本の立場
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◆ 1. 山東問題(最大の焦点)
史実では中華民国との対立で揉めたが、
この世界では日本の立場が弱くなる。
理由
• 日本は満鮮権益を完全喪失し“大陸の利権国家”ではない
• 米国の反対が史実以上に強い(日本を海洋進出国と見ない)
• 中国(北京政府)は米英に接近
• 日本は軍事力を欧州で失い“強圧的手段”をとれない
結論(最も合理的な決着)
日本は山東半島の租借権を保持するが、
青島の内陸部権益は大幅に縮小される。
内訳
• 膠州湾租借地:継続
• 青島港:管理権維持
• 旧ドイツ鉄道路線:国際管理委員会へ移管(日本の単独管理は不可)
• 沿線鉱山:中立化
• 日本軍は1920~21年の早期撤兵を義務付け
史実より大幅に不利な内容だが、
英仏も同意したため日本は受入れざるを得ない。
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◆ 2. 南洋群島の扱い
これは日本にとって最も有利。
• 日本は史実以上に「血の貢献」をした
• 英国は日本を強く支持
• 米国も反対できない(海軍は劣勢)
→ 結果:
日本は「赤道以北の旧ドイツ領南洋群島」を委任統治領として正式獲得。
これは史実とほぼ同じだが、
日本の軍事的疲弊ゆえに「基地整備権」がやや制限気味。
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◆ 3. 人種的差別撤廃案(史実では否決)
この世界でも否決だが、決定理由が異なる。
史実:
• アメリカ(人種問題)と英国自治領(白豪主義)が反対
この世界線:
• 日本の政治的発言力が史実以上に弱い
• 欧州での兵力消耗で「大国としての威圧感」が欠如
• 米国が強気に反対できる(日本の行動力=小)
→ 日本は象徴的に提案するが、通過する可能性はゼロ。
逆に英仏は「日本の顔を立てるため」
前年より柔らかい表現の条文案を提案し、
国際労働機関(ILO)や移民法に関する“付帯宣言”で補完される形に。
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◆ 4. ロシア(ボリシェビキ)問題
史実との違いが最も大きいポイント。
この世界の日本は
• 欧州派兵で疲弊
• 朝鮮国境でソ連軍の圧力にさらされている
→ 日本はシベリアへ大規模介入できない。
日本の主張:
• 「ロシア極東の安定化には英仏米主導の多国籍監視が必要」
• 「日本は象徴的兵力のみ参加」
英国の結論:
• 日本に極東の単独権益は与えない
• 国際管理委員会をウラジオストクに置く案を採択
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【Ⅳ】講和条約での日本の最終獲得物
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《獲得》
1. 南洋群島の委任統治(赤道以北)
→ 史実同様
2. 膠州湾の租借継続
→ ただし国際管理要素が入る
3. 海軍軍縮の「例外枠」
金剛の爆沈により海軍力が低下していたため、
英国は日本に対して
「巡洋戦艦の代替建造」を“講和条約で黙認”する。
→ 後にワシントン軍縮会議でこれが争点となる。
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《失ったもの》
1. 山東省の内陸権益
→ 事実上、国際化される
2. 満鮮の権益完全喪失が確定
→ ロシア(ソ連)勢力圏として国際的に追認される
3. ロシア干渉の主導権
→ 完全に英米主導
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【Ⅴ】日本国内の反応
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◆ 軍部
• 陸軍:欧州での損耗と講和不利に強い不満
• 海軍:金剛喪失を契機に“防御重視思想”へ転換が進む
◆ 護憲派・政党
• 「英米協調こそ日本の未来」という世論が強まる
• 満州・朝鮮への野心が完全消滅
◆ 国民
• 「兵士が血を流したのに、得たものが少ない」という落胆
• ただし欧州での犠牲が“日本が列強である証明”として誇られる部分も
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【Ⅵ】総合結論
この世界の日本のパリ講和会議は──
「失地を回復できず、戦果も限定的だが」
「英米協調によって“国際社会の安定した中級列強”として地位確立」
という結果になる。




