p3 ボッチ、初めての友達
ちょっと残酷表現あるかも
前回のあらすじ
緋高は神様からの無茶振りを嫌がり、無茶振りの理由を聞いてみるもクズ過ぎる言葉が神様の口から出てきた。ムカつきながらも、その後のイノシシの襲撃から緋高を救った神様に、緋高はモヤモヤしながら仲間を探すためこの世界を探索することに決める。
「でもなぁ……お前はパリピでクズだったし、アテルさんは天国に行った後で戸惑ってて喋れたけど……普通の人に対して俺は喋れないからな。」
俺は神様に愚痴のように喋る。俺は陰キャだから、まともに人と喋ることができない。
「それに関しては僕にもどうしようもできないねー。ま、そこは頑張ってよ。仲間に引き込んだ方がいい人はこっちでまとめてあるから。名簿から頑張って探したんだよ?」
「あーはいはいそれはご苦労なこった。で、そのリストにはどんなのがいるん?」
「条件ありますー?」
「……ええっと、俺より頭が良くて、手先が器用で、多少運動もできるやつ。」
「最初の条件だけなら簡単だったのに。」
「おい」
神様はリストをめくり始める。俺からは神様の事は見えていないが、音でおおよそ分かった。
「あ」
急に音が止まる。条件にぴったりの人がいたのだ。
「見つけたよー。感謝してよね、そんなわがまま要求聞いたの。」
「うっざー」
神様は一呼吸置いた後、情報を話し始める。
「名はカミルルス・ド・モール。年齢18歳。頭脳は元世界の偏差値で例えると60ぐらい。手先が器用で、自身が服を作ってそれを販売していたが、戦いに巻き込まれ廃業。現在は、ここの近くの森に住処を建てて暮らしている。50m8.6秒。この世界で生き残ってる時点で、相当の能力は見込めるけどね。」
「頭良! ぴったりすぎない!?」
「しかもね、この世界の中でも有数の常識人なのよ。まともに話しできるのこの子ぐらいじゃない?」
「まともに話ができるって……他の人はどのレベルなん?」
「あー、あくまで監視してた時に見たのをもとに話すけど……」
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「こんにちは!」
「おう、金くれよ。」
「え?」
「あ、ありがとよ!」
「ちょ! それ俺の金ー!」
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「って感じ。」
「怖」
文明崩壊している世界なのだ。常識なんてあると生きていけないのだろう。弱肉強食の世の中、このような輩が出てくるのは普通だ。
「あとは君のコミュ力にかかってるからね。ファイトぼっちくん!」
「おい名前! 俺はバンドしてねぇからな! たしかに高校生だけど!」
神様のサポートもありながら、険しい道中を進んでいく。実際、神様のおかげで生き残れている。それには感謝しかない。
そんなこんなで、ついにお目当ての森を見つけた。そのなかでも一番大きな木に、ツリーハウスのようなものが建てられている。
「あれがカミルルスさんのお家?」
「そう。あれを一から作ったんだ。器用さと体力は分かるだろ?」
「わー……俺なら三秒でギブ……」
そんな話をしていながら、家に歩み寄っている時だった。
パァン!
乾いたような銃声が、森中に響き渡る。放たれた銃弾は、俺の頬をかすめて後ろの木に着弾した。血が出てくる頬に手を置きながら、少しの間放心する。
「は?え?銃?」
「あー……まあそうだよねー」
神様はそのまま話し始める。
「えー、問題。もし、君が行く人すべてが暴徒みたいな世界で銃を手に入れたとする。そんな世界で、知らん奴が自分の家に来ました。恐らく例の暴徒です。さて、あなたはそいつを撃つ?撃たない?」
「撃つ。」
「そ、そゆこと。結構手先が器用なんだから、銃ぐらい作れたんでしょ。」
そんなことよりも、今は自分の命が最優先だ。俺は全力で走りだす。度重なる銃声と飛んでくる弾丸を、神様に支援してもらいながら全力でよける。
「まずいまずい! どうにかなんないの!?」
「空気でバリアをお前の周囲に張った。効果が切れる20秒以内に自分がまともだと主張しろ。」
頼れるのか頼れないのかよくわからない。俺は立ち止まって、ツリーハウスに向かって話し始める。
「あ、あの、そこの人ー! 僕は筋肉ゴリゴリ脳みそ筋肉マンじゃありません! 信じてください! 四則の計算ぐらいならできます!」
その瞬間、銃声がぴたりとやんで、向かってくる銃弾もなくなる。
(あ、ガチで間違われてたんだ。心外。)
ツリーハウスのドアから目がのぞいてきて、俺の体と身なりを見たあとようやく出てきて降りてくる。オレンジ色の長袖Tシャツを着ていて、目は綺麗な青色、髪色は緋色だった。
「あ、ごめん。てっきりいつものキショキショ脳筋マンかと。」
「酷い!」
吊り橋効果なのかどうかはわからないが、あんな状況だったお陰で自然となじめた。その後にその男は、俺を家に招いて、頬を応急処置をしてくれた後、自己紹介をしてくれた。
「僕はカミルルス・ド・モール。この家は比較的安全だから、数日間ゆっくりしていってよ。」
「比較的安全……確かに、外はものすごくひどい状況でしたしね……」
「あ、僕は緋高 光洋です。」
「珍しいね、名前。」
そんな話をしている中、神が小声で話しかけてくる。
「おい! 誘えよ! 国作り!」
「できるわけねえだろ! 話せるだけだよ! 人の誘い方ってどうやるんだよ!」
「知らん。がんばれ。」
「もうぅぅ!」
カミルルスさんを置いてけぼりにしてしまっている。このままじゃ結局死ぬだけなので、勇気を出して誘ってみることにした。
「あ、あのーーー」
「?」
「一緒に……国を作りませんか? この世界で。」
「……え?」
困惑している。こんな言い方と急に言われた無理難題を理解することができていないのだと思う。
「え、えぇと……、自殺志願者の方?」
「ち、違います!ちょっと……か」
「いや、僕の事は誰にもいっちゃだーめ。一応知られちゃいけないんだ。神は高次な存在だからね。あと、君が転生者ってのも知られちゃいけないね。この子たち転生者なんて知らないし。」
「……」
理屈が分からない。今説明しないでほしい。そのせいで、理由をこの場で即興で作らなければなくなった。
「あ、あの、流石にこの世の中がやばいなってなって……その……」
「……」
(やっべー適当すぎたか?)
まずい! そう思ったその後、帰ってきたのは驚きの答えだった。
「や……やったー!」
「え?」
「君みたいな人が出てくるのを待ってたんだよ! そういう思想を持つ人が少なかったから、そんなこと聞いたことなかったんだけどさ! 僕もルールはあった方がいいと思ってたんだ! でも実行になかなか移せなくて……誘ってくれてありがとう! もちろん乗るよ!」
「わ、ぐいぐいくる。」
なんかよくわからないが、成功ということでいいのだろう。仲間に引き込めてよかった。夜が更けてきたけど、ここで寝れるし、国作りの仲間も手に入った。
「よーし、そうと決まったらさっそく行動! ここを拠点として作り上げよう! 僕たちの帝国を!」
「ちょ! 今日は寝させて!」
そうして、俺のドタバタ異世界生活1日目はここで終わった。
夏休み 意外と書けて よかったわ
趣味太さん心の俳句