p10 来ちゃった神様
前回のあらすじ
神様から魔法工学について説明を受ける緋高。
目的の中枢型魔工知性体を作るために魔法の羅針盤を取りに行くことに。
そのために聞かされた神様の過去。クズな父の元で育った神様、しかも、魔法の羅針盤を持ってるのは父とグルの人だった。
神様は父について調査するために、緋高が居る異世界へ赴くことを決意する。
偽名はゴーネ。ゴーストと神様の本名「アン・ヴェネスト・ゼルヘルク」を混ぜた名前だ。
「やっほー! 来ちゃった♡」
「来ちゃった♡じゃねえよ気持ち悪い。」
「酷! 僕のイケメンボディ見て緋高も惚れたでしょー?」
「……キッショ。」
「うぼっ! ……なかなかやるようになったね。」
「拠点に行くぞ。お前の顔見てるだけで吐き気する。」
「うわー傷ついちゃったー神様傷ついちゃったー」
「ものすごい棒読みだな。」
こんな神様の顔見て喜ぶ奴なんているのか?
「さ、行くぞ神様。」
「ちぇー」
その瞬間、物陰から謎の人物が飛び出してきた。
「神様! 危ない!」
「あ、もう来た」
神様は慣れたように攻撃を躱す。
「ゼルヘルク。貴様を殺しに参った。」
「いやーカルさん仕事早いねー。今来たばっかなのに。」
「何を申しておる。貴様は今から黄泉を見に行くのだぞ。」
神様を殺しに来たんだ。アダマスさんほどでは無いが凄い強い人だと一目でわかる。
「神様、逃げた方がいい! いくら神様が強いとはいえ分が悪い!」
「いや、安心してよ。」
「余裕そうに……遺言はそれでよいのだな?」
「どうせならもっとかっこいい遺言がいいなー」
「もうよい。参る。」
そう言うと、刀を持った男は瞬時に移動し、刀を突きつけた……俺に。
「え? 遺言ってこっちの事だったの?」
「私らの目的はこの男だ。この男を殺されたくなければ大人しくついてこい。」
「……あ、そっち狙うんだ。緋高の事も知られちゃってるわけ?」
「貴様も余裕そうだな。いいのか? この男を殺されても。」
「それは困るなー」
何だこいつ。人が死にそうなのになんでそんな余裕なんだよ助けろこのクソ神!
「君、人間でしょ? カルも面倒くさいことするな。」
「無視をするなら仕方がない。いかせてもらう。すまぬな、貴様に私怨は無いが、カル様のためだ。」
「嫌だー! また死にたくない!」
「緋高泣くなよー。俺がお前殺したみたいじゃん。」
「ふざけんなクソ神! 呪ってやる!」
そのまま刀の先が俺の腹に突き刺さる。俺はそのまま意識が途切れ、今度は転生ができず常世を彷徨う……と思いきや、急に刀身が真っ二つになった。
「あ……え?」
「!?」
「君、人間でしょ? どうしてカルなんかに仕えてんの?」
神様の手から煙のようなものが出ている。恐らくビームか何かを撃って刀身を折ったのだと思う。
「……まぁよい、替えの刀などいくらでも……」
「人の話を聞けよー。君が言ったんだろ?」
神様の足元には、3本ほどの刀が踏まれていた。
「貴様!」
「あんま動かない方がいいよ。動いたら……」
謎の男が神様の元に走ろうとすると、糸が男を木に固定した。隠れて糸を忍ばせていたんだ。
「もう一度聞くよ? なんでカルに仕えてんの? このまま黙ってても、結局カルは俺が殺す。言っても言わなくても、君の主人の結末は変わらないよ? 言ってくれたらちょっと加減してあげるけど。」
「そーだそーだ! 早く言え!」
「……主は、死んだ者の魂を常世に生き返らせている。この時代で言う転生者というものだ。」
観念したのか、男は話し始めた。
「てことは君、元の世界の過去の人?」
「そうだ、我は徳川に仕えていた。」
「徳川って……江戸じゃねえか!」
「親父のやつそんなことまで……君は恐らく、死んだけど成仏できなかったのをカルが転生させたってことね。それで仕えてるのか。」
「あぁ、もういいだろう、我は返らせてもらう。」
「いや、普通に考えて帰らせるわけないでしょ。逆に拠点への案内役として使わせてもらうよ。」
あれ? この神様最強?
「拠点帰るぞ、もう説明がめんどくさすぎる。」
「あ、え、はい。」
確かに説明めんどいなこれ、神様の事とかこいつの事とか。
俺たちは拠点に帰り、これまでの事を伝えた。神様との出会いは襲ってきた男から守ってくれた事と伝えた。
「こいつが新しい仲間のゴーネ。こいつは捕らえた捕虜。」
「……え、なにこの人最強?」
「いやいやまさか、こんなひょろがりが最強なわけないでしょ。」
「緋高、それはさすがに酷いぞ。」
「ま、まぁ落ち着いて。これでその羅針盤を持つ奴の所に行けるんでしょ? じゃあいいじゃん行こ!」
確かに、今もめてる暇はないな。少し反省しよう。
「よし、じゃあ行くか。」
「行こうぜ。」
これが、長きにわたる戦いの火蓋となったのだった。
大体6日目くらいにキリ付くと思います