戦士としての第一歩
授業も終えた俺は教会に来ていた。勿論やることは決まっている。狂戦士になる為の最初の職業、戦士になる為だ。
「よし。これで今日から俺は戦士だ」
「うわぁ。何の迷いもなくほんとになっちゃった」
隣でリリィは俺を若干引き気味で見ていたがそんなのは関係ない。
レベルも1からのスタート。 ステータスも初期値に戻ってはいるが、そんな事はこれからの事を考えれば些細な事だろう。
戦士の利点は技に【逆襲】に【強攻撃】ある点だ。
逆襲はそのまま使えば攻撃力アップ(小)と大した事はないが、瀕死の時には攻撃力アップ(中)まで引き上がる。
それに強攻撃は相手に当たると一時的に動きが止まる。これは動きの遅い戦士からすればかなり相性がいい。
他の職業と比べると技の種類は少ないが俺から言わせれば、それだけあれば大概の敵は葬れる筈だ。
「リリィ。今から魔物討伐に付き合ってくれ」
「えっ、今から? もう後3時間もすれば日も落ちるし明日からでもよくない」
「いや、今からだ。 戦士の動きを把握しておきたい。 明日からまた模擬戦が始まるし、ぶっつけ本番じゃ流石に俺も相手に遅れをとるかもしれないからな」
勇者から貰った加護があるとはいえ、他の連中(レベル10)とはステータスが劣っている。今のうちに少しでも経験値を稼いでおきたい。
街の外に出て魔物を狩るために森の中に入った二人は、薄暗い森の中をしばらく進むと二匹のウルフが唸り声をあげてアルトの前に立ちはだかった。
「ちょうどいい相手が二匹。 試させて貰うぞ」
新調した鉄の斧を片手に、加護を付けずに構えるアルト。向かってきたウルフ二匹を相手に薙ぎ払いをかけた。
スバァァン!!
「むっ?」
避けられた? 剣なら二匹同時に当たっていたタイミングだが、戦士だとそうもいかないのか。
「ならこれはどうだ?」
さっきの間合より半歩間合をを詰めて……
強攻撃!!
スバァァン!!
「ギャンッッ!!」
強烈な一撃を貰った一匹のウルフはそのまま真っ二つに引き裂かれ絶命する。
おっ。 動きを止めるつもりで撃ったのだが斧ならそのまま真っ二つってわけか。剣なら深手程度な筈だが中々の攻撃力だ。
だが、斧に振らされている感覚があるのは違和感があるな。
「ならば、これはどうなる?」
【勇者の加護】【勇者の祝福】
全能力値アップ(大)
状態異常無効
即死無効
ウルフは唸り声を上げながらもその場から逃げようとも考えたが、後ろで備える勇者の姿に逃げ切れないとでも悟ったのか、もう一度アルトに狙いを定め攻撃を仕掛けたのだっ。
「ワォォォン……!!!」
苦し紛れのウルフハウリングか。
レベルの低い相手に威嚇をし、一時的に身動きを封じる状態異常攻撃。
「無駄だ。 俺には効かねぇよ」
スバァァン!!!
「ギャンッッッ!!」
そのまま2つに引き裂かれたウルフはそのまま息絶え、戦闘は終わりを迎えた。
「状態異常無効。 能力値アップ(大)。 想像以上だ」
以前の剣士とまではいかないが、やはりそれなりの動きが加護を合わせる事で可能に出来る。これなら充分戦える。
「リリィ、悪いがもう少し先に行くぞ」
「えぇぇっ? ご飯は? もうすぐ夕食の時間始まっちゃうよ」
「悪いがもう少しだけ付き合ってくれ。 夕食なら俺が帰ってから作ってやるから」
「嬉しいけど、そんなぁぁっ」
そうしてもう少し魔物討伐に付き合って貰うため、俺はリリィを夜まで連れ回したのだった。
元A級冒険者のおっさん少女を拾う。〜アイテムボックス持ちのエルフ少女と一緒に王都で自由気ままにスローライフ〜
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