始まりと出会い
「お〜ここが今日から通う教室かぁ」
俺は教室の広さに思わず声を漏らした。
以前から話は聞いてはいたし、知ってもいたが実際に見るとその広さに驚かされた。
今日から通うコーネリア王立学園では剣術、魔法が栄えていて他の国からも多くの学生が入学してくる場所だ。
この広い学園は俺が通っていた田舎の中等部とは比較にならないくらい何もかもが違っている。
俺は予め番号で振り分けられた指定の椅子に腰を掛け、時間を潰しがてら軽くカリキュラムに目を通す。
「1年の時に野外演習と対人訓練。 2年では実践訓練。3年で卒業訓練と試験か……」
細々と書かれているがまとめるとこんな感じだった。
まぁ、ちゃんと訓練すれば卒業は出来るだろう。それくらい周りより剣を振ってきたつもりだからな。
試験の時には見なかった強そうな奴も何人かいるが、それよりも可愛い女達も結構いる。
なんというか最高だ。 田舎の中等部とは大違いだ。学園生活はこうでなくては。
思春期真っ只中の時にむさ苦しい野郎だけで生活なんかしてたら心が病んでしまう。
自慢じゃないが俺は今までに女子と付き合ったことがない。だからこの学園では女の子といずれ恋をして付き合って、最後は……くくっ。
いかんいかん。 妄想が止まらない。 付き合いたいという気持ちが暴走してしまった。
まぁ男なら当然の気持ちだ。だが今は学業を優先してからだ。
そしていずれは上級職を目指す。
そう俺は自分に言い聞かせていると見知った男がやってきて声をかけてくる。
「よっ、また一緒だなアルトっ!」
「ルークか。また宜しく頼む」
そう言って俺の前の席に陽陽と腰を掛けた男は俺とは生まれも育ちも一緒のいわゆる幼馴染という奴で、そして小っ恥ずかしくて言いたくはないが親友ともよべる相手、それがルークだ。
こいつは何でも器用にこなし頭もいい、おまけに顔までいい。それに親は地元ではそこそこの有名な商業家で金にも困っていない。いわゆるボンボンスケベだ。
「なぁ? 結構可愛い子いるよな! ほらあの子なんて目がクリっとしてて髪もホワッとしてて小柄で俺が思わず守ってやりたくなる様なタイプだわ」
会って早々にルークはテンションを高くして俺の肩をペシペシと叩き一人で騒いでいる。
確かに田舎の時の女子とは何かが違う。 何というかイモっぽくないというか。 都会だからそう見えるのか。もしくは可愛らしい制服のおかげでそう見えるのか。 まぁ付き合ったこともない俺がどの立場でそんなこと言っているかは置いてといて俺は素直に同意することにした。
「なぁアルト。あの噂知ってるか?」
「噂って何がだよ?」
全く見当もつかない。噂というと学園にまつわる怪奇現象の類か?それこそ俺は知らない話だし興味もない。
「なんだよ知らないのかよ。 お前らしいけど。 実はな、この学園の1年、しかも同じ教室に勇者がくるらしいんだよ!」
………。
「本当か?勇者ってあの?」
「そうなんだよ。マジだよ。何でも入る前にあの剣術試験の時に俺達がボコされた教官を瞬殺したらしいぜ」
「それはすごい。あのゴリラみたいな教官を瞬殺するとは」
俺達が試験を受けた時にいた教官は体格差を武器に俺とルークだけは善戦はしたが最後にはスタミナ切れでボコられる羽目になった。他の男達は全然相手にならず最初からボコされていたが。
俺とルークは剣士で、基本手数で戦うが多少の盾も使う。その時の教官は上級職の重騎士。大盾を使い大概の敵の攻撃を受け切る事が出来るいわゆるタンクだ。下級職の俺達では戦闘面からも始めから不利なのだ。
勇者が魔王を討伐して300年以上経つが勇者の血筋は何代にも渡って受け継がれていると聞いた事がある。
俺達みたいな凡人とは何もかも違う。 言わば選ばれし人間。 いや、人類の頂点と言っても過言ではないだろう。
それがこの高等部1年の同じ教室? 俺は教室に入る前に張り出された名簿に目を通す気もなかったから気付く筈もなかったが。 おそらく気付いてる生徒も中にはいるだろう。
一体どんな奴が来るのかと俺は胸が高鳴った。
チャイムが鳴り教壇に教員と一緒に入って来た男がいた。 強者が持つ独特のオーラ。 それよりもアルトは美しさに目を奪われていた。 透明感のある金色の髪。 肩まであろう長い髪は後ろで結ばれており、そして他の男子よりも明らかに長い脚。制服の上からでも分かる引き締まった無駄のない身体。そして何より整った顔立ち。一瞬アルトは女性なのかと錯覚したが、男子用の制服を着ている以上男なのだと我に返った。
危ない。危ない。同性を変な目で見るところだった。
よく見たら胸もないし、いちいち制服も男物の服を着る物好きなんていないだろう。
まったく、童貞も捨ててないのに同性を好きにでもなったりしたらこの先の人生おかしな事になる。
だがあの瞳。俺でも知っている。小さい頃に何度も読み聞かされた勇者と魔王の絵本の話。
どこの家にも必ず一冊は置いてある英雄の話。
物語の勇者と同じ瞳の色。
空のようにどこまでも澄みきった吸い込まれるような瞳
【青眼】
勇者しか持たないとされる特別な瞳だ。
「今日から特別に3年間、お前達と共に学ぶ勇者のリリス・アストリア君だ。 みんな仲良くしてやってくれ」
教員が軽く勇者の紹介をし、本人に改めて自己紹介を振ると勇者から出た言葉は意外なセリフだった。
「……リリス・アストリアだ。 始めに言っておく。お前達とは3年と短い時間だが馴れ合うつもりはない。極力私に関わるな」
…………。
おいおい。顔色変えず中々の事を言ってくれる。
お前のせいで教室がすっかり静まり返ってるじゃないか。 それに俺達は眼中にないってか?
ぷっ……。 はははっ
自分から全員を敵に回すような事するなんて本当に頭おかしい、おかしな奴じゃないか。
考えたら笑みが込み上げてきた。
でもまぁアイツが来たおかげで学園生活が楽しくなりそうな予感がする。
それが俺と勇者リリス・アストリアとの出会いだった。
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