表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

忙しい人のための「PanDemonicA/3」パンデモニカ第3部


聖なるホストクラブ

 チューヤはサアヤに連れられて六本木を訪れ、サアヤの親戚である「ナミおばさん」を籠絡し、大金を稼ぐホストに苦情を述べようとする。

 店長の竹園は柔らかい態度で受け流すが、電話が鳴り、どうやら妻が泥酔して見知らぬ電車に乗ったあげく、見知らぬ駅で降りたらしいことを知る。すると鉄オタのチューヤは、ビデオ通話で見えた一瞬の映像と音から場所を特定、彼女を助けることで頼みを聞いてもらう約束をする。


坂道で惑う魂たち

 女性を助ける過程で境界化が発生し、彼らはコカクチョウというアイドルに出会う。AKVN14というアイドルグループとの接触は、中野に次いで二度目だ。現在、彼女らは「中野総選挙」というイベントを展開中である。

 その後、上中里で再び境界化に遭遇、神将と星天使との戦いの場に巻き込まれる。東京にある12の「くらやみ坂」では、仏教と一神教の「魂の奪い合い」という舞台装置が稼働している。竹園の妻、ララという女性は仏教側で、できるだけ多くの死者の魂を仏教側にぶんどるのが仕事であった。


広尾の豪邸はケートの実家

 激しい戦いの末、ようやくミッションをクリアして、現世側に出てくるための出口はラブホテルだった。その姿を目撃したケートは、にやりと笑う。チューヤは必死で誤解を解こうとするが、ケートに遊ばれるだけだった。

 ケートは北千住の町工場・雷文ホトニクスに用があり、チューヤたちは千駄木にあるナミさんの勤務先・生体医療工学研究所の本社に用がある。ごく近場ということで、同道する3人。そんななか突然、やたら危険な場所へ突進するようになるチューヤ。どうやら特殊なトキソプラズマ感染症を発症したようである。

 飛び込んだ地下は墓地であり、牢獄だった。そこで出会ったのが、FBI捜査官のミカ・城之内。彼女は雷文ホトニクス社長・城之内ジンの娘でもあった。地下に監禁されていた彼女を助け、生医工がアメリカ企業に買収されたことなど、背景を知っていくチューヤたち。そこにはデメトリクス・カプセルに絡む、国際的な陰謀が横たわっていた。


神学機構の異端者たち

 ヒナノの保護者、ガブリエルを裏切り者と決めつける勢力がある。代々木上原にある極東の回教寺院は、彼女が裏切り者ではないことを証明してくれるかもしれない。

 チューヤとサアヤは、代々木上原でリョージとヒナノと待ち合わせる。その日、寺院ではイスラム式の結婚式が行われていたが、やおら花婿のうえに降ってきたのが、大量の血がはいったバケツだった。まるで映画『キャリー』のように、騒然となる会場。

 背の低い女が逃げ、何人かがそれを追う。一連の顛末を楽しそうに眺めていたウラマー(イスラム学者)のイスハークという男が、どうやらかかわっているらしい。破戒僧としても知られる彼は以後、終盤の入り口まで、重要な役割を果たすことになる。


寺院からシェアハウスへ

 ガブリエルを助けるため、イスハークが要求したのは、回教寺院の地下で「発狂」している星天使の討伐だった。どうやら「神の子」という強大すぎる力を手にして、狂ってしまったらしい。

 女たちは参加できない。地下は女人禁制だからだ。また男でも、ムスリムでなければ立ち入れない。そこで一時的にムスリムに改宗するチューヤたち。地下へと消える男たちを見送りながら、女たちは地上で恋の花を咲かせるのだった。

 やがて「神の子」をとりもどしたチューヤたちは、結婚式を破壊した主犯である背の低い女の住むシェアハウス「ぞんた」で、今夜の「鍋部」を開催する運びとなった。内ゲバで殺されかけていたマフユを助けたりもしつつ、シェアハウスの夜は更けていく。


なかの、しなの、とねり

 チューヤはマフユに連れられ、中野へ。AKVN14によって開催される総選挙は、マフユのバックである裏社会もガッツリとその利権に食い込んでいるイベントだ。大事な金の卵であるアイドルに、悪い虫がつく。古来そういう虫を排除する仕事を担ってきたのは、ヤクザたちだった。芸能と裏社会は、そもそも切っても切れない関係なのだ。

 信濃町では舎利学館への捜査が進んでいるが、ケンゾーは上層部から「近づくな」と命じられる。自分が近づけないなら息子を。そんな父親に命じられ、チューヤが捜査に赴く。そこで出会ったプロレスラーの無道は、寺生まれのKさんとしてのキャラも持つ霊感野郎だったが、同時に刑事のなんたるかをケンゾーに教えた「倉田さん」の孫でもあった。

 結局、舎利学館に捕まり、そこから逃げ出すことしかできなかったチューヤたち。つぎに向かった足立区の廃墟には、リョージの姿があった。そこで再び会った北大路ドサンピンが仕掛ける「ホンモノ」を見極めるゲーム。その流れで深刻な「呪い」を受けたリョージを助けるため、チューヤたちは中野総選挙の闇に切り込むことになる。


赤羽トンボの末路

 ヒナノと日比谷のホテルで合流し、アイドルのエリサからかけられた呪いの解除に動く。北大路もエリサも、ヒナノの親戚筋であることが明らかとなっている。

 中野総選挙では、中野区にある14の駅を地盤として、アイドルたちの戦いがつづいている。形式としては各党の得票で順位が決まるが、エリサのチームで2番手のユキが党内での下剋上のため、チューヤたちの「呪い返し」に協力してくれることになった。エリサの呪いは当人へと返され、リョージの命はつながった。


エジプト勢と港区南青山

 今夜の鍋は南青山で。サアヤの誘いに、部員たちは唯々諾々としたがう。途中、チューヤたちは新宿西口で、エジプト勢の塔子に出会う。数理部問題のころから振られていた伏線がようやく回収された。塔子はケートに、ある取引を持ちかける。

 やがて一同が集まった南青山のマンションは、サアヤの叔母であるナミがホストに買い与えたものだった。ホストにだまされている被害者、という認識のサアヤだったが、ホストのイッキは、じつは生きたまま腐っていく呪いをかけられたナミを、ぎりぎりで守っていることが判明。彼らこそ、この世界線におけるイザナギとイザナミであった。


魂の旅路

 東京23区から出られない呪いを受けているチューヤが、ナミを救うため「死ぬ」ことになった。仮死状態となり、魂だけでナミを救うアイテムを西方の黄泉比良坂までとりにいく、というミッションだ。

 魂だけの旅路はきわめて危険であるが、長い仮死状態に耐えられるのはチューヤしかいなかった。一方、残されたマンションでもナミに呪いをかけたアマテラスが姿を現し、絶望的な戦いが展開されていた。

 任務を達成し、東京にもどってきたチューヤだったが、その途中で同じく魂の状態の室井に出会う。病的な彼はチューヤに、自分を殺してくれと頼む。代わりにもらった音声ファイルが、ぎりぎりで仲間たちを救うことになった。


クラシックカーの悪魔

 自動車の悪魔が存在するという。サアヤの弟を殺した「犯人」だ。それを見つけるため、彼女はガソリンスタンドでバイトをはじめていた。その流れで週末の首都高に集まるのは、多数のクラシックカーと、チューヤ、サアヤ、ケート、そしてヒナノの4人。

 戦いはアフラマズダとアンリ・マンユというゾロアスター勢を絡めて、目黒天空庭園をゴールに首都高バトルとなる。永遠に戦いつづける善と悪、という構図は宗教的に記録に残るなかで、もっとも古い二元論の対立構図だ。その戦いに巻き込まれながらも、チューヤたちはサアヤの弟を轢き殺した自動車の悪魔を倒す。


異世界アサシン計画

 室井が殺してくれと頼んだのは、異世界線にいるもうひとりの自分だった。同じことをチューヤも、本家であるニシオギのアクマツカイから頼まれている。異世界線とは、どうやら生きることが地獄の世界であるらしい。

 室井の指示どおり、荒川遊園から異世界線へと「反転攻勢」を開始するチューヤとサアヤ。そこはたしかに荒廃した景観であり、豊かな側からぶんどってきた資源を奪い合いながら、かろうじて成立している世紀末的な世界線だった。

 北千住の支配者であるスサノオからは、テロリストの伏線が張られる。そこでチューヤたちはヨルムンガンドを倒し、ついにオモイカネまでたどりつく。脳みそだけになって水槽にたゆたっている自分を殺してくれ、という室井の依頼はついに果たされたのだ。


中盤の山場、つぎつぎ回収される伏線

 帰還するふたりを迎えたのは、ケートだった。そのときケートは、幼いころに助けられなかった友だち・あいの復讐を、ついに果たそうとしていた。児童買春、幼児虐待をくりかえした吸血鬼は、彼の手によって滅されたのである。

 一方、神学機構で異端審問にかけられたガブリエルも、チューヤたちの協力によってどうにか反証を提出し、解放されることになった。この時点でのチューヤのレベルは42。ようやく物語は、折り返しに近づいている。



まとめ


 「PanDemonicA/3」での主要なテーマは、現代社会における宗教の在り方と、一神教内での複雑な関係性、そして仏教の哲学的な側面とその特異性です。

 これらの描写を通して、現代社会における宗教の多様性と複雑さ、そして宗教が抱える問題点が提示されています。


 登場人物たちは、それぞれの正義や信念に基づいて行動しますが、その行動が必ずしも善とはかぎりません。敵対する存在であっても、完全に悪と断言することはできず、そこには複雑な事情や背景が存在します。

 善悪の二元論では割り切れない複雑な人間模様が、本作には描かれています。


 また歴史と現代とのつながりについても重視されています。古代神話や宗教の歴史が、現代の出来事と密接に関係していることが、随所で示唆されていることに注目すべきでしょう。

 登場人物たちの過去や因縁が、現在の状況に影響を与えているようすも描かれています。過去と現在が複雑に絡み合いながら物語が展開していくことで、歴史の重みと、現代社会との相関性が自然と浮かび上がってきます。


 本作は、魅力的な登場人物たちと、予測不可能なストーリー展開が魅力の作品です。

 多岐にわたるテーマを扱いながらも、エンターテイメント性も高く、読者を飽きさせない構成になっています。今後の展開においては、以下の点が注目されます。

 ●チューヤはどの仲間を重視するのか。

 ●イスハークや室井との関係はどうなっていくのか。

 ●現代社会と宗教、歴史の闇は、どのように交錯していくのか。

 これらの謎が解き明かされるとき、本作の世界観はさらに深みを増すでしょう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ