忙しい人のための「PanDemonicA/1」パンデモニカ第1部
地球を滅ぼす隕石の話
学校で事件が起こり、鍋部の活動ができなくなったチューヤたちは、ケートの家に集まることにする。仲間たちとプラネタリウムを見ながら、明日、ハロウィンの渋谷での待ち合わせを約束する。これらの出来事は、後に続く冒険の伏線となっている。
案の定、境界化した渋谷で、チューヤたちは二手に分かれて戦いを展開する。地下にもぐったチューヤたち三人は魔王バロールと決戦に挑み、リョージに惚れているナナという少女の助けなども得て、かろうじて勝利する。
一方、地上ではマフユが仲間を裏切って遁走していた。
渋谷のハロウィン
オーバードーズによって暴走するマフユを、力を合わせておとなしくさせるチューヤたち。まだ危険な状態のマフユをケートが引き受け、いずこかへと姿を消す。
一方、渋谷駅のカオスを目の当たりにした残りの4人は、再び地下へ。人通りの多い駅にはとくに、人々の魂から生じるエネルギー、エキゾタイトの鉱脈が広がっている。それらを採掘、輸送するシステムが東京の地下には張り巡らされていた。
その坑道がダンジョンとなって、多くの冒険者たちを悩ませていた。
時の三女神の試練
貨物ステーションで貨物車両に興奮するチューヤをよそに、ある異変に気づく仲間たち。
チューヤに特殊な鉄道時計を与え、東京23区から出られない呪いをかけた時の三女神が順に現れ、仲間たちを連れ去っていく。リョージはクロトに、ヒナノはアトロポスに、そしてサアヤはラキシスに。
孤独になったチューヤは、複雑化していた悪魔たちとの関係を修復しつつ、死神ヘルとの決戦をなんとかこなして、バラバラになった仲間を集めるターンへ。
占い師に問う
翌日、部室でマフユと合流したチューヤは、バラバラになった仲間のことを話す。サアヤを助けるため、ただちに動き出すマフユに引きずられ、評判の占い師リリムのもとへ。
その後、占い師のヒントを参考に、ケートとも合流して恵比寿のタワーマンションに向かい、蛭子という老人と対峙する。彼はサアヤの曽祖父であり、その血族には日本史の負の部分が強く絡みついていた。
強い呪いを帯びた蛭子は、恨みをこめてチューヤたちを危険なゲームに巻き込んでいく。
白金台のレストラン
サアヤを助けた一同は、そのままヒナノを助けるために白金台のレストランへ。
そこもなかば境界化しており、人肉食のキュイジーヌ・サガワが、悪魔の美食家たちのために腕をふるっていた。そこで出会うのが、ヒナノの親戚でもあるという北大路ドサンピンという謎のグルメ紳士である。
彼との3番勝負になんとか勝った一同は、ヒナノをとりもどすことに成功する。
目黒・奇昆虫館
最後にリョージをとりもどすため、一同は目黒の奇昆虫館へ。
最弱である妖虫ミルメコレオは、いつか最強を目指してその強さを増し、館を支配するまでになっていた。その弱いころのミルメコレオを助けたのがリョージで、互いにリングに立った彼は、そこで少年漫画のようなバトルを楽しむ。彼の父親が若かりし頃、暴走族「蟲姫」の隊長であったことも、解決の一助となった。
三女神の罠
ついに仲間たちを集めたチューヤの手には、3つのトークンが握られていた。トークンに隠された謎を解くべく、白金台の自然教育園の地下へ。厳重な結界に守られたそこには、ジャバザコクと呼ばれる、邪馬台国に比定されるような謎の地下都市があった。
チューヤはここで、悪魔相関プログラムの完成に一役買ったジャミラコワイなどの人物と話し、自分が利用しているツールの真実を知る。
あらゆる「謎」の「答え」が、ジャバザコクにはあるらしかった。ただしその「答え」を知るためには、代償を払わねばならない。二度とここから出られない、という代償だ。
本来、天使も悪魔も侵入できない場所だが、運命の三女神はチューヤの召喚枠を利用して侵入を果たしていた。ここには盗み出すに値する重要な「契約書」があるらしい。
やがて警備に追いかけられる彼女らに巻き込まれる形で、チューヤたちは「われわれはどこから来たのか」という問いが掲げられた、ひとつの竪穴式住居へと落ちる。
ある種の異世界転生
チューヤたちはどうやら東京の「過去」へと飛ばされたようだった。それも百年や千年ではない、数万年の過去へ。われわれはどこから来たのか、その哲学的問いに対する答えが、ここにはあるらしい。
Past Dayと題される1日1日は、彼らに原初的な人類の生存環境を教えてくれた。わずかに持ち込めた現代の器具、ナイフや鍋を利用して、力を合わせ生き残る6人。彼らはそこで、人類の起源と、自分たちの存在意義について深く考えさせられる。
われわれはどこから来たのか
アフリカから出た人類は、その時点で人類だったのか。それとも適応放散した複数種の人類のなかで、あるヒト属だけが決定的な出来事を契機として、突然に進化したのか。
重要なのは、全員が内在化させている悪魔相関プログラムが、ほとんど機能していない点だ。悪魔の力を借りることはできない。なぜなら神や悪魔が生み出されたのは、人類が誕生して以後のことだからだ。
唯一神を記した偉大な文献
神や悪魔が存在しないのは、それらが生み出される以前の時代だから、という見解をヒナノは一蹴する。そんなことはありえない、われわれを生み出したものこそが神なのだ、世界が存在する時点で神は存在しなければならない。
ケートはせせら笑う。神が5000年前に地球と人類をつくったという、聖書の寝言を。勝手に56億7000万年の輪廻を語る仏教の根拠なき数字にも、意味はない。仏を生み出したのも、神をやがて殺すのも人間なのだ。
そう喝破する彼の耳のピアスからは、ハルキゲニアという特殊な悪魔だけが存在を示している。もちろんたった数万年前であれば、古生物の記憶はいくらでもあっていい。だがすべての「文化的な神や悪魔」は、この時点で「まだ存在していない」のだ。
サバイバルゲーム
わずかな器具から六分儀を作成したケートの計算により、自分たちが8万7000年前の東京にタイムスリップしたことを知る。
その最初の天体観測の夜が明けたとき、はるか西で轟音が鳴り響いた。運命の日、阿蘇ではAso4という最大規模のカタストロフ噴火が起こり、九州は壊滅、そこから東の日本列島もほぼ灰に埋まった。
人為的なものがいっさいない豊かな自然のなかでのキャンプは、厳しくも楽しいものであった。しかし火山灰が泥土となり、滂沱として降り注ぐ東京は一転、地獄と化した。
津波に洗われ、野生動物と戦いながら、わずかの望みをかけて北を目指す6人。ジャバザコクは、謎の答えを教えてくれる代わり、二度と出られないという代償を払わねばならない場所だ。しかしいま、彼らは時の三女神との接続を感じている。
東京むすこ(め)の帰還
彼らは知った。どうやって人類が人類になったのかを。
アフリカから出た人類は、たしかに人類ではあったが、まだ魂の一部に「前段階」を残していた。破局噴火というカタストロフに際して、チューヤたちが選んだ道のり。それこそが例の問いへの答えだった。
彼らは、だれひとり仲間を見捨てることなく、全員で助け合うという選択肢をとった。それができる人類だけが、他の霊長類ヒト科ヒト属を駆逐して地球を支配した。
彼ら自身、当初から喉に感じていた圧迫感は取り払われた。助け合う心は、明瞭な声で互いにコミュニケーションする能力となって残った。そうして、われわれは唯一の現生人類となったのだ。
まとめ
前半は東京を舞台に、現代社会に侵食する「境界」と、その背後で暗躍するさまざまな勢力との戦いが繰り広げられます。
後半は一転、東京の過去に転生し、人類がどこから来たのかについて哲学的に掘り下げられます。
渋谷での戦いは、ケルト神話の魔王バロールと、北欧神話の戦乙女ワルキューレによる、渋谷駅を舞台にした「魂」を巡る争いでした。
チューヤたちは、リョージの活躍や、スカアハの戦略により勝利するも、北欧神話のトリックスター、ロキの暗躍を察知します。
恵比寿では、サアヤの親戚である蛭子家の当主と、そのガーディアンであるコトシロヌシに挑みます。蛭子家は、過去に「呪い」によって家族を失い、その「忌み地」の上に築かれた恵比寿ガーディアン・プレイスを支配下に置こうとしていました。
白金台のレストランでは、オーカスと呼ばれる悪魔が支配する「境界」に遭遇します。そこでは、人間が「エサ」として捕獲され、悪魔の料理として提供されていました。
やがてたどりついたジャバザコクという謎の地下世界は、知りたいことを知るための対価として、二度と元の世界にもどれない、という厳しいルールが存在する場所でした。
われわれはどこから来たのか。期せずしてその問いを発することになった彼らは、大きく時間をさかのぼります。
日本の更新世、旧石器時代が8万7000年前にあったという記録はありませんが、そのような仮説を立てて物語は進展していきます。
そして少年たちは、自分たちの存在理由、人類の起源、彼らを待ち受ける運命を知っていきます。過去への転生を通して、チューヤたちは人類がいかにして進化し、仲間を思いやるかという選択を通じて生き残ってきたのかを理解するのです。
また、進化する過程で人類が築き上げてきた歴史、とくに宗教が持つ影響力と利権構造についても、彼らは言及します。現代社会における宗教の在り方に対する疑問も投げかけられます。歴史と宗教の利権は、複雑化した現代を生きるためには必要な知識なのです。
これらの出来事を通して、チューヤたちは自分たちの存在理由、人類の起源、そして未来への課題について深く考えるようになります。ソースは、人類の歴史と進化、その中で繰り返される争いと協力、そして宗教や文明の役割について考察を促しています。