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幸福な相性

高良慶昌(たから よしまさ)……主人公


椎原美涼(しいはら みすず)……九州の旧家の娘。今回の依頼者。


高良慶樹(たから よしき)……主人公の叔父


高良慶雄(たから よしお)……主人公の父


高良真朱(たから まあけ)……主人公の姉



『マサはモンスターを倒した!』


『マサはレベルが上がった!』


 ゲームをする慶昌の隣で、美涼は並んでソファに座り、ときどき慶昌の肩を揉んだり、飲み物を用意したり、手を握ったりしている。

 慶昌はそのたびにお礼を言ったり顔を赤くしたりしながらゲームを続けた。


 その2人の様子を背後から見ながら、興味深げに慶樹は何度もうなずく。


 最初は『もしかしたら』程度の思いつきだった。


 人には相性というものがある。


 傷つけあうもの。

 一方的に傷つけるもの。一方的に搾取されるもの。

 一方的に愛されるもの、一方的に癒やし続けるもの。

 

 そして、癒し合い、愛し合うもの。


 そんな、幸運な関係の夫婦や恋人、友人同士がたまにいる。


 慶昌と美涼はまさにそうだった。


 慶昌が呪いを破壊するために霊力を使う。

 ダメージを受けないよう、美涼が霊力を分けてフォローする。

 2人の減った分は、一緒に過ごす時間の中で通常よりも早い速度で回復する。

 互いを支え、助け、ただ一緒にいるだけで運が上向き力が増す。全てが増幅する。


 そんな幸運を呼び合う関係。


 この数日、ゲームは凄まじい速さで攻略されていった。完全クリアも近いだろう。

 九州にいる弟の容態も良くなり、最近は布団から起き上がって庭を散歩するまでになったという。


『おおマサよ、ここから先は魔王の城となる。出発の準備は済んだのか?』


『▷YES NO』


 画面に出た文字を読んで、慶樹は2人に今日は帰るように言った。


 明日は準備万端で魔王を倒(呪いを破壊)したらいい。


 慶樹の能力は呪いを捕まえる能力だ。

 慶昌の能力は呪いを破壊する事に向いている。


 慶雄は資金を集める能力に長け。

 真朱は客を見極めて集め、交渉する勘に優れている。


 今代の高良家は呪いと戦う力を持っていた。


 それはきっと、代々呪いに翻弄されてきたから。

 もう我慢ならない、と考えた先祖がその能力を子孫に芽生えさせたのだろうと、慶樹はそう思っている。


 椎原美涼もそうだ。


 偶然なのか、こうなるべくして用意された運命の2人なのか。

 どちらにしても高良家はこれからも呪いを破壊し続けるだろう。


 ひとつでも多く、世界から呪いが消えるように。


 そうすれば、世界は少しは過ごしやすい場所になるだろうか。


 ふん、と慶樹は鼻で笑う。



 ありえない。



 呪いなどなくとも、世界は十分見苦しい。

 醜く汚らしい価値のない世界が、呪いがなくなればようやく少しだけ見られるようになる。その程度のものだ。


 生き物は己の居場所を得るため、己の取り分を増やすため、他と奪い合い、いがみ合う。

 そういう風にできている。


 けれど、と慶樹は、奪い合うことなく支え合い、増幅し合う目の前の2人を見た。


 世界が美しさを秘めていることもまた事実なのだ。

 その秘密が秘密でなくなる、そんな日が来ることを願わずにはいられない。



「じゃあ叔父さん、また明日」


「明日、またよろしくお願いします」


「うん、また明日、2人とも気をつけて帰るんだよ」


「「はい」」






 また明日。


 また明日。


 明日には、魔王が倒されて呪いが破壊され、消える。


 希望に満ちた子どもたちの笑顔に、慶樹は微笑んだ。












これにて完結となります。

お読みいただきありがとうございました!



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