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お客様、お客様にご迷惑ですので

高良慶昌(たから よしまさ)……主人公


椎原美涼(しいはら みすず)……九州の旧家の娘。今回の依頼者。


高良慶樹(たから よしき)……主人公の叔父



「こんにちはー」



 慶昌がいつものように開いた自動ドアから店内に入ると、「いらっしゃー……い……」と笑顔で迎えかけた慶樹が固まった。

 慶昌の後ろに同級生くらいの可愛い女の子がいたからだ。



「マサくん!? その子、まさか彼女!? 彼女なのかい!?」


「なに!? マサに彼女だと!?」


「マサ兄に彼女!? ふざけんな裏切り者!!」


「マジ! 見せて見せて! どんな子!?」



 慶樹の声を聞きつけて店のあちこちから客達が集まってくる。



「違うって! ほら散れ散れ、迷惑だろ!」


「迷惑って俺たち客だからさー、別に迷惑じゃないし。なあ?」


「ないない、全然迷惑じゃない」


「お前らじゃなくて彼女がだよ!」


「やっぱ彼女じゃん!」


「いいなー、めっちゃ可愛ええ」


「マサ兄でもこのレベル。やっべえ夢が膨らむ」


「いい加減にしろ! 椎原さん、こいつら気にしないで、こっち」



 真っ赤になって少女を2階に連れて行こうとする慶昌に、店長である慶樹が『待った』をかける。



「マサくん、2階は仕事場だよ? それにその子、椎原さんって言った?」


「そうだよ、叔父さん。この子、2階の仕事の子。椎原美涼さん」



 ふうん、と慶樹は腕を組んで2人を見つめる。

 その表情から柔らかさが消えた。


 普段は、慶昌が彼を叔父として見ようがバイト先の店長として見ようが何も言わないが、こんなときは少しばかり冷血な印象になる。

 こんなとき、つまりは危険な真似を誰かがしようとしているとき。



「まあいいや。上で待っててね。仕事はしちゃダメだよ」



 何もそんな言い方しなくても、と慶昌が美涼を見ると、彼女はしゅんとなって下を向いていた。


 しおれたうさぎの耳が生えていそうなその様子に、『やっぱり可愛い』と慶昌は姉につい感謝したくなったのだった。










「うーーん、真朱ちゃんかあ……」



 腕組みをして顔をしかめ、慶樹は天を仰いだ。



「相変わらず非常識なことを、と言うのは簡単だけど、あの子の場合はなんとなくの勘で動いた事が大正解だったりするからなあ」


「ほんと迷惑な話ですよね」



 2人してうんうん、とうなずく叔父と甥を、困惑したように見つめる美涼。



「まあともかく、弟さんの状況が変わったのなら、今までのようにのんびりしていられない。だけどね、正直、君の家にかかっている呪いは僕がこの仕事を始めてから1番強力で性質たちが悪いんだ」


「はい……」



 目に涙をためている美涼の様子に、慶昌は胸が痛んだ。

 できるならなんとかしてやりたい。

 というか、彼女を助ける力がオレにはあるじゃないか。



「叔父さん、オレ」


「ダメだ。君の腕はかなりのものだ。僕が呪いに合わせたゲームを選んでエネルギーを繋ぎ、君がクリアする。これは君の霊力の多さと、ゲームの才能があって初めてできる事だ。それでも困難で、しかも君の邪魔をした上で対象者の命を縮めるだけの力を持っている。力押しでどうにかなるものではない」



 話す前からきっぱりと断られて、慶昌は悔しさに歯噛みした。



「椎原さん、傍目にはこの子はただゲームをしているだけに見えるだろうけど、実際には霊力を注ぎ込んだ上でゲーム操作をしている。ゲームの主人公が死ねば、この子は注ぎ込んだ霊力を失うだけじゃなく大きなダメージを受ける。意識不明で倒れたり、後遺症が残ったり、最悪死ぬ事だってある。肉親として、この子を雇っている上司として、そんな危険な真似はさせられないんだ」


「はい、わかります。わたしも、そんな危険なことは誰にもしてほしくないし、会ったばかりだけど慶昌さんに無理はしてほしくないです」



 それを聞いて慶昌は赤くなり、嬉しさで表情筋がぐだぐだに緩みそうになった。

 慶樹はそんな甥っ子を見てため息をつく。



「分かってるね? マサくん。危ない真似はしちゃダメだよ?」


「分かってる、分かってるよ」



 でも。


 そう言いたそうな甥の表情に慶樹は頭が痛くなりそうだった。



「慶昌さん、無理はしないでくださいね」



 美涼が慶昌を心配げに見上げる。


 2人の視線が絡む。


 それを見ていた慶樹は『おや』と目を見開いた。


 美涼から慶昌に霊力が流れている。

 慶昌はそれを受け入れて力づけられているように見えた。

 そして、慶昌からも美涼に力は流れ、循環して増幅し合っている。


 これはもしかして。


 ふむ、としばらく考え込んだ慶樹は2人に対してとある提案をしてみるのだった。









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