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いばらの先に

作者: 藤花チヱリ

パソコンの整理をしていたら、昔書いたやつが出てきたので、一応投稿しようと思います。

当時の文章そのままなので、今より拙いかもしれません。

ご了承ください。

昔からだった。


「ねえ、果歩ちゃんもそう思うよねえ?」


名前もろくに知らないクラスメイトに対する陰口に求められる同情。


一人とか、独創的とかという言葉がマイナスイメージに捉えられる時代に、同情しろと言わんばかりの目線に屈する他に術はなかった。


心の奥底では、くだらねえと反吐をまきたいというのに。


時が過ぎて、社会に出ても、どうやらそういうものは変わらないらしく。


くだらない尾ひれのつきまくった噂話に花を咲かせ、さっきまで悪口を叩いていた相手に遭遇したら、どっから湧き出てくるのかってくらいの満面の笑みを浮かべて接する。


ああ、くだらない。

ああ、面倒くさい。


どれほど時代が変わろうとも、人間の根底にある同情心というものが変わることはない。


同情することで、共感を集め、安心している。ああ、良かった、私はひとりじゃない、と。


馬鹿馬鹿しい。


一人でいることがなぜマイナスなのか。


私にしてみれば、人間なんてものは「いばら」でしかない。


はなから自分を守ることが前提なのだ。


守ることに必死で、周りが見えていない。それならば、近づかなければいいのに。


そうすれば、互いにいばらが刺さり合うこともないのだから。


そんな話をふと漏らした時、君は大笑いしていた。


君はそう考えるのか、と。


続けて君は言った。


本能的に、集団生活を営んでいた古代人の習性から、僕たちはどうしても孤独を嫌う傾向にある。それでも、時代が変わったのだから、一匹狼で生きていくのもありだ。

だけど、辛くなる時はきっとくる。

その時、そのいばらは、きっと棘ではなく、支えとなるだろう、と。


目から鱗が落ちるような思いがしたのは、その数週間後のことだった。


先方のミスで、納品が遅れた。一人では対処できない。


君の判断と協力がなければ、私はクビになっていたかもしれない。


私に向かってガッツポーズをした君を見て、私は思った。


一番いばらであったのは、私だったのかもしれない、と。


孤独でいたいがために、必要以上の棘を育ててきた。関わらずに済むように。


そんないばら道に一輪、薔薇を添えてくれたおかげで、私の身体は解放されたように軽くなった。


君と関わるうちに、次々と薔薇が咲いていった。


あの時は気付かなかった。これが"恋"だということに。


今ベールを上げる君に、永遠に誓おう。


私のいばらで貴方を支えると。


いばらは私を守るためだけでなく、誰かを支えるためにある。


ならばしばし、このいばらを貴方に捧ぐ。

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