侵入者
「ふむふむ……カプスの為に皆が一肌脱いで後押ししたいのう」
善は急げと言わんばかりに、イリスはメイド寮の住民の合意を得た後にクレアの元へと向かった。
「夜分遅くに大変申し訳ありません。
ですが、どうしてもあね……カプス先輩に悔いを残して欲しくなくて……」
「よいよい。
逆にこのようなおもし……人の人生に関わる重大な事案があるのであれば優先して持ってくるべきであろう。
それにしてもイズちゃんのう……シゾンはどう思う?」
最近では寮生活で同室だったせいか、自分の部屋よりもクレアの部屋にいる事が多いシゾンにも尋ねてみる。
「先に言っておくけどイズちゃんが相手だと万に一つの可能性もないよ。
それでも動いた方がいいと思う?」
「もちろんです!
姐さんはあんな窓際でため息吐くだけの人じゃねぇ。
たとえ振られたとしても、それを糧にして前に進める人なんです……あ、申し訳ありません」
途中で素に戻ってしまい慌てて謝罪するイリス。
「この場はプライベートなものじゃからそう畏まらんでも良い。
お主がそう思うのであればワシらも協力しよう。
但し、イズちゃんとの時間を設ける為に本人にも話しは通しておくからのう」
「あ、ありがとうございます!」
イリスはクレア達に頭を下げて退室していく。
「さて、どうやって切り出したものか……」
「イズちゃんなら素直に話せば分かってくれるでしょ?
私行ってくるよ」
「そうか、ならば任せようかのう」
「うん、それじゃ行ってくるね」
シゾンはそう言うとクレアの部屋を後にした。
「ふぅ…….カプスがイズちゃんにのう……」
窓から外を見ながら呟くと部屋の扉が開く音が聞こえる。
「思ったより早……お主は誰じゃ?」
そこに居たのは出て行ったシゾンではなく、全身をローブで覆い隠した人物であった。
「夜分遅くに失礼します。
どうしても巫女様にお眼通りしたく参上した次第です」
「ふむ……何用じゃ?」
「巫女様には是非我が里にお越し頂けたらと思います。
そちらの方に巫女様に相応しき居場所を用意しておりますので」
「居場所のう……ワシの居場所は自分で決めたいものじゃな。
そちらを見てからでも良さそうじゃが……お主達の里に足を踏み入れたる二度と出ることは出来なさそうじゃのう」
「私の正体にお気付きで?」
「ワシの事を巫女と呼ぶのはエルフくらいであろう。
大方、自分達の森にハイエルフとなったワシを連れて行き神輿として祭り上げたいと言ったところであろうな」
「そこまでご存知とは……流石は当代の巫女様ですな。
かくなる上は」
「無理矢理にでも攫うかね?」
「何卒、何卒お願いいたします!」
そう言いながらローブ姿のエルフはその場で土下座し始めたのであった。




