メイド寮の一大作戦
「な、何言ってんだいアンタは!」
「え、違うんですか?
姐さん前から言ってたじゃないっスか。
旦那にするなら自分よりも強い男だって」
身長が150に満たなく幼い容姿ながらも、その見た目に不釣り合いなバストを持つカプス。
彼女はその優れた見た目から求婚される事も多かったのだが、自分の好みは自分よりも強い男だと言って断っていた。
「それに姐さんが酔っ払った時にこうも言ってたじゃないっスか。
自分の身体が小さいから体が大きすぎるのも嫌だって。
相手を見上げなくちゃいけないのが性に合わない……でしたよね?
イズさんは姐さんよりも小さいんだから正に姐さんの理想じゃないんですか!」
姉御肌で自分についてこいというタイプのカプスにとって、見上げなくちゃいけない相手というのは癪に触るのだ。
そのために自分よりも小さな少年を見ると可愛い以外に湧き立つ感情もあったわけだが。
「勘弁してくれよ!
そんなに言われたらあたしも参っちゃうよ」
窓の外を眺めながらなるべく考えないようにしていた事実を並べられてカプスは顔を真っ赤にする。
そう、結局のところカプスはイリスに言われるまでもなく、この現状に気付いてはいた。
だが、大事な客人である事を言い訳にして自分の気持ちを無視して蓋をしていたのである。
「何言ってんスか、女は度胸だっていつも言ってるじゃないですか。
いいですか、姐さん。
ここで射止めておかなかったら一生結婚なんて出来ないですよ」
「うっ……」
カプスとしても自分があまりにも特殊な性癖をしている自覚はある。
女であることから結婚願望は人並みにあった。
だが、自分よりも強くて自分よりも小さい男?
いやいや、そんな奴はこの世にいないだろと諦めていた……だが、いまそんな理想の人物が目の前に現れているのだ。
「姐さん、私……いや、私達メイド寮の全員で力を合わせて協力させてもらいます。
姐さんのこの恋、実らせましょうよ」
「イリス……そうさね。
ここで逃げたら女が廃るってもんよ!
玉砕覚悟でも動かなきゃね」
「そうですよ!
それに姐さんは女の私から見ても可愛らしいのに、とんでもなく凶悪なモノをぶら下げてる最高の見た目をしてるんですから。
姐さんが本気になりゃ落とせない男はいないですって!」
「そ、そうかい?
よーし、いっちょやったろうじゃないかい!」
こうしてイリスは信頼できる仲間にも声をかける。
アンデルスト家のメイド寮による一世一代の作戦が幕を開けようとしていた。