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発覚

「え、ちょっと困るんですけど」


「あんたとあたしの中だから構わないだろ。

あんたには色々と言いたいこともあるしね」


そう言ってカプスはズカズカと中に入ってくるとタオルを取って湯船の中に入る。


「はぁ〜いいお湯だね。

今日みたいに最高の汗をかいた日にこの家の風呂に入ると格別じゃないか」


「それは同意しますけど……その、大丈夫なんですか?」


「あん、何がだい?」


「この屋敷のメイドなんですよね?

私が言うことじゃないんですけど、客人に対してこういうことしていると貴方の評価に関わるんじゃないかと」


「貴族様のお屋敷ならそうなんだろうけど、ここはそうじゃないからね。

お館様とアンタの祖父さんにちゃんと許可は貰ってるから問題無しさ」


「……そうですか」


その2人から許可をもらってこうしているのであればしょうがないとそれ以上の話は諦めるイズ。


「そうそう、しっかりと自己紹介してなかったね。

あたしの名前はカプス・ソーリオン。

B級の冒険者やってるんだ、よろしく頼むよ」


「イズ・アラタです。

エルリック冒険者育成学校で副担任をやっています」


「お嬢様の手紙から噂には聞いていたんだけどね。

まさかここまで凄いとは思わなかったよ」


クレアとシゾンは自身の無事と近況を伝えるために定期的に手紙を出していた。


その中でイズというとてつもなく強い人物がいるという話は手紙に何度か書かれていた……ただ、その強いと噂のイズと目の前の可憐な少女然としているイズが同一人物だと気付いた者は殆どいなかったのだが。


そうして暫く談笑してからのことである。


「あ、私はもうそろそろ出ますね」


「おいおい、このまま出ていくなんて寂しいじゃないか。

折角だから背中の一つや二つくらい流させておくれよ」


「え、大丈夫で……」


「いいからいいから遠慮しなさんな」


そう言ってカプスはイズを強引に座らせて後ろにつく。


「はぁ、羨ましくなるくらいにスベスベで綺麗だね。

肌も白いし……まぁ、胸のサイズはなんだけど、見た目には合ってるから気にしなくていいさね」


「はぁ……まぁ、全く気にしてはいませんが」


「イズが女の子で本当に良かったよ。

こんだけ強くて可愛い子が男だったりしたら、あたしの情緒も性癖も粉々に砕かされっちまった……か、も……」


そうして背中を洗いつつイズの身体を眺めていたカプス。


そんな時に彼女の目に見えてしまったのだ……本来女性にはついていないものが。


「あ、いや、気のせいだよな。

一つ聞いておきたいんだが、イズの性別って」


「男ですけど」


「……ああ、そうかそうか。

そりゃ、悪かったな。

あたしは先に出ておくよ」


何事もないように浴場を後にするカプスであったが、道中であちこちにぶつかっている所を見る限り、かなり動揺していたのだろう。


ガラガラと扉が閉まる音が聞こえたかと思うと……


「あああああああああああ!!」


という叫び声が遠ざかっていくのであった。


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