確かに届いた一撃
「ふふ……最高のお弟子さん達じゃないですか」
自分の命に届くかもしれない一撃。
この攻撃が迫る中でイズは笑みを浮かべていた。
女神の加護を受けてアタッカーとなってからも精進を続けていた。
元々は戦いの素質が無かった事から、与えられた才能を伸ばすのが楽しくて満足する事が無かった。
そして気付くとその力を振るえる場所が無くなっていた。
そんなイズに対して、4人がかり、ただの一撃、それでも目の前の小柄な女性はイズに届かせる一撃を繰り出したのだ。
イズは持っていたハンマーを投げ捨てて手を前にして構える。
自身に迫る一撃を両手で掴んで力を込めて押し返そうとする。
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ!!」
「ふっ……んんんんんんんん!!」
カプスはひたすらに手に力を込めて前へ前へと進もうとする。
イズとまた両の手に力を込めて前へと力を込めていく。
最早技術など何もない単純な力勝負……ですらないのであろう。
お互いの意地と根性のぶつかり合い。
その時間は永遠に思えるようで……実際には一分にも満たなかったのかもしれない。
あらゆるものを総動員させて作り出したカプスの一撃は少しずつ力を失っていき、自らの力で止めているイズに徐々に届かなくなっていく。
やがて完全に勢いを無くしたカプスは、最早大剣を持つ事すら叶わずに前のめりに倒れる。
「おっと……大丈夫ですか?」
「ははっ……ここまでやって届かないなんてどんだけの化け物だよ。
……でも、お陰で何か掴めた気がするよ、あんがとな」
カプスは最後の気力を振り絞ってそう告げると気絶してしまった。
「チームの最高の剣と盾が破れてしまったからにはこれ以上やるのは無駄でしょうな。
それで構いませんね、イリン」
「は、はい。
私達の負けです」
残ったシンリとイリンは降参を申し出る。
こうして模擬戦は終わり、それを見ていた者達は全員が彼らに拍手を送った。
その後、イズは汗を流すために浴場へと案内されていた。
「ふぅ、いいお湯ですね。
疲れた身体に染み渡るとはこの事でしょうか」
湯船に浸かりながら自分の量の手のひらを見ると、そこにはクッキリとした線が残っていた。
その線に沿った部分ではやや痺れたような感覚がしている。
(あの一瞬……届かせたと言う事なのでしょうね。
実に素晴らしいチームでした。
出来るならここにいる人達と生徒の交流などが出来れば面白いかもしれません)
そうして浴場の中に浸かっていると浴場の扉が開く音が聞こえる。
「おう、お疲れさん!
私も一緒にいいかい?」
そこに現れたのは身体にタオルを巻いたカプスであった。