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ナハト

「はぁはぁ……ほんと……あの時代には戻りたくないから名前だけは呼ばないで。

思い出話ぐらいなら幾らでも語ってあげるから」


「な、何やら事情がありそうだな」


鬼気迫った顔で懇願するエリーの迫力に、ちび竜は恐れながらイズに話しかける。


「大した話ではありませんけどね。

昔から可愛いものの方が大好きだったエリー先生は、勇者としての使命を果たせば女神様から願いを一つ叶えてもらうと知って獅子奮迅の活躍を見せ、女神様に女性になりたいと言う願い事をしてドン引かれつつも願いを叶えたってだけです」


「あの……思い出話なら良いとは言ったけど、私の半生を数行にまとめるのやめてくれない?」


「その数行の中に我との戦いは入っておらぬのだが……オマケにあの勇者がこんな姿に……」


イズの雑な説明に一人と一匹は明らかに肩を落として落ち込む。


エリーはいつもの事なので放っておいて、イズはちび竜の隣に腰を下ろす。


「気持ちは分かりますよ。

僕も勇者エルリックに憧れてましたからね」


「イズ殿…….」


「でも、中身は変わってませんから安心してください。

エリー先生は気高くて格好良い……僕の憧れの人のままなんですよ」


「イズちゃん!……好き」


先程まで落ち込んでいたとは思えないほどの回復を見せ、イズを後ろから抱きしめる。


そのエリーの頭を肩越しに撫でつつ、口元だけ微笑みながらちび竜の方を見た。


「だから安心して友達になってあげてください。

少々甘えたがりな所はありますけどね」


「イズ殿……我はお主を怒らせるような暴言を吐いたと言うのに。

先程は本当にすまんかった」


「あの時はカッとなりましたが、僕が女の子にしか見えないのは事実ですから。

こちらの方こそごめんなさい」


そう言って頭を下げるイズをじっと見つめるちび竜。


そして何かを決意したように一つ頷いた。


「うむ……モノは相談なのだが……イズ殿よ。

我と契約を結ばぬか?」


「契約、ですか?」


「イズ殿を主人として我が従う従魔契約と言われるものだな。

我は友とするならばエルリ……エリー殿が良い」


エルリックと呼びそうになったが、エリーがイズを抱きしめつつもキッと睨んできたので慌てて言い直す。


「そして、主人とするのであればイズ殿。

お主のような人物が良いと思ったのだ。

どうじだろうか?」


「いい提案じゃない、受けちゃいなさいよ。

この子、このままじゃダンジョンから出たらすぐ死んじゃうけど、契約してれば制約から逃れられるわよ」


「……分かりました。

契約とは何をすればよいのですか?」


「なに、簡単な事じゃよ。

我に名前を付け、我がそれを受け入れれば契約完了よ」


そう言われたイズは暫し目を閉じて考え込む……自分の後頭部にグリグリと頭を押し付けてくるエリーが少し邪魔だなと考えながら。


やがて、目を開けたイズはポツリと呟いた。


「ナハト……いま心に浮かんできたんだけど、ナハトってどうかな?」


「ナハト、なんという素晴らしく馴染む名前じゃ。

うむ、今日より我の名はナハト。

黒竜ナハトだ」


従魔契約が成立した事でイズとナハトの間に繋がりが生まれたのを感じる。


こうして、ダンジョン異変の原因であるナハトを従えた事で、この騒動は幕を閉じたのであった。

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