お友達
「ずっと不思議だったんだよね。
そんなに短い期間しかいない割に、クレアちゃんってこの屋敷の人達を自分の手足のように使いこなしてるでしょ?
それに食事の用意の指示もクレアちゃんがしてたみたいだし」
「そ…….それはのう……」
「あちゃ〜ここまで来たら隠し通すの無理だよ、お姉ちゃん」
ファモの鋭い指摘に冷や汗が止まらないクレア。
観念したのか諦めムードのシゾン。
そんな中で我関せずとばかりにメローヌはひたすらにテーブルマナーの研鑽を積んでいる。
「隠すって事はやっぱり!」
「そ、そうなのじゃ……実は……」
「クレアちゃんって昔からこのお屋敷に住んでたんでしょ!」
「なぬ!?」
「あれ?」
2人が観念してクレアの真実を打ち明けようとした時であった。
ファモが予想の斜めにいった解答を弾き出した。
「あれ、違った?」
「いやいやいや、バレてしまったのう。
そうじゃそうじゃ、ここの先代であるグレースとは奴が若い頃からの付き合いでのう。
じゃが、シゾンを預かるという事で養子として迎えいれられたというわけじゃ」
「そうそう!
私が1人で行くのが不安だからって無理言っちゃっただけで、お姉ちゃんとは私が産まれた時から付き合いがあるんだよ」
ファモの勘違いを即座に利用して嘘は言ってないものの真実でもない話をでっち上げる2人。
「やっぱりそうだったんだ。
言ってくれれば……って言いたい所だけど、こんなの自分からする話でもないか」
「そうそう、見抜かれてしまったからには仕方ないのう」
「うんうん、流石はファモだよね」
「っていうか、メローヌはずっとマナーの勉強してるけど、2人の生い立ちとか興味ないの?」
「クレアさんはクレアさんで、シゾンさんはシゾンさん。
どんな生い立ちがあろうが本質は変わりません。
今の彼女たちが私たちにとって良き友人である事実以外に何が必要ですか?」
上品な仕草で口元を拭きつつそう答えるメローヌ。
「それは……確かにそうだね。
こうやって自宅に招待して歓待してくる最高の友人。
それだけで難しく考える必要はないか」
「そういう事です。
この屋敷に滞在している間は色々と学ばせていただきますので、どうぞよろしくお願いします」
「そうじゃな。
ワシらは本当に良き友に恵まれたものじゃ。
これからもよろしく頼むぞ」
こうして談笑しつつディナーの時間は終わり、4人はそれぞれの部屋に戻って行き、帰省一日目は終了したのであった。