テーブルマナー
2人は緊張しながら食卓に向かったのだが、そこに居たのはクレアとシゾンの2人だけであった。
「あ、きたきた」
「そちらの席に座るが良いぞ」
大きめのテーブルの奥にクレアとシゾンが座っており、その向かい側ではメイドが立っていた。
2人が挨拶をしつつそちらに向かうと、メイドが椅子を引いてくれたので、空いた空間に立つと椅子を戻された事が分かったので腰かけた。
「どう、寛げてる?」
「いや〜ちょっと緊張しちゃってるよ」
「大変に快適で良い思いをさせてもらっていますわ」
「あはは、双子なのに違う意見出てくるの面白いよね」
「うむ、双子と言えど別個の人間。
一緒くたにせずにちゃんと個別の人として接するのが大事じゃぞ」
「私達は昔から一緒の扱いされる事が多かったから慣れてるけどね」
「ですが、お二人がそういう風に考えて接してくれるのは大変に嬉しく思っています。
私達がお二人との交友を好ましく思っているのも、それが理由の一つなのでしょうね」
こうして仲良くおしゃべりをしていると最初にアミューズが運ばれてくる。
「テーブルに置かれたカトラリーから察していましたがコース料理でしょうか?」
「ええ〜私、テーブルマナーなんて分からないんだけど」
「この場ではマナーの失敗は気にせんでよいぞ。
ただ、将来的に必要になるじゃろうから慣れの場としてもらえたらと思い、この場を提供させてもらったのじゃ。
もし迷う事があるようなら側に付いておる者に聞くと良い。
久しぶりにシゾンのマナーも見させてもらおうかのう」
「もうお姉ちゃんったら。
本音はそれでしょ」
そう言いながらも、流石に幼い頃から叩き込まれたマナーは身体に染み付いており、特に問題となるような事はない。
メローヌは知識はあるものの実戦は初めてという事で、細かいところをお付きのメイドに確認しながら食事を進めていった。
ただ1人、ファモだけは全くテーブルマナーが分からないようなので、クレアがマンツーマンで教えることになった。
元々レンジャーとして手先が器用だったファモは、クレアの指導によりみるみる内に上達していく。
「ど、どうかな?」
「うむうむ、よく出来ておるぞ。
幼い頃のシゾンは既に超えておるのう」
スポンジが水を吸収するが如く上達していくファモ。
その様子にクレアにしては珍しく口を滑らせる。
もちろん、そんな迂闊な一言を聞き逃す2人ではなかった。
「ねぇ、何でクレアちゃんは幼い頃のシゾンの事を知ってるの?
クレアちゃんがここに来たのは、学校に入る少し前のはずだよね?」