成功例
「ねぇ、こんな事になるなんて聞いてないんだけど」
メイドさんに自分達用に用意された部屋へと案内される2人。
部屋は個室で用意してあったのだが、とりあえず荷物を置いてメローヌの部屋にやってきたファモは開口一番にそう言い放った。
「……そうね」
メローヌは何処か上の空でそう答える。
(あ、これ絶対に良くない事を考えてる……)
メローヌがお嬢様言葉も忘れて考えに耽っている……この時は絶対にロクでもない事を考えている時だという事を、ファモは産まれた頃からの付き合いで知っていた。
今の学園に通うと言い出したと時もこうだったのだから。
(まぁ、今は楽しく生活できてるし、こうやって良い友達も出来たから完全に悪いってわけじゃないんだけど)
学園生活は楽しいし、シゾンやクレアと一緒に何かやるのも楽しいので結果的には学園に来て良かったと思う。
しかし、何の前触れもなく、自分の片割れが冒険者になろう!
などと言い出した時は、何言ってるんだろうという感想が出てきたことも仕方ないことであろう。
「失礼します……長旅の疲れを癒すために湯浴みの準備が整いました。
こちらの方で必要なものは全て用意しておりますので、いつでもお申し付けください」
扉をコンコンとノックされ、扉越しにそのような言葉が届けられる。
「ほら、お風呂だって!
一緒に行こうよ」
ファモがそう言ってメローヌの肩を叩こうとした時であった。
彼女は徐に立ち上がる。
「ふふふ……やっぱり私の見立てに間違いは無かったのよ!
ここに成功例があるんだもの……このお屋敷にいる時間は絶対に無駄にしないわよ」
「ちょ、いきなりどうしたのよ」
「実を言うと冒険者になろうと言いましたが、半信半疑だったのですわ。
成功すれば実家より良い暮らしは出来ると思いますが、果たしてそれがどれ程のものなのかと。
しかし、この家に来ていまハッキリと確信しましたの。
冒険者には夢があると」
目をキラキラ……いや、ギラギラに輝かせながらそう話すメローヌにやや引き気味のファモ。
「うんうん、分かったからとりあえずその成功例の凄さを味わいに行こうよ。
私も長旅の汚れ落としたいし」
「そうですわね。
それではメイドさんにお願いして案内してもらいましょうか」
長年の付き合いから宥め方も熟知したもの。
メローヌの情熱を受け流しつつ入浴へと誘う。
メローヌもようやくいつもの調子を取り戻し、2人は部屋の前に待機していたメイドに頼んで風呂場へと案内してもらうのであった。




