4人のエキスパート講師
「神学の先生方は普通におられますわよね?
私も自己回復と防御のバフを付ける為に何度か授業に出たことがありますわ」
そう語るのはメローヌである。
彼女のいう通りにグラーダがいなくても学園で神学の講義を受ける事は可能であった。
「講義ならプリーストを本職としている先生なら誰でも出来るのよ。
そこからのスキル習得も2年生くらいのレベルまではね。
問題は3年で習得する予定のスキルね。
これは各分野のエキスパートの講師がいないと出来ないの。
ファイターのマリア先生。
レンジャーのアドゥラ先生。
プリーストのグラーダ先生。
そして、ソーサラーの……キンハー先生」
『ええ……!?』
エリーの言葉に驚きいたクレア以外の三人が一斉にキンハーの方を見る。
「こんなに早くネタバラシしてしまうやなんてイケズやねぇ。
それにしても姐さんは気付いてはりましたか?」
「何となくはのう。
本職がファイターであるならワシの手には負えんかった筈じゃからな。
加えて風の攻撃でもビクともせぬ魔法防御。
魔法職が専門であろうとは考えておったよ」
「さすが姐さんやね。
それなら擬態もこの辺にしときまひょか」
キンハーがそう言って何かの呪文を唱える。
すると、彼の姿がキラキラと光り……パッと見た感じはそれだけであった。
「え……何処か変わった?」
特に違いを見出せなかったシゾンが素直に疑問を声に出す。
「どこに目付けとんねん!
しっかり変わったところがあるやろ」
「はい!」
「よっしゃ嬢ちゃん、答えてみい!」
勢いよく手を挙げたファモに答えを促すキンハー。
「実は女の子になった」
「ぶふっ!?」
「そうそう、実はアタシ乙女なの……って、アホかぁ!?
どう見ても健康的な男の子やろ!
姐さんも何でむせとんねん!!」
「いや、すまぬすまぬ。
しかし、キンちゃんはエルフだったのじゃな。
それならばその高い魔力も納得じゃ」
クレアの言葉通り、今までは人間の耳に見えていたのだが、今は長く尖った耳へと変貌を遂げていた。
「流石は姐さんや。
ワイ、惚れてしまいそうやわ……おお、こわっ!?
冗談やからそんな睨まんといてぇな」
キンハーが惚れてしまうと言った瞬間にシゾンから殺気のこもった視線が飛んでくる。
その視線を掻き消すようにパタパタと手を振るキンハーだが、言葉とは裏腹に全く怖がっている様子はない。
「まぁ、冗談はそのくらいでいいじゃろ。
つまり、今回はそこのグラーダ嬢の頭の固さが問題となり、素直に言っても聞かぬからイズちゃんが裏から手を回しておったと。
そこに偶々ワシらも子供から依頼を受けた事でここまでの話になってしまったという事じゃな」
「まとめて頂きありがとうございます。
その認識で構いませんよ」