本当のボス
お礼を言う職員とリアを後にしつつ、大所帯となった一行は冒険者ギルドへと向かう。
「先ずは今回の依頼の処理をしてしまいましょう。
クレアさんとシゾンさんは指名依頼の達成により最低ランクであるGからFランクに昇格です。
ファモさんとメローヌさんはヘルプ扱いとし、ランク昇格に半分のポイントを付与しておきましょう。
また、成り行きとはいえ犯罪に手を染めていた組織の検挙に関わったことで報奨金が出ています。
そちらは冒険者カードに記録されています。
ギルドで引き出す事も出来ますし、提携しているお店ならカードで支払いができます」
4人の冒険者カードを受け取ったエメリアが淡々と事務作業をこなしつつ、今回の褒賞のまとめと冒険者カードの新たな機能を説明していく。
「その処理を待っている間にキンちゃんの話を聞かせてもらおうかのう。
一連の話は誰の指示じゃったのじゃ?」
「そりゃボスって言ってるんだからエメリアさんじゃないの?」
「せやで〜ボスの命令やで」
先の戦いでの疑問を問い詰めるクレアだが、キンハーはヘラヘラとした笑いで答える。
そんなキンハーの言葉にクレアは首を振って否定した。
「いいや、お主はエメリア嬢が現れたタイミングでわざとあのような発言をした。
それはキンちゃんの言う本当のボスという存在を隠すためであろう?」
「……ほんま姐さんはどぎついなぁ。
それがバレたらワイがこっぴどく怒られるとか思わへんの?」
「それも無かろう。
ワシが考えている人物が裏で糸を引いているのなら、ワシが気付くことも織り込み済みであろう……なぁ、エリー」
『ええ!?』
急に名指しされたエリーに対して、シゾン、ファモ、メローヌの3人が驚き、そちらの方を向く。
「まぁ、こうなる事は分かっていたけどね。
もうそろそろいいんじゃないの、イズちゃん」
「はい、この度の指名依頼、皆さんお疲れ様でした。
正直ここまで上手くいくとは思っていなかったので本当にありがとうございます」
悪びれもしないエリーの背後から、いつの間にかイズが現れて全員に頭を下げる。
「エメリアさんもこの度はご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません」
「いえ、あの方はこのギルドにとっても必要な方ですから。
私の方から手が出せない分、手を回してもらって助かりましたよ」
「ちょっ、ちょっと待って!
私達……多分、ファモとメローヌも含めて一切状況が分からないんだけど、どういうことなの?」
「それについては今回の張本人も交えて話をさせてもらいたいと思います」
イズはそう言って、これまたいつの間にかギルド内に運び込まれていた荷車から何かを取り出した。
「ん〜!ん〜!!」
それは口をテープで防がれ、手足をロープで縛られたシスターであった。
いや……着ているのは修道服なのだが、出るところが異常なほどに張り出しており、本来は清楚な筈の修道服を淫靡な物へと変貌させて夜の商売をしているようにしか見えない……そんな人物であった。