お約束
時間は過ぎて休日。
この日は大勝負になると言う事で前日のダンジョン探索は軽めに済ませている。
流石に2回目ともなると新入生の半分程は一階層を突破しており、ファモとメローヌのコンビも無事に突破できたと喜びながらお礼を言いにきていた。
現在はテッドのみが唯一2階層を突破しているようである。
「準備はいいかの?」
「こっちはOKだよ」
今回は冒険者として最初からフル装備の2人。
そんな2人の姿を校門前で待つ人影が2つあった。
「私も最後まで付き合うわよ」
「それは面白そうだからですよね。
ナハトを助けて頂いたそうで……お礼が遅くなってしまい申し訳ありません」
いつも通りの白衣を着たエリーとメイド服姿のイズ。
イズは2人の前でペコリと頭を下げた。
「ワシらは依頼を受けただけじゃからな。
それに殆どはクラリッサ嬢のお陰じゃしのう」
「それでも助けられた事に変わりはありませんから。
つまらないものですが、コチラをお持ちください」
イズはそう言うとバッグから、赤、青、緑、茶という四つほ球を取り出した。
「このアイテムを持って念じる事で、一度だけ其々に秘められた属性の攻撃魔法を放てる使い捨てのアイテムです。
クレアさん……が使うと大変なことになりそうなので、これはシゾンさんに」
「えっ、ありがとう!
でも、4つもあるから1個はお姉ちゃんに。
青って水だよね?
それなら被害も少ないんじゃないかな」
と言う事で属性球の内、青色をクレアが。
その他の色はシゾンが持つことになった。
「さてさて、それでは行くとするかのう」
こうして3人は孤児院へ向けて出発する。
街までの道のりを歩き、たどり着いたのはそれから30分後。
かなり早めに出たつもりなのだが、孤児院の中では既に騒動が始まっていた。
「ですから……院長は必ず帰って……」
「そう言われましてもねぇ……返済の期日は今日まで。
それなのに今は返せないと言われては出ていってもらうしか無いのですよ」
中からはこの間対応してくれた職員とは別に男の声が聞こえてくる。
恐らくはその声の主が土地の権利書を盗み出した金貸しなのだろう。
「何やら立て込んでおるところ悪いが邪魔するんじゃな」
クレアが前に立って孤児院の庭へと入っていく。
そこには子供たちを庇うように前に立つ職員と、その職員の前に立つ小ぶとりな男。
その男の周りはパッと見で10人以上のガラの悪そうな男達で固められていた。
クレアたちに気付いた小太りの男……を制して、その中で一番若く、比較的マトモな出立ちをした若者が前に出る。
「姉ちゃん、いま立て込んでんだ……邪魔するなら帰ってやぁ」
「ふむ、それならば失礼して……」
「ちょっちょっ、帰れ言うてホンマに帰るやつがおるかーい!」
突如始まった2人のやり取りに周囲は何が起きたのかと困惑している表情である……しかし、当の本人たちは非常に満足気な様子であった。