孫には甘い
朝からバタバタと学校に戻ってきて授業を受ける2人。
「よう、朝帰りしたんだって。
私達と別れた後に何があったのさ?」
「とても心配していたんですよ」
教室にたどり着くとファモとメローヌが出迎えてくれて事情を尋ねてきた。
「ちょっとギルドで請け負った仕事が厄介でのう。
その話はまた後でさせてもらうのじゃ」
というクレアの説明でその場は大人しく解散。
放課後に4人は学食へと集まっていた。
「……という訳で今に至るのじゃな。
週末に長期クエストに行っておった院長が戻るそうなので、その時に合わせて話をつけるつもりじゃよ」
「何で私達と別れた直後にそんな事になってんだか」
「そういえばカフェでもトラブルに巻き込まれましたわよね?
ひょっとしてお二人はトラブルを呼び込む才能があるのでしょうか」
「いや、そこに私を含めないでよ。
入学してからの決闘騒ぎ、予想外の適正とかも考えたら完全にお姉ちゃんのせいでしょ。
私は巻き込まれてる側だよ?」
シゾンがそう言って反応すると、2人も確かにと言わんばかりの目でクレアの方を見る。
「ぐぬぬ…….そう言われると反論できぬではないか。
じゃが、どの話もそうじゃがワシも巻き込まれただけじゃぞ」
「巻き込まれた後に嬉々として行動してる気がするけど」
「やるからには全力を出さんといかんじゃろ」
「ぷっ……あっはっはっ!
2人は本当に仲良し姉妹だな」
「ええ……ふふっ。
見ていて微笑ましくなりますわ」
シゾンとクレアのやり取りを見ていた2人は楽しげに笑い合う。
そして、ひとしきり笑い合った後……
「まぁ、これからも何かに巻き込まれると思うけどさ。
私たちで手伝える事があったら呼んでくれよ」
「その為にも今週には一階層をクリアーして冒険者資格をゲットして見せますわ」
「うむうむ、時が来たならば頼ると思うでのう。
その時はよろしく頼むのじゃ」
その後はダンジョン攻略のアドバイスを中心とした会話を行ってから寮へと帰っていく。
因みに会話している間のお供としてプリンを食していた辺り、甘味同盟は未だに健在のようである。
「あ、そういえばお姉ちゃんに聞きたい事があるんだった」
「どうしたんじゃ?」
お風呂から上がり、クレアの髪を梳かしながらシゾンが尋ねる。
「私と戦った時、明らかにお姉ちゃんの以外の力が加わってたよね?」
「ああ、扇の話じゃな」
シゾンはクレアの膂力で行うパリィならパワーで押し通せると考えていた。
実際にはそうはならかった訳だが、そこには理由があると考えていた。
「扇とは本来は扇ぐものらしいのう。
つまり、風を媒体にしやすいという事じゃ。
ワシの魔力を扇を通して風の力に変換して撃ち出しただけじゃよ」
「なるほど……だから一点に衝撃が来てたんだ。
こんな感じかな……えい!」
「ひゃあ!?」
クレアの剥き出しになった首筋を人差し指でなぞるシゾン。
「ありゃ……思ったより可愛い声出せるんだね」
「全く、イタズラも程々にするが良い。
ワシはもう寝るからの」
そう言って少し拗ねた顔をしてベッドに潜り込んだクレアだったのだが……
「お姉ちゃん、今日は一緒に寝てもいい?」
「……仕方ないのう。
ほれ、こちら側に来るが良い」
シゾンのおねだりにスペースを空けて布団を捲る。
何やかんやで孫に甘いのであった。