潜入
時は遡り、クレアとシゾンの決闘が終了した直後。
「それではちょいと行ってくるでのう。
シゾンの事を頼むのじゃ」
「行ってくるわねぇ」
人の目から逃れるために黒いフード付きのローブで身を隠したクレアと、その周辺をふよふよと漂うクラリッサ。
「すいません、子供の依頼と軽く見ていたのですがここまで大事になるとは。
こちらの方でも出来る限りのサポートはさせて頂きますので」
クレアに対して申し訳無さそうに頭を下げるエメリア。
「クラリッサ嬢も貸し出して貰っておるのじゃ。
充分にサポートをしてもらっておるよ」
「それはそうですが……」
「まぁまぁ、クレアちゃんはウチの生徒の中でも特に一押しの子だから大丈夫よ。
最悪、何かあれば私とイズちゃんで潰すだけだし」
「エリーがそう言うなら間違い無いんでしょうけど。
くれぐれもお気をつけて」
「うむ、任せるが良いぞ」
こうしてクラリッサの案内されたのは、金貸しを営む店舗であった。
「実は個人的に気になってたから調査してたの。
ここにある金庫に土地の権利書が入っているわ」
「ふむ、それは助かるのう。
しかし急に雰囲気が変わったのう」
「今までクレアちゃんの前にいたのは私の分身だから。
この街にはたくさんの分身を張り巡らせているの。
数を増やすほどに能天気になっていくのが欠点なんだけどね」
「なるほどのう。
因みにナハトはここにおるかの?」
「権利書と同じ部屋にいるみたい。
今は封魔の檻に入れられて脱出できないっぽい」
「うむ、情報助かるわい。
潜入はどこからしようかのう」
「それも任せてくれて良いよ。
物質はすり抜けられないけれど触る事は出来るから。
裏口の鍵を開けてある」
「ほんに仕事が早いのう。
それでは行くとするか」
クラリッサの案内でクレアは建物の裏口から侵入していく。
彼女の言う通りに裏口の鍵は開いており、易々と侵入することができた。
「ここから地下に向かうんだけど……見える?」
「うむ、この眼は便利じゃな。
暗闇でも見通すことが出来るわい」
この世ならざるクラリッサをも見通す瞳は、灯りのない建物の中でも関係なく見通す事が可能であった。
「こっち……ついてきて」
クラリッサの案内で先へと進んでいくクレア。
「見張りもおらぬとは不用心じゃな」
「こんなふうに忍び込まれるなんて考えてないんだと思う」
「自分達は忍び込んで土地の権利書を盗んでおいでのう。
いつまで経っても愚か者の考える事は分からぬわい」
「その言い方、年寄り臭いよ」
「実際、中身は年寄りじゃからな」
「その話おもしろ……と、この部屋。
ここに書類とナハトの両方がある」
「どれどれ、鍵は……やはり開けてあるか」
クレアがそう言いながらクラリッサの方を見ると、彼女はドヤ顔で親指を立てていた。
「さて、それでは拝見させてもらうとするかのう」
いろいろ考えましたが、クラリッサというチートがいる以上は問題が起こりようが無いと考えてこの結果になりました。