盗難返し
職員の話を纏めると、土地の権利書を持った怪しい集団……恐らくは裏稼業と思われる人物に強請られてしまっているらしい。
その権利書を買い戻すか、それとも院長が自分の身柄を引き渡すか迫られているそうだ。
院長は高位の冒険者としてそのお金を稼ぎ出そうとしているそうだ……が、詳しい金額は分からないが、そのお金を工面するのは難しいだろうというのはクレアの意見である。
「連中とてそのぐらいの事は見越しておるであろう。
ならば達成不可能な金額を提示していてもおかしくなかろう」
「それでは院長は……」
「まぁ、ワシらに任せるが良い。
話は分かったので一先ずギルドに戻るぞ」
「何か考えがあるの?」
「うむ、こういうのは情報が命じゃからな。
そういう事に詳しそうなのがおるであろう」
そうして戻って来て早々に彼女達はエメリアの元へ向かっていった。
「孤児院の土地権利書に裏組織ですか……随分ときな臭くなってきましたね」
「事態は想像以上に深刻なようじゃ。
クロちゃんことナハトも何らかの理由で捕まったと見るべきじゃろう」
「あらあら、それならイズちゃんに手伝わせてもいいわよ。
飼い主なんだからきっと手伝ってくれると思うわ……その組織は間違いなく壊滅するけど」
まだここで油を売っていたエリーが興味深げに話に加わってくる。
「いや、出来るならば揉め事は起こさない方向でいきたいのじゃ。
ワシが借りたいのはクラリッサ嬢の方じゃな」
「あら〜私に何か用かしら?
って、この程度じゃ驚かないのね」
クレアとエメリアにしか見えていない為に特に狼狽える事はなかったのだが、クラリッサは唐突に地面から生えてくるように浮上して現れた。
「うむ、其方は情報に精通しておるという話であったな。
その裏組織からチョチョイと土地の権利書を取り返す事は出来ぬか?」
「心当たりはあるし、潜入して取り返すのも問題ないわよ。
ただ、それが金庫の中に入っていたりすると無理かしら。
私は物質をすり抜けられるけど、書類なんかをすり抜けさせる事は出来ないの」
「ふむ……ならば直接潜入するしかないかのう。
この中で1番目立たぬのはワシじゃ。
ワシとクラリッサ嬢の2人で潜入作戦というのはどうじゃろうか?」
「あら〜それは面白そうね。
結構は今夜で大丈夫かしら?」
「うむ、その方向で行くとしよう」
2人で話が進んでいき、決定しそうになったところであったが……
「ちょっと待ってよ!」
それにストップをかけたのは他でもないシゾンであった。