ドラゴン退治
「明らかに魔物の数が少ないですね」
「間違いなく発生源はここね。
フロアマップは……この広間が怪しいわ」
エリーが自身のスキルによってフロア全体を記したマップを浮かび上がらせる。
マップはフロア全体を余すことなく記しており、魔物の位置やトラップの位置まで丸わかりである。
「とりあえず可視化しておくわよ」
エリーがそう言うと、壁の向こうからも動いている赤いオーラや、動かない黄色いオーラが見え始めた。
「フロアの全把握、魔物と罠の位置も把握、更に視覚的に可視化させる……相変わらずとんでもないスキルですね」
「もっと尊敬してくれてもいいのよ」
「先生の事はいつだって尊敬してますし、好きですよ」
「んん……ナチュラルにそういう言葉いうのは良くありませんよ」
「事実ですから」
「ん……もう、行くわよ!」
今度はエリーの方が顔を赤らめながら先行していく。
イズはしてやったりという表情を浮かべながらその後をついていくのであった。
暫くして目的の広間に辿り着く。
そこには2人が予想していた通りの魔物が鎮座していた。
「まぁ、この辺りの魔物が逃げるっていったら……ドラゴンですよね」
「しかも色は黒……ドラゴン族の最高峰よ」
ドラゴン族は鱗の色で強さが変わる。
黒と白が双璧として並び立ち、次いで金、銀。
そして赤や緑などが下っ端となるのだが、それでも人間からしてみれば遥かに脅威となる魔物である。
普通であれば2人で討伐するなど正気を疑わられるであろう……しかし、イズとエリーはいつもと変わらない調子で広間を進んでいく。
自分の方へと歩んでくる小さき者に気が付いたドラゴンは、広間を揺るがす程の大咆哮をあげる。
普通の人間…….いや、生き物であればその声の大きさと圧で動けなくなるところだが、イズとエリーは平然としていた。
「今の咆哮でも歩みを止めぬとは……人間にしては気概がある」
「あ、喋るタイプだよ、イズちゃん」
「やっぱり黒竜ともなると喋れるんですかね。
こんばんわ、貴方を退治しにきました」
「我を倒すだと……ふざけたことを。
少しは出来るようだが、小娘2人……」
「僕は男です!」
黒竜の言葉に、イズが初めて激昂したように叫ぶ。
「は……いや、我の知識ではその方は雌であろう……」
「あ、もういいです。
口閉じてください」
憤怒のオーラを撒き散らすイズを見てエリーはお手上げと言わんばかりに両手を上げる。
「あーあ、イズちゃんの地雷踏み抜いちゃった。
私、もう知らない」
「知らないじゃないですよ。
バフ、デバフお願いします」
「無くても勝てるくせに」
「僕はアレを徹底的にぶちのめすと決めましたので。
よろしくお願いします」