初めての依頼
結局のところファンクラブは今する話ではないということになり、折角なので一つクエストを受けてみるかと言われた2人は素直にその提案を受ける事にした。
とはいえ……
「目ぼしいものは残っておらんのじゃよな」
「農作物に群がる飛蝗みたいだったもんね」
残されていたのは常駐クエストである薬草採取くらいのものであった。
仕方なくそれを受けるかと言う流れになった時である。
「ここにくればかいけつしてくれるってほんとうですか」
入り口から何やら幼い声が聞こえてきた。
そこに向かってエメリアが対応に向かっていく。
「はい、お越しいただきありがとうございます。
本日はどのようなご用件でしょうか?」
「クロちゃんがいなくなっちゃったんです。
さがしてもらえませんか?
おれいはこのはこのなかのおかねです」
そうして少女が手渡した箱の中身を確認したエメリアはクレアとシゾンの元へと戻った。
「この依頼は本来なら最低限の報酬も達成していないのでギルドで扱う事は出来ません。
しかし、指名依頼という形でしたらウチの介入はほぼありません。
お二人に受ける意思はありますか?」
「もちろんじゃよ」
「私達の初依頼にピッタリだよ」
本来ならば門前払いされてもおかしくない少女の依頼。
金額も貯金とはいえ微々たるものである。
だが、そんなこと事は関係なく2人は二つ返事で引き受けた。
その解答に笑みを浮かべて満足気に頷くエメリア。
「分かりました。
このお二人が貴女のクロちゃんを探してくれますよ」
「ほんとうですか!
おねえさんたち、よろしくおねがいします」
「必ず見つけてくるから安心してね」
「それでクロちゃんってどんな生き物なの?
犬よりは猫っぽい名前かな」
「クロちゃんはちいさなドラゴンさんなのです。
このあたりをパタパタととんでいるのに、きょうはみていないのです。
あやしいひとたちもいたから攫われちゃったかもしれないのです」
辿々しい言葉で2人にクロちゃんの特徴を伝える少女。
だが、その内容を聞いて2人と、ついでに一緒に話を聞いていたエリーの表情が変わる。
「のう……ワシはそのクロちゃんとやらに何やら見覚えがあるのじゃが」
「私も入学前にここに来た時に見た気がするんだよね」
クレアとシゾンはそう確認しつつエリーの方を見た。
彼女は観念したかのように深い息を吐いた。
「はぁ〜、多分2人が考えている通りにそれはナハトね。
最近見ないと思ったら街に行ってたなんて……」