3つのファンクラブ
「無事に終わったみたいね」
「ええ、代理ありがとうござ……これはどういう事です?」
「さぁ……私に聞かれても困るわよ」
そう話すエリーの前にはずらりと学園の生徒達が列をなしていた。
彼らはクエストを受注しにきたようなのだが、主だったものが無くなった結果、薬草集めや街の清掃など、敬遠されていて常駐しているクエストを受注していた。
エメリアにはそれ程までしてこの列に並ぶ理由が分からない。
「ちょっと受注までの流れを見せてもらっていいですか?」
「ええ、もちろんよ。
次の人どうぞ」
「はい!
2年のクレイ・マービスです。
会員番号は31番です」
「あら、いつもありがとう。
これで受注完了だから頑張ってきてね」
「はい、ありがとうございます!」
「ね、変なところなんて無かったでしょ?」
クレイを送り出したエリーがエメリアの方を向く。
「ええ、手順は問題ないですね。
でも、会員番号って何ですか?」
「何か私のファンクラブがあるみたいなのよね。
あ、もちろんイズちゃんのファンクラブもあるわよ」
「つまり、この行列はお主に会いに来た口実にクエストを受けに来た連中というわけじゃな」
「そう言う事でしたか。
まぁ、あれらのクエストをこなしてくれるならありがたい話ですが。
何ならお二人には定期的に受付を代わって頂いてもいいかもしれませんね」
エメリアがそう言うと、エリーはクレアの方を向きながら悪い顔をした。
「あら〜私達じゃなくて、そっちのクレアちゃんでも良いわよ。
入学一ヶ月で既にファンクラブが出来ているんだもの。
私がほぼ男性ファン。
イズちゃんは男女比率7:3。
それに対してクレアちゃんは3:7だから、きっと女の子の冒険者がたくさん来る筈よ」
「な、なんじゃそれは?
初耳じゃぞ」
「ファンクラブなんてこっそり出来上がってて、いつの間にか断れない規模になって強引に認めさせるって手法なんだから当然よ……ね、会長さん?」
エリーがそう話を振った相手に全員の視線が注目する。
一瞬、クレアの方を見るが観念したようにため息をつく。
「はぁ〜バレちゃったか。
もう少し大きくなってから教えようと思ってたんだけどね」
「ど、どう言う事なのじゃ!?」
「だから、クレアちゃんのファンクラブは既にあって、作ったのはそこのシゾンちゃんって事よ」
「えへへ、お姉ちゃんの可愛さを広めたくって……つい、やっちゃった」
そう話すシゾンは悪びれた様子もなくテヘッと笑いながら舌をペロっと出したのであった。