受付嬢はかく語りき
昔々、とある王国の話です。
その国では王子様と侯爵令嬢の結婚が決まっておりました。
しかし、その国の王子は何をとち狂ったのか、身分違いの恋に入れ上げてしまいました。
更にその相手は王子の気を引くためにある事ない事……どころか、無い事ばかりをでっち上げました。
それであの馬鹿……失礼、王子はあろう事か、その荒唐無稽な話を全て信じ、その侯爵令嬢を処刑してしまったのです。
そのような事が起これば侯爵が黙っているわけはありません。
国王も王子から王位継承権を剥奪され、正にザマァみろという状態になっていた訳ですが……話はそれだけでは終わりませんでした。
城で不可解な出来事が起こるようになってしまったのです。
物の位置が変わっていたり、空き部屋の壁に落書きがしてあったりと言った出来事ですね。
更に王子には特に影響があったらしく、何も無い所で転ぶ事は日常茶飯事。
大事な書類の紛失に部屋の灯りが唐突に消える。
果てには寝て起きたら部屋の中いっぱいに騎士団の洗う前の衣服が散乱させられているという出来事もあったそうです。
城の人々は侯爵令嬢の呪いだと噂していましたが、混乱は少なかったようです。
初期の頃こそイタズラのような事が起こっていましたが、それ以降については侍女が清掃している横で勝手に動き出して掃除し始める掃除用具達。
忘れ物をしたと思ったらいつの間にか近くに置いてある。
書類のミスが知らない間に指摘されて直されている……などなど、王子以外の人間には善行していたからですね。
しかし、王子の方はストレスが限界に来てしまい、王も王位継承権を剥奪したとは言え、自分の息子がそのような目に遭っている事を何とかしようとした訳です。
そこで城で軟禁されていた侯爵令嬢の護衛を務めていた女騎士を処刑することにしたのです。
彼女は度々虚空に向かって会話している様子が見受けられました。
最初は侯爵令嬢が処刑されて気が狂ったのだろうと言われていたのですが、その会話を聞いていた見張りから、どうも処刑された筈の侯爵令嬢と話しているようだと報告されていたのです。
この一連の騒動はその女騎士にあると判断した王と王子。
そこで女騎士を処刑する事で事態の沈静化を図ろうとしましたが、結果的に言えばそれは悪手でした。
実は王達の予想通りに侯爵令嬢の亡霊に取り憑かれていた女騎士。
女騎士を処刑すると言う事になり、亡霊は怒りで悪霊へと変わりました。
彼女の怒りで城の窓ガラスは全て割れ、抵抗しようとした兵士は全て気絶。
震えて怯える王と王子に二度と消えないトラウマを植え付けた上で、女騎士を伴ってその城を脱出したのです。
そうして亡霊憑きの女騎士は冒険者になり、旅をしながら安住の地を探し続け、行き着いた先で冒険者ギルドの受付嬢となった訳です。
そして、何故か侯爵令嬢の亡霊はそのギルドのマスターに就任したのでした。
この2人は悪役霊障になった悪役令嬢という、書こうとしたものの断念したキャラとなっています。