冒険者ギルド
「ようこそ、冒険者ギルドへ。
って、あら……エリーじゃない」
ギルドの建物に入り受付に向かうと、そこでは20代後半くらいに見える緑髪の女性が対応をしていた。
「久しぶりね、エメリア。
何か変わった事はあった?」
「貴女達に頼らないといけないような大きな事件は起きてないわね。
他に用は……って、その子達は一階層突破した子かしら?」
「ええ、そうなの。
折角だから冒険者登録しておこうと思って」
勝手知ったると言うような2人の会話を見ていたクレア達であったが、話の流れから矛先が向いた事で前に出る。
「クレア・アンデルストじゃ。
よろしく頼むのう」
「シゾン・アンデルストです。
よろしくお願いします」
「あら、初日に一階層突破なんて優秀な子だと思ったけど。
あのアンデルスト家なら納得ね。
それじゃ、貴女達のデータを取るからちょっと待ってて」
エメリアがそう言って事務所の方に引っ込んでいったところで2人は辺りを見回した。
入り口から入ってまっすぐ行ったところには先ほどエメリアが待機していた受付がある。
その受付を正面に右側は壁となっているのだが、左側には食堂が併設されていた。
さらにその上に続く階段があるところを見るに、宿屋も兼ねているのだろう。
今の時間帯は依頼を受けた冒険者達は出払い、食堂も利用者がおらずにガランとしている。
そんな食堂の中を金髪の女性が楽しそうに掃除している姿がクレアには見えた。
「お待たせしちゃってごめんなさいね。
あら、食堂なんて珍しいかしら?」
「いや、そんな事は無いのじゃが、他のギルドと比べると随分と清潔にしておると思ってのう」
基本的に冒険者達は荒くれ者が多い。
なので、ギルドと併設されている酒場や食堂は一定以上の汚れが目立つのが常なのである。
「あら、小さい割によく知って……って、エルフなら見た目通りの年齢じゃ無いわよね。
ウチのマスターが掃除が大好きなの。
それで暇を見てはしょっちゅう綺麗にしてるのよね。
冒険者さん達も汚いなら気にしないんだろうけど、最初から綺麗だと意外と気を遣って汚さずに利用してくれるのよね」
「ほほう、ならばあそこで楽しそうに掃除している女性がギルドマスターであったか。
挨拶させてもらってもいいかの?」
クレアが何気なしに言った言葉……だが、その言葉を聞いたエメリアとエリーはその言葉に驚いたように顔を見合わせる。
「え、あれ……クレアちゃん、あの人が見えるんですか?」
「見えるも何も、今もそこに……こっちに気付いたのか寄ってきておるぞ」
クレアの言う通りにギルドマスターと思わしき人物がニコニコとした笑みを浮かべて近づいてきた……宙に浮きながら。
「あらぁ、私が見える子なんて珍しいわね。
初めまして、ギルドマスター兼亡霊のクラリッサよ。
よろしくね」
そう言いながらクラリッサは楽しそうにクレア達に挨拶をした…‥空中を漂いながら。