テッドの決意
本日は3話更新です。
ダンジョン開放日の朝、テッドは購買部で準備を進めていた。
「おばちゃん、この皮の胸当てとヘッドギア。
後は皮の小手も貰おうかな」
「おや、堅実な買い物だね。
武器はどうするんだい?」
「武器はこいつがあるから平気さ」
テッドはそう言って両の拳を合わせる。
「後は最低限の回復薬と……その使い捨ての鍵も貰っていこうかな」
「はい、ありがとよ。
それじゃ、頑張っておいでよ」
テッドが購買部を去った後に、イズに救助された男子生徒二人組がやってくるのだが、それから少し後に救援に向かう前のイズが購買部へ立ち寄っている。
「こんにちわ、おばちゃん」
「おお、今日も救援かい?」
「毎年この日が一番多いですからね。
そう言えば、おばちゃんの見立てではどうです?」
「まぁ……今年もほとんどが気をつけなって感じだね。
ごく一部だけは頑張ってこいと送り出したけどね」
「おばちゃんの頑張ってが出ない年もありますからね。
少ない人数でも僥倖ですよ」
購買のおばちゃんは新入生の買い物の仕方によって、送り出しの言葉を変えている。
気をつけてと言われた生徒のほとんどは初日に救難信号を出す状況になっているのだ。
「さて、早速救援を呼んでいるので行ってきますよ」
「ほいよ、行ってらっしゃい!」
時は少し遡り……ダンジョン前。
「一年のテッド・オリルです。
よろしくお願いします」
入場管理をしているマリア先生に挨拶をする。
「ああ、テッド君、おはよう。
おや……パートナーはどうしたんだい?」
「先生……自分は一人で攻略したいと考えています」
「なんだと!?
このダンジョンは一人で攻略する想定で作られてはいない。
もし一人で挑戦するとなると留年も考えられるぞ」
「それでも俺はやり遂げたいんです!
やり遂げて認めて欲しい人がいるんですよ」
「む、むむむ」
決意を固めた瞳で語るテッドに思わず唸り声を上げるマリア。
熱い思いを無碍にしたくない自分と、止めるべきだという教師としての判断。
途中でパーティを組んだ生徒たちを通しつつも、どうしたら良いのか迷ってしまっていた。
そんな時、テッドの後ろから何かを引きずるような音が聞こえてきた。
二人でそちらの方を振り向くと、バニー衣装に身を包んだイズが大きな荷車を引いて向かってきていた。
「何を揉めているんですか?」
「これはこれはイズ殿。
実はこちらの生徒がですね……」
そうして事情を話し始めたマリアだったが、テッドはそれどころでは無かった。
憧れの人物が可愛くも露出の多い服を着てきたのだ。
動揺してしまうのも仕方ないことであろう。
「なるほど……まぁ良いんじゃないですか?
やれる所までやってみて、ダメだったらパーティを組んでも良いわけですし」
「イズ殿がそう言われるのでしたら……テッド君。
うん?……おい、テッド君!」
まだ惚けて見惚れていたテッドに対してマリアが強く呼びかけた。
「あ、は、はい!」
「ダンジョンの入場を許可する。
くれぐれも気をつけるんだぞ」
「それじゃ、私は先に行きますね。
テッド君も頑張ってください」
「は、はい!
ありがとうございます!」
深々と頭を下げるテッドに背を向けてダンジョンに入っていくイズ。
準備の確認をし、少し遅れてからその後を追ってダンジョンへと入っていくテッド。
この日、一階層を突破した二組の内の一人がこのテッドであった。