探索するという事
「冒険者の仕事は多岐に渡るわけじゃが、この学校は魔大陸の探索を目標に掲げているわけじゃな。
つまり、探索の依頼になるわけじゃが、ここで一番気をつけなければいけない事は何か分かるかのう?」
ゴブリンが落とした戦利品を拾い集めながらクレアはシゾンに問う。
「ええっと……死なない事かな?
せっかく手に入れた情報を戻らずに伝えられなかったら意味がないと思うんだよね」
「うむ、確かにそれは重要じゃな。
酷い話にも聞こえるかもしれぬが、魔物の殲滅依頼の途中で力尽きても、倒した魔物の数は功績としてカウントされるじゃろう。
じゃが、探索では結果を持ち帰らなければ意味がない。
そういった意味で生存を第一に置く事は大事じゃな」
黒いモヤがかかった短剣を拾い上げて鞄に入れつつ、クレアが答える。
同じようにシゾンもゴブリンの跡に残された学園通貨を拾い集めて鞄に入れた。
「だから防具を最優先にして薬なんかもしっかり準備してたんだ!」
「それだけでは無いぞ。
シゾンがさっき言っておったように防具が無ければ怪我をして薬を使っておったじゃろう。
そのペースで薬を使い続ければすぐに無くなってしまう。
薬が無くなれば撤退も視野に入ってこよう?」
「うん、そうだね。
このダンジョンなら瀕死まで頑張っても大丈夫だろうけど、現実はそうはいかないもんね」
戦利品を集め終わった事でシゾンが先行しつつ歩きながらも会話は途切れない。
「つまり、それだけ探索可能時間が縮まるという事じゃよ。
探索は当然ながら長い時間を費やした方が得られる情報が多い。
その貴重な時間を無駄にせぬ為の防具と薬なのじゃよ」
「なるほど、勉強になるよ」
「本当に素晴らしいですね。
皆さんがクレアさんくらい理解してくれると助かるのですが」
「え、ひゃあ!?」
パチパチと拍手しつつ、突如として現れたのはイズであった。
「驚かしてしまい申し訳ありません。
あまりにも良いお言葉でしたので」
「あ、ああ、そうなんだ。
イズちゃんは今日は何してるの?
何だかダンジョンに不釣り合いな格好してるけど」
本日のイズの格好はバニーガール姿である。
その後ろには大きな荷車があり、そこからは呻き声の様なものが聞こえてくる。
「ダンジョンの開放日は救援に向かうのが私の仕事なのですよ。
特に初日の今日は無謀な人たちが多くて救援要請が多いんですよね。
ほら、少し先にも……」
そう言ってイズが指差した方向を見ると、男子生徒が2人へたり込んで座っていた。
よく見ると彼らはクレア達よりも前に購買部を利用していた生徒で、武器だけで防具はまともに装備していない生徒であった。