お買い物
早いものでクレア達が入学してから一ヶ月が経過した。
最低限の体力の下地と知識、ダンジョンでの対応が出来ると判断された新入生達はこの時よりダンジョンの探索を許可される。
「ここまでの授業で聞いてきたとは思うのでザッとおさらいだけするわね。
一年生のパーティは2人まで。
装備品の購入は支給された学内通貨を使って購買部で行う事。
体力が危険域、もしくは17時になったら救難信号が出て助けが来るのでその場から動かない事。
分かってるわよね?」
『はい!』
初めてのダンジョン探索という事で生徒達はイキイキと返事をする。
「クレアちゃんはもちろん私とパーティ組むよね?」
「うむ、頼りにしておるぞ」
「へへへ〜任せといてよ」
2人は校舎を出ていくと先ずは購買部の方に向かった。
そこでは先客がちょうど買い物を終えて去るところであった。
「いや〜最初からこんな格好良い武器が手に入るなんてな」
「これなら楽勝だろ、おばちゃんありがとな」
「ああ、気をつけて行ってきなよ」
制服姿のまま、腰にロングソードを携えた二人組の男達は去って行った。
「おばちゃん、よろしくお願いします!」
「よろしく頼むのじゃ」
「今年も一年生は元気な子が多いね。
それで何から買っていくつもりだい?」
「当然、ぶ……」
「武器は後回しで良いじゃろう。
まずは防具、そして次に回復薬や罠回避の道具。
余ったお金で武器を買えば良い。
最悪木の棒でも何とかなるじゃろう」
シゾンの言葉を遮って要望を出すクレアにおばちゃんが楽しそうに唇の端を吊り上げる。
「正解だよ、ナリはちっこいが中身は相当なもんだね。
あんたの言うように武器なんてものはなくても浅い階層なら何とかなる。
でも、武器ばかり揃えて防具はおざなりで薬もまともに持っていかず、救援呼んだり保健室に行ったりする子がいるんだよ……毎年それなりの数がね」
おばちゃんは楽しそうに言いながら2人の装備を見繕う。
「ほれ、最初の支給額なら装備はこんなところだろ。
でっかい子の方は皮鎧と皮のヘッドギア。
ちっさい子の方はローブ。
それに最低限の薬の詰め合わせ。
武器は話してたように余った金で選びな」
こうして渡された装備に着替えた2人は、残ったお金で武器を買う。
それもクレアの言った通りにシゾンが棍棒。
クレアはひのきで出来た棒であった。
「世話をかけたのう」
「なーに、この商売やってたらこんなの世話のうちにも入んないよ。
あんた達は大丈夫だと思うから頑張ってきな」
こうしておばちゃんから太鼓判を押された2人は校舎の左側にある坂を登ってダンジョンへと向かうのであった。