道場と組み手
別作品に間違えて投稿していました。
こちら2話目です。
新しく講師となったナグモ。
その授業を希望するものは少なかった。
特にクレア達より上の学年の生徒達は、今更特殊な武器の扱いを学ぶよりも今までに学んできた事を伸ばす方を選ぶ者が殆どである。
そんな理由により、現在の受講者はクレア、シゾン、テッドの3人。
「本当にあんなヨボヨボの爺さんが強いのかね?」
「間違いなく強いであろう。
そもそも強さと言うのは見た目で判断するものでは無いぞ」
「それでクレアちゃんに負けてるんだから反省しなさいよ」
「うるせぇ、分かってるよ」
雑談しながら3人が向かった先は、ナグモの講習のために新たに作られた道場である。
3人は挨拶をして中に入る。
「まずはこれに着替えるように」
「奥に更衣室がありますから男女別れて着替えてくださいね」
上が白、下は紺色の胴着を着て、髪を後ろに縛ったイズが案内をする。
イズはナグモの講習の助手を務めることになったらしい。
「クレアちゃんはこっちだからね」
「お、おお、そうじゃったな」
シゾンは男子側に行こうとする兆候が見えたクレアの手を取って強引に女子側の更衣室へと向かった。
「なんじゃ?
わしの服だけなんだか違うのう」
「え、この服かわいい!
クレアちゃんによく似合ってるよ」
「変で無いならまぁ良いか」
クレアに用意されていた衣装は紅白の和装……俗に言う巫女服というものであった。
2人が着替えて外に出ると、既に着替えが終わったテッドがチラチラとイズの方を見ながら赤面していた。
「なになに〜イズ先生のいつもと違う一面見て照れちゃってんの?」
「ば、そ、そ、そ、そんなんじゃねぇよ!」
「これ2人とも、道場では静かにせぬか。
すみませぬのう、先生方」
「うむ、よろしい。
まず最初に言っておくが、わしの授業に派手さはない。
ひたすらに繰り返して身体に覚え込ませるので覚悟をしておくように」
『はい』
3人が勢いよく返事をしたのを見て満足そうに頷くイズモ。
「先ずは最初に覚えていただくのは基礎中の基礎です。
摺り足と呼ばれる歩行について覚えていただきます。
このように決して踵を浮かさず、地に足をつけた状態で移動する方法です」
イズがスッスッと足を浮かさずに移動する手本を見せる。
3人ともそれを真似して動いてみると、当然ではあるが問題なく出来た。
「今簡単だと思ったでしょうが、戦いの中でこれを維持し続けるにはかなりの修練が必要となります。
一度、私とお爺様で手本を見せましょう」
イズがナグモをお爺様と呼んだことで、シゾンとテッドが驚いた顔をする。
「それをバラしてしまって大丈夫なのか?」
「この3人であれば大丈夫です」
「お主がそう言うのであれば問題なかろう。
では参るぞ!」
「よろしくお願いします」
こうしてイズとナグモによる組み手の見本が行われた。